第99回 「マンスリー形態マガジン」 2019年7月号

『新元号「令和」ゆかりの地 太宰府』

   平成31年4月1日、政府は新元号を「令和」に決定し、5月1日午前0時 皇太子徳仁親王が第126代天皇に即位し、「平成」から「令和」に改元されました。新元号「令和」は、645年 「大化」から数えて248番目の元号になるそうです。「令和」の典拠は、約1300年前に日本最古の歌集「万葉集」に収められた「梅花の歌三十二首」の序文にある文言の「梅花の歌.序文」にある“初春の令月にして気叔く(きよく)風和ぎ梅は鏡前の粉を披き(きょうぜんのこをひらき)蘭は珮後の香を薫ず(はいごのこうをくんず)”から引用され、「人々が美しく心を寄せ合うなかで文化が生まれ育つ」という意味が込められています。
  この「梅花の宴」は、福岡県太宰府(だざいふ)市の「菅原道真公」をお祀りする太宰府天満宮に隣接する坂本八幡宮付近が「令和」ゆかりの地とされます。古都太宰府保存協会の資料によりますと、7世紀後半から12世紀前半にかけて地方最大の役所「太宰府」が設置され、727年頃 大伴旅人(おおとものたびと)が赴任しました。旅人は政治家のみならず、歌人としても優れた才能を持ち、山上憶良(やまのうえのおくら)と共に後世に沢山の歌を残しました。
  旅人の邸宅跡(諸説あり)ともいわれる「坂本八幡宮」付近には、旅人の万葉歌碑が11基があり、「坂本八幡宮」の境内には、“わが岡に さ男鹿来鳴く 初萩の 花嬬問ひに 来鳴くさ男鹿”と詠んだ歌碑があります。旅人は、大宰府に赴任してから妻に先立たれ、男鹿に自身の姿を重ねて見たのかもしれません。
  「大化」から1374年、新しい時代「令和」と共に歩めることを感謝し、日々を過ごしたいと思います。


妻を恋うる詩を詠んだ旅人の歌碑

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


著作権について

今回のねらい

  今回は、細胞同定と症例検討を提示しました。
細胞編は、末梢血液像に遭遇する類似細胞を提示しました。
症例編は、リンパ系細胞の特徴的な形態を呈したものですが、その所見を捉え、末梢血ならびに骨髄像のMG染色から臨床診断を試みて下さい。

問題

末梢血液像の同定を行なって下さい。

1-1<設問1>末梢血液像の同定を行なって下さい。

  • PB-MG×1000

  • PB-MG×1000

  • PB-MG×1000

  • PB-MG×1000

光顕的所見から臨床診断を考えて下さい。

2-1<設問1>

【所見】
【30歳代.男性】
主訴:リンパ節腫大
WBC34,600/μL、RBC303万/μL、Hb11.4g/dL、Ht29.4%、PLT6.5万/μL、BM-NCC11.2万/μL

  • PB-MG×400

  • PB-MG×1000

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×1000

解答・解説

問題 1

   末梢血液像の同定を行なって下さい。

【解説】

PB-MG×1000




今回は、末梢血でみられる類似細胞の鑑別について取り上げてみました。これらの共通所見は、N/C比が低いことです。一般にN/C比は、細胞質内で核の占める割合が80%以上で高いとされます。私見ですが、核と細胞質の接する部分を“merge” と称し、2/3以上占める場合をmerge大として、N/C比高に相当するものとして捉えています。また、mergeの所見の方が、核の大きさをより反映しているようにも思えます。尚、反応性リンパ球は、異型リンパ球を示します。

【正答】
A. 単球(活性化)  B.反応性リンパ球(芽球様) C.反応性リンパ球(単球様) D.骨髄芽球

【解説】
A.直径約18µm大、中等度の豊富な好塩基性の細胞質に核が浮かんでいるように見えます。また、微細な顆粒や顕著な空胞が見みられ、単球でよいと思います。核には不整がなく、中心性、クロマチン網工はやや粗荒で局所的な空胞などを有していることから、活性化単球とも考えました。豊富な細胞質は、抗原などの異物に対して攻撃(貪食)する絶妙なスタイルを醸し出しているようにも思えます。

B.直径約22µm大、mergeはやや大のようです。核形不整は、軽度で類円形、クロマチン網工はやや粗荒であることから芽球様の反応性リンパ球と同定しました。また、単一性ではありませんでした。

C.直径約18µm大、B.の細胞に類似していますが、mergeは小であることから単球様の反応性リンパ球に同定しま した。

D.直径約23µm大、一部にmergeは見られますが、全体からはmerge小のようです。核形不整は軽度で、クロマチン網工がやや繊細で、核小体が2個ほど認められます。細胞質は好塩基性が強く、顆粒は見られません。核質構造の繊細さと核小体のポイントから骨髄芽球と同定しました。周辺の細胞からは単一性が伺えました。



問題 2

   

【解説】

(PB-MG×400)

(PB-MG×1000)

(PB-MG×1000)

(BM-MG×1000)

提示症例は、30歳代の男性です。頸部リンパ節腫大を主訴に来院しました。白血球数の増加(34,600/µL)、貧血と血小板数減少が認められました。

【末梢血】
白血球数の増加と細胞所見では、N/C比が高く、核内への切れ込みのある異常リンパ球が64%と増加していました。それらは、核中心性の浅いものから深い切れ込みが特徴的でした。

【骨髄】
やや低形成の骨髄では、末梢血と同様に切れ込み(cleaved)のみられる異常リンパ球が46%と増加していました。

【頸部リンパ節生検】
HE染色の報告:幅の狭いマントル層により縁取られた明調な濾胞様結節すなわち腫瘍性濾胞がリンパ節全体に増殖し、centrocyte/small cleaved cellと胚中心芽球に類似する大型異型細胞が混在している。

【免疫形質】
CD10、BCL2、IgM+IgD (+)

【染色体・遺伝子】
 t(14;18)/IgH-BCL2 (+)

【臨床診断】
光顕的所見から、末梢血と骨髄の異常リンパ球は濾胞性リンパ腫を思わせる形態であり、リンパ節生検でも同様でした。B細胞性が証明され、更に14;18転座とIgH-BCL2の証明より濾胞性リンパ腫と診断されました。



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