2018年12月21日掲載

Vol.23血球計数におけるRetic. 測定(2)

CBCを語ろう Talk CBC 血球計数におけるRetic. 測定(2)

 今回は、自動血球計数装置 UniCel DxH シリーズ(以下DxH)における網赤血球測定(以下Retic. 測定)チャンネルについて解説します。
 DxH は、 Retic. 測定のための専用チャンネルを搭載し、Retic. 測定(比率、絶対数)と網赤血球関連項目を表示します。また、DxH におけるRetic. 測定法は、ニューメチレン青(NMB)染色とVCSn テクノロジーによって正確な網赤血球測定が行われます。

 (1) DxH におけるRetic. 測定

 DxH におけるRetic. 測定は、NMB 染色液で残存するRNA 構造物を染色し、VCSn テクノロジーを用いて細胞形状の分析を行い、網赤血球の鑑別が行われます。また、Retic. 測定における測定プロセスは以下の通りです。

  (DxH におけるRetic. 測定のプロセス)

  1. 検体を分注し、NMB 染色液を添加します。
  2. 試料は、41℃に温度管理されたStain チャンバーで約30 秒間インキュベーションされます。
  3. 染色された試料は、Retic. チャンバーに分注され、低等張性のヘモグロビン除去試薬を添加します。赤血球は球状化され、赤血球内のヘモグロビンが除去されます。
  4. 調整処理された試料は、フローサイトメトリーとVCSn テクノロジーを用いて網赤血球の分類とカウントが行われます。

 DxH におけるRetic. 測定法の特徴として、Air Mix Temperature Control(ATMC)を搭載し ており、検体、染色液、測定試薬、シース液をエアージェットミキシング機構によって厳密な 温度管理(41℃)を行いながら試料調整がなされます。また、Stain / Retic. の2 種類のチャ ンバーを用いることでキャリーオーバーやコンタミネーションの低減を可能にしています。
 Retic. 測定に際しては、VCSn テクノロジーを用いて細胞体積、細胞内密度、5 種類のレー ザー散乱光情報から網赤血球と成熟赤血球、血小板、白血球の分類を行います。計測され た32,767 個の細胞から取得した約100 万の細胞情報によって、細胞特性を解析し、正確な Retic. 測定を実現しました。測定に用いられるレーザー散乱光情報は以下の通りです。


(VCSn テクノロジーにおけるレーザー散乱光情報)

  • Median angle light scatter( MALS)
  • Lower median angle light scatter( LMALS)
  • Upper median angle light scatter( UMALS)
  • Low angle light scatter( LALS)
  • Axial light loss( AL2)

 DxH のRetic. 測定では、測定情報として、数値情報以外に2 次元/3 次元のPlot 情報が表 示されますので、異常検体の確認を容易に行うことができます。


 2) Retic.測定における細胞干渉

 自動Retic.測定では、前述した通り、正確な測定が可能となりましたが、一部の検体においては細胞干渉によって偽高値となる場合があり、偽高値の要因は以下の通りです。

  • 巨大血小板、血小板凝集
  • 小リンパ球、有核赤血球
  • 赤血球内封入体(Howell-Jolly)、マラリア寄生赤血球
  • 標的赤血球、鎌状赤血球



 これらは、網赤血球と近似した測定特性(細胞体積や散乱光情報など)を呈するために網赤血球として鑑別される可能性があります。DxHのRetic.測定では、Axial light loss (AL2)などの測定パラメータを採用することでこれらの細胞干渉がされない正確なRetic.測定が可能になりました。

 (3) DxHのRetic.測定における網赤血球関連パラメータ

 DxHのRetic.測定では、網赤血球以外に7種類の網赤血球関連パラメータが表示されます。新しく搭載された測定項目は、アンゴースト赤血球(Unghosted Red Cell:UGC)と称します。一般的にRetic.測定では、NMB染色後に、低等張性のHgb除去試薬を添加し、赤血球の球状化とHgbの除去がなされますが、細胞骨格が異常な一部の赤血球ではHgbの除去がされない場合があり、これらの赤血球をUGCと称してRetic.測定時に表示がされています。
 UGCは、標的赤血球、Howell-Jolly小体、サラセミア、鎌状赤血球などの出現検体では、優位に高値を示し、これらの赤血球形態異常の検体における検出が可能となっています。
 DxHのRetic.測定は、厳密に温度管理された専用の試薬チャンバーを搭載し、VCSnテクノロジーを用いた検体測定を行うことで干渉物質の影響を受けない正確なRetic.測定を可能にしています。

引用文献
1)倉本智津子,山口直子他;ユニセルDxH800における赤血球形態項目UGCの検討-赤血球形態異常の検出と有用性について-,日本検査血液学会雑誌14巻学術集会,pS112(2013.06)


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UniCel DxHシリーズ コールターセルラーアナリシスシステム
製造販売届出番号:13B3X00190000038

MAPSS-MKT-202106-1000

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