第92回 「マンスリー形態マガジン」 2018年12月号

『ひっしに頑張ればそれでいい‥』

   今年も残り1カ月となって参りました。年のせいか年の移り変わりがとても早く感じます。
  ♪これから淋しい秋です、ときおり手紙を書きます、涙で文字がにじんでいたなら‥♪”一世を風靡した名曲の一コマですが、季節は本格的な秋を迎え、運動会で賑わった校庭も静まりかえり、銀杏の葉がそろそろ色づきはじめました。今回は、私にとって感動に残る「名言」の再登場です。
  それは、第16回沖縄那覇マラソン(2000.12)に参加した時のことです。私の後輩の娘さん(当時10歳)から、 “何を思って走っているのだろう ひっしになると何を思うのだろう 何を思っていても ひっしに頑張れば それでいい”の文言をプリントした長袖Tシャツを頂きました。エッ、10歳にして詩人? 事あるごとに何度も読み返し、人生の糧になっています。彼女は東京の音大を卒業し、今やフルート奏者として羽ばたいておられ、 “ひっしに頑張ればそれでいい”そのものです。しかし、この10月初旬、父親の突然の訃報はあまりにも悲しいものでありましたが、同月末に東京でお会いした時は、気強さに振る舞うお姿に心打たれました。後輩の分まで今後の彼女の活躍振りを見守っていきたいと思います。ちなみに10年ほど前、沖縄で開催された私の退職祝いに、友人のピアニストと名演奏をして下さったことがつい昨日のように想い出されます。
  私自身にも今でも脳裏に焼き付いているシーンがあります。それは、中学時代の秋期大運動会閉会時に述べた時の言葉です。“本日は、よき天気に恵まれ、父兄の方々には早朝より私どもの演技をご覧下さり誠にありがとうございました。また選手諸君は日頃鍛えた演技を十二分に発揮され、ここに秋期大運動会が閉会したことに厚くお礼申し上げます”選手代表三年、阿南建一。如何でしょう?中学生にはふさわしくない単語が連発しておりますが、厳格な父からの指導のもと覚えたもので、今でもスラスラ言えるのは、中学生ながらひっしに頑張って覚えた証かも知れません。
  “ひっしに頑張ればそれでいい‥” これからも大切にして生きていきたいと思います。

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


著作権について

今回のねらい

  今回は、末梢血液像の細胞同定に挑戦します。

末梢血で紛らわしい細胞を提示しました。細胞同定には個々の形態所見をしっかりと捉えますが、単一様式であることも形態診断に有効になります。

  症例編は、初診時から経過中の症例です。わずかな臨床像と検査データから次なる検査を模索し、末梢血および骨髄像から臨床診断を試みて下さい。

問題

末梢血液像の細胞同定を行なって下さい。

1-1<設問1>

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

光顕的所見から臨床診断を考えて下さい。

2-1<設問1>

【所見】
【60~65歳.男性】 
(A)初診時の骨髄 (B~D)経過観察中、骨痛にて来院され骨髄穿刺の施行
(B~D) WBC31,800/μL、RBC445万/μL、Hb13.8g/dL、Ht41.8%、PLT2.6万/μL、NCC42.6万/μL

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×600

  • BM-MG×1000

  • BM-PO×1000

解答・解説

問題 1

   末梢血液像の細胞同定を行なって下さい。

【解説】

PB-MG.1000






今回は末梢血液像のリンパ球と類似細胞を提示しました。異型リンパ球を反応性リンパ球として表記しています。
異型リンパ球はわが国独自の表現の様で、外国の表現に合わせてみました。

【正答】
A-裸核の巨核球、B-異常リンパ球、C-異常リンパ球、D-変性細胞、E-反応性リンパ球、F-反応性リンパ球 

【解説】
A.細胞径16μm大、N/C比は高く、核は類円形で軽度の不整、クロマチン網工は粗剛で濃縮状です。濃縮状の核と核形不整の所見からATL細胞を考えますが、核の盛り上がり状はみられず平坦状、また単調(単一)様式はなく暗紫色の核塊として裸核の巨核球に同定しました。骨髄の過剰なまた異常な巨核球系の産生に起因とされます。

B.細胞径18μm大、N/C比は低く、核は分葉傾向にあり、クロマチン網工は粗剛で濃染状、細胞質は淡青色です。
一見、単球様ですが核所見が濃染状で合致せず、単調様式であったことから異常リンパ球に同定しました。本例はATLのくすぶり型と診断されたものです。

C.細胞径18μm大、N/C比は高く、核はほぼ円形、クロマチン網工はやや粗剛、核小体は不明瞭ながらみられます。
単調様式から異常リンパ球を考えました。本例は急性リンパ性白血病でした。

D.細胞径25μm大、N/C比はやや高く、核は類円形で軽度の不整、クロマチン網工は核質の粉砕(?)によって捉えることが困難なようです。従って、アポトーシス寸前の細胞と思われ変性細胞に同定しました。本例は伝染性単核球症でした。

E.細胞径20μm大、N/C比はやや低く、核形は類円形で軽度の不整、クロマチン網工は粗剛で核小体らしきものがみられ、細胞質は軽度の好塩基性です。単調様式はなく反応性リンパ球(芽球様)に同定しました。

F.細胞径30μm大、N/C比は低く、核は軽度に不整がみられ、クロマチン網工は粗剛です。細胞質は部分的に好塩基性がみられ、やや太めのアズール顆粒が散在してみられます。一見、単球様ですが大型でクロマチン網工の粗剛さと好塩基性の細胞質、また太めの顆粒はリンパ球と思われ反応性リンパ球に同定しました。



問題 2

   60~65歳.男性。初診時から治療中に骨痛を訴え来院され、骨髄穿刺がなされた例です。

【解説】

(BM-MG×1000)

(BM-MG×600)

(BM-MG×1000)

(BM-PO×1000)


【初診時の骨髄】

(A)初診時の骨髄:顆粒球系の分化過程がみられるなか赤芽球系の抑制がうかがえます。中央に好酸球の幼若型がみられます。末梢血は幼若顆粒球の出現や好塩基球の増加がみられ、血中のビタミンB12の高値や尿酸値の上昇がみられました。NAP染色による好中球の活性は低く、t(9;22)/BCR-ABL1遺伝子が証明されCMLの慢性期と診断されました。

【経過中の骨髄】
CMLの治療開始5年後に骨痛を訴え来院され、白血球数増加、血小板数減少から急性転化を示唆に骨髄穿刺が施行されました。末梢血では白血球数増加(31,800/μL)と血小数板減少(2.6万/μL)がみられ、白血球分類では芽球の増加(30%)と好塩基球の増加(318/μL)がみられました。
(B)(C)過形成骨髄(42.6万/μL)の分類では、芽球は70%と増加していました。
芽球は中~大型で、N/C比はやや高く、核は円形~類円形でクロマチン網工はやや粗剛で核小体は不明瞭です。(D)骨髄の芽球はPO染色に陰性で、CMLのリンパ球系(?)への急性転化を疑いました。

【確定検査】
免疫形質:CD10,CD19,HLA-DR陽性
染色体・遺伝子:t(9;22)(q34;q11)/BCR-ABL1遺伝子認める

【臨床診断】
初診時は慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期として診断され治療経過中の例です。約5年の経過後に末梢血に芽球が30%、骨髄に70%と増加がみられ急性転化が疑われました。芽球はPO染色に陰性、表面マーカーでB細胞性の性格を認めたことでCMLからリンパ芽球への転化と診断されました。CMLの急性転化は各系統に及びますが、AMLへ転化した例のなかにPO染色が陰性の場合があるので、表現型の検索が重要です。
CML期のビタミンB12や尿酸値の上昇は、両者とも白血球に由来するものであり、前者は結合蛋白の増加によるもの、後者は白血球の破壊によるものとされます。また、骨髄細胞増加による骨痛や骨叩打痛はCMLの特徴的な病態でもあります。



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