第85回 「マンスリー形態マガジン」 2018年5月号

『今、ソメイヨシノが危ない』

  福岡のサクラ開花宣言は1週間ほど早くなり、今年も入学式まではもたなかったようです。
今に始まったことではありませんが、私の子供の頃に比べると年々早くなってきているようです。
毎年、日本のサクラ開花宣言は、1月下旬沖縄北部に咲く「寒緋桜(かんひさくら)」です。梅や桃色の花がうつむきがちに咲くのが特徴です。私は今年の1月28日(日)、5年ぶりに寒緋桜を楽しみました。
そう言えば、沖縄では桜の下で宴会などする慣習はないので、周囲はクリーンそのものです。
  本土では「染井吉野(ソメイヨシノ)」が最も親しまれていますが、最近、“てんぐ巣病”に罹りやすいことが報告されています。原因として、2012年に日本で初めて侵入が確認された“クビアカツヤカマキリ”によるものとされ、加害されたサクラは枯れ、早期の害虫駆除が強いられますが、伝染性もあり撲滅は大変だそうです。症状としてはサクラの枝に形成されたコブ状がそうではないかと言われています。このような状況から、2009年からソメイヨシノの苗木の販売が中止されているようです。
「日本花の会」ではソメイヨシノに変わる品種として、花や開花時期が同じとされる「神代曙(ジンダイアケボノ)」を推奨しているようです。ジンダイアケボノとは東京の調布市にある都立神代植物公園で発見されたサクラで、日本から米国に渡った日本のサクラ同士の雑種と考えられています。ソメイヨシノに比べ、色はやや濃く一重ばかりの個体と旗弁や5枚以上の花弁をもつと言われます。
  サクラの楽しみ方は、開花して1週間、満開になって1週間、散り始めて1週間とも言われますが、サクラの世界にも世代交代の波が押し寄せているのでしょうか。

(資料:日本花の会:桜図鑑)

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


著作権について

今回のねらい

  今回は、骨髄像の観察で注意するべき所見と形態診断に挑みます。
骨髄は、形態の類似細胞や鑑別を要する細胞を提示しました。形態の特徴的所見を捉え同定しましょう。
症例編は、わずかな臨床像と検査データから次なる検査を模索し、末梢血および骨髄像から形態診断を行なって下さい。

問題

骨髄の細胞同定を行なって下さい。

1-1<問題1-A>

  • BM-MG×1000

1-2<問題1-B>

  • BM-MG×1000

1-3<問題1-C>

  • BM-MG×1000

1-4<問題1-D>

  • BM-MG×1000

形態診断に必要な所見を考え、臨床診断を行なって下さい。

2-1<設問1>

【所見】
【60-65歳.男性】
【主訴】貧血、出血斑 【検査】WBC7,300/μL、RBC269万/μL、Hb9.4g/dL、Ht27.8fL、PLT3.9万/μL、【骨髄】 NCC46.5万/μL(芽球様38.0%) 

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-PO×1000

解答・解説

問題 1

   骨髄の細胞同定を行なって下さい。

【解説】

(BM-MG ×1000)






【解説】

骨髄像で鑑別を要する細胞を取り上げてみました。意外と同定に困難な細胞もあるようです。

【正答】
A-1.単球  2.好塩基球  B-1.形質細胞 2.多染性赤芽球  C-1.骨髄球  2.単球  3.前単球 4.前骨髄球  D-1.分葉核球  2.桿状核球  3.骨髄球  4.幼若好酸球

【解説】
A-1.核は分葉していますが核網工は繊細、灰青色の細胞質には小さな空胞もみられることより単球に同定しました。2.は核の分葉はうかがえますが、不鮮明であり黒紫色の顆粒は核の上にも存在することより好塩基球に同定しました。

B-2.細胞径20μm大の大型、核網工は粗剛でリンパ球様、そして核は偏在性です。好塩基性の細胞質は核周明庭や空胞もみられることより形質細胞に同定しました。2.は細胞質が多染性の色調で核網工は結節状のことより多染性赤芽球に同定しました。

C-1.と4.は幼若顆粒球です。4.の方が大型で、核偏在と細胞質にはゴルジ野がみられ、大型の一次顆粒を認めることより前骨髄球に同定しました。1.はそれに比べ小型で核は類円形であり、顆粒は小型で二次顆粒を思われ骨髄球に同定しました。
2.と3.は核網工が繊細のことより単球系に同定しました。3.の方が核の幅を保持し核小体もみられるようで前単球として捉え、2.は核の分葉もみられることから単球と捉えました。

D-1.は少し過分葉気味の分葉核好中球、2.は棒状核のことより桿状核好中球、3は核の幅は保持していますが、前骨髄球に比べると小型で、一次顆粒はもたないことから骨髄球に同定しました。4.はそれらに比べ大型で橙褐色の粗大顆粒が充満した幼若好酸球に同定しました。



問題 2

   60-65歳.男性。貧血と出血斑を主訴として来院されました。来院時の検査データで白血球は正常(7,300/μL)ですが、貧血と血小板減少がみられました。精査のため骨髄検査が施行されました。

【解説】

(PB-MG×1000)

(BM-MG×1000)

(BM-MG×1000)

(BM-PO×1000)


【末梢血】

(A)大球性正色素性貧血で、白血球正常の白血球分類で芽球が43%みられました。芽球は大型でN/C比は低く、少々短いアウエル小体がみられます(青矢印)。

【骨髄】
(B)過形成の骨髄では芽球が38%と増加し、大小不同や核形不整がみられます(青矢印)。中央上段の3個の細胞は豊富な細胞質に辺縁のみが好塩基性に縁取られ、芽球から分化した像としてうかがえそうです。すなわち、分化・成熟が強いことが示唆されます。

(C)好中球にアウエル小体がみられます(青矢印)が、これは芽球から分化した異常の好中球と認識します。
芽球にはアウエル小体の長いものや束状のものがみられました。

(D)PO染色では、芽球から好中球にかけて強陽性反応がみられます。
芽球の大小不同、アウエル小体の多様性、分化傾向が強いこと、PO反応が強陽性のことより8;21転座AMLが疑われそうです。

【免疫形質】
CD13・33・抗MPO・19・HLA-DRの発現がみられました。

【染色体/遺伝子】
t(8;21)(q22;q22)/RUNX1-RUNX1T1が証明されました。

【臨床診断】
本例は、前回と同様に8;21転座AMLと診断されました。前回は骨髄の芽球が20%以下でしたが、今回は20%を超えており、前回と同様に特徴的な形態像が光顕的診断を裏付ける高いポイントになります。今後、本型に遭遇してもこのような特徴的な光顕的所見を見落とさないようにすれば診断率は高まると思われます。



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