2018年7月12日掲載
5.1.6 力量評価
適切なトレーニング(教育・訓練)の後,検査室は,確立された基準に従って,割り当てられた管理上及び技術上のタスク(課題,任務又は職務)の遂行に対する各要員の力量を評価しなければならない。
ISO 9001:2015(Quality management systems -Requirement-)における力量の定義は、「意図した結果を達成するために,力量とは言わず、それらを意図した結果達成のために適用できなければなりません。そして、QMSに関わる任務を遂行する要員は、意図した結果を達成するために教育と訓練を受け、経験を積み重ねた技能を反映しており、適切であることを評価する必要があります。
また、ISO 15189:2012の4.1.1.4検査部長c)では、「利用者のニーズ及び要求事項を満たす臨床検査室サービスを提供するために必要な教育,トレーニング, 及び力量を有したスタッフの適切な人数を確実にする」としており、また、4.1.2.1管理主体のコミットメントh)では、「すべての要員が割り当てられた活動を遂行するための力量があることを確実にする」ことを求めています。これらの規格要求を満たすために、定施設では各要員の力量評価が行われていますが、その評価方法は各施設により異なります。
しかし、ISO 15189:2012で示されている「検査部長」「検査室管理主体」「品質管理者」に対して割り当てられた活動(任務)は、関連する規格要求のプロセスとの組み合わせを検討することで、各施設に関わりなく共通的に利用できる力量の評価方法を構築できる可能性があります。
例えば、4.1.1.4検査部長a)では、「外施設からの責任に応じて, 予算計画及び財務管理を含む各検査室サービスの効果的なリーダーシップを提供する。」とあり、4.15.1マネジメントレビュー(一般)は、「検査室管理主体は~(中略)~あらかじめ定められた間隔で品質マネジメントシステムをレビューしなければならない。」とあることから、主に検査部長によるリーダーシップをもってマネジメントレビュー(MR)を行う必要があります。また、それが伺えるようなレビュー記録を作成することで、検査部長のリーダーシップが発揮されていることを第三者に示す1つの証拠となります。裏返して言えば、これらのレビュー記録は、検査部長のリーダーシップの力量を評価する1つの判定方法の資料にすることができると考えられます。
ISO 15189:2012の5.1.6力量評価の注記1には、検査室スタッフの力量のアプローチとして、また、その組み合わせを利用しての評価があるとしており、MRのレビュー記録を利用して、d) やe) による力量を評価することができます。
a) 適用されるすべての安全規範を含む日常業務プロセス及び手順の直接観察
b) 機材の保守及び機能チェックの直接観察
c) 検査結果の記録及び報告の監視
d) 業務記録のレビュー
e) 問題解決スキルの評価
f) 過去に検査したサンプル, 検査室間比較物質,又は分割サンプルといった特別に提供されたサンプルの検査
FLS(Future Lab Session)では、上記の『力量を有したスタッフ』 及び 『割り当てられた活動』 というキーワードより、認定取得した施設はQMSで割り当てられた活動として「検査部長」「検査室管理主体」「品質管理者」があり、さらに「技術管理主体」が存在することに着目し、以下の試みを行いました。
まず、各要員の任務に関連するプロセスを展開しますが、検査部長は、4.1.1.4検査部長に示された実施しなければならない項目a)~n) に基づき展開します。
次に検査室管理主体は、4.1.2.1検査主体のコミットメントから任務に対する関連するプロセスを示します。
品質管理者は、4.1.2.7品質管理者からa)~c)の責任と権限より、関連するプロセスを示します。
技術管理主体はISO 15189:2012の要求事項に記載されていない任務ですが、QMSを展開する上で必要な機能であると判断し、2007年度版の要求事項を引用して、関係するプロセスを展開しました。
4.1組織とマネジメント(2017年度版)
4.1.5検査室管理主体は,QMSの構築,適用,維持及び改善について責任をもつ。
これらは次の事項を含む
h) 検査室手順に求められる品質を確保するために必要な技術的業務及び資源の支給に総合的な責任をもつ技術管理主体をもつ。
上記の要求事項より技術管理主体の任務は、5.1要員から5.7検査後プロセスを含むと考えられますが、さらに、技術的な苦情/是正の処置を追加した関連するプロセスを展開します。
理論編でQMSの各要員の任務と関連するプロスセスを踏まえ、そのプロセスを遂行する力量を有しているかを判断するための判定方法(判断材料)を実際にQMSの運用を行っているFLS施設で検討しました。実践を試みたFLSのA認定施設は、①約700床、②地域医療支援病院、③認定範囲 基幹項目1~6、非基幹項目11~17、病理学的検査31,32 ④認定範囲の要員数約〇〇人、⑤認定取得後、約1年が経過という状況です。
<検査部長>
<検査室管理主体>
<品質管理者>
<技術管理主体>
A施設では、理論編の各任務の要員に加え、4.7アドバイスサービスを基にQMSにおけるアドバイスサービス者の任務、関連プロセス、判定方法も作成しています。
<アドバイスサービス者>
これらの判定方法により力量が十分に有していないとした場合、それを満たすためには以下の教育・資格/訓練/経験が必要であるとしています。
<各任務の教育・資格/訓練/経験 一覧表>
さらに、内部監査の要員についても「主任監査員」「監査員」「監査員候補」のレベルを定め、以下の判定方法と教育・資格/訓練/経験の項目を設定しています。
<内部監査員>
以上、これらの各一覧表は、認定施設で各要員の任務の評価を行うための共通的に利用できる評価方法(判定方法)として、FLSでは利用することを検討しています。また、各任務を担う要員が移動や退職をする前に次の要員を養成するために、一覧表の教育・資格/訓練/経験の項目を課題とした、教育・訓練プログラムの作成に活用できると考えています。
引用文献:資料
1)Future Lab Session in OSAKA 第3回 ブラッシュアップセミナー
2)ISO 15189:2012 英和対訳版(一般財団法人 日本規格協会 出版事業部)
3)ISO 9001:2015新旧規格の対照と解説 著者 中篠武志・須田晋介 (一般財団法人 日本規格協会)
監修:Future Lab Session in OSAKA 世話人会
発行:ベックマン・コールター株式会社
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