第73回 「マンスリー形態マガジン」 2017年5月号

『 維新150年‥ 』

 明治維新から来年(2018年)で150年を迎えるのに合わせ、日本の近代化の歩みを次世代に伝えるため、政府は「明治の日」の制定に向けて動くそうです。それに伴い各地ではすでに幕末維新をテーマに記念事業の取り組みがなされています。
九州の鹿児島では2018年放送予定のNHK大河ドラマ「西郷どん(せごどん)」にちなんで、すでに観光キャンペーンが展開されています。それに先駆け、4月5日~7日に知覧、霧島、鹿児島を探索してきました。
   南九州市の知覧町は、太平洋戦争末期の沖縄戦において“神風特攻隊” という人類史上類のない作戦で闘い散った若者が飛び立った基地でもあります。1945年(昭和20年)3月26日から終戦(8月15日)の約5ヶ月間の死者は1,036名、その半数近くが知覧基地より出撃しています。知覧特攻平和会館の入り口には、戦闘機“ゼロ戦” や“ハヤブサ” が展示され、館内には隊員達の遺品や遺書が涙を誘います。
   霧島市は温泉郷でもあり、あの坂本龍馬とお龍さんが新婚旅行として訪れた塩浸(しおひたし)温泉や霧島神宮、犬飼滝(いぬかいのたき)などが有名です。慶応2年(1866年)1月23日(新暦3月9日)、京都伏見寺田屋事件で負傷した龍馬は湯治のため、薩摩藩士西郷隆盛の計らいにより霧島旅行が実現したようです。鹿児島には約3ヶ月滞在したと言われます。ちなみに西郷隆盛は日当山(ひなたやま)温泉を好んだようです。
   鹿児島が生んだ幕末の志士には、西郷隆盛、大久保利通、小松帯刀‥はあまりにも有名ですが、裏方に吉井友実(ともざね、後に幸輔)がいました。吉井は、以前より龍馬とも交友があり、龍馬と隆盛の仲介者と言われ、龍馬の霧島旅行の案内役でもあったそうです。それは「薩長同盟」(1866年3月7日)に大きく関与したことになります。また、京都の宿を転々とする龍馬の安否を気遣い、龍馬暗殺の数日前に京都薩摩藩に身を隠すように伝えに行くも留守にて会えず、結局、慶応3年(1867年)11月15日、龍馬は京都近江屋で33歳の誕生日に生涯を終えることになるのです。もしも吉井と再会できていれば新たな幕末を垣間見ることもできたかも知れません。龍馬や薩摩藩士らによって大政奉還(1867年10月)そして王政復古(1867年12月)と中央集権を巡る動きは、やがて天皇を中心とした明治政府(1868年~1912年)の誕生を迎えることになります。
   日本全体が「維新150年」に染まる熱い日を迎えますが、幕末志士の熱き心を振り返るには絶好のチャンスではないでしょうか。

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 



著作権について

今回のねらい

 今回は、骨髄像の細胞同定と症例の光顕的診断に挑みます。
細胞同定は、類似細胞の鑑別ポイントを明確にして同定を行ってください。今回は核のクロマチン構造の所見の捉え方に挑戦してみました。
   症例編は、末梢血、骨髄の形態所見に注意しながら行ってください。
   特殊染色は二法を提示していますが、その特性と反応態度を考えて光顕的診断を試みてください。今回も選択肢がありませんので、限られた情報を駆使しながら絞り込んでみてください。

問題

第73回 骨髄像の細胞同定を行なって下さい。

1-1<設問1>

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

検査データと末梢血、骨髄像より考えられる疾患は何ですか。

2-1<設問1>

【所見】
【50-55歳.男性】
主訴:発熱、倦怠感
WBC23,100/μL、RBC309万/μL、Hb9.8g/dL、Ht29.6%、PLT3.0万/μL、NCC8.9万/μL

  • BM-MG×400

  • BM-MG×1000

  • BM-PO×1000

  • BM-PAS×1000

解答・解説

問題 1

(正解と解説)
   骨髄像の細胞鑑別です。骨髄や末梢血液像の観察には検体の採取から塗抹、乾燥、染色の過程に起こるアーテイファクトや抗凝固剤、薬剤による影響を加味した上での同定が余儀なくされます。また、実践的な細胞鑑別には核網工や細胞質の色調や顆粒の様式を事細やかに観察することになります。

【正答】

(case A-1) リンパ球、 (case A-2) 後骨髄球(変性気味)、 (case B-1) マクロファージ(血球貪食細胞)、
(case C-1) 単球、 (case C-2) 前骨髄球、 (case C-3) リンパ球、
(case D-1) マクロファージ、 (case D-2) 後骨髄球、  (case D-3) 多染性赤芽球

【解説】

(BM-MG ×1000)
A
B
C
D
(case A-1)
細胞径15μm大、核形不整は軽度にみられ、核網工は粗荒で、淡青色の細胞質にはやや太めのアズール顆粒が散在してみられることから顆粒リンパ球に同定しました。単球に類似しますが、単球の核網工は繊細でアズール顆粒は微細で核の周辺に集合しやいため異なります。

(case A-2)
細胞径23μm大、核形不整がみられ、核網工は粗網状で淡橙色の細胞質には顆粒が分散してみられます。核の陥没より後骨髄球を思わせますが、それにしては大き過ぎます。細胞質が不鮮明であることからおそらく変性を来したものと考え、変性気味の後骨髄球に同定しました。塗抹上の問題か薬剤によるものかは不明です。

(case B-1)
細胞径45μm大の大型で細胞質の辺縁が読み取れません。核は類円形で核網工は繊細網状そして核小体を数個認めます(青色矢印)。不鮮明な細胞質に貪食された好中球の消化像がうかがえます(赤色矢印)。形態所見より血球を貪食したマクロファージに同定しました。

(case C-1)
細胞径30μm大、核形は桿状を呈し、核網工はやや繊細でクロマチンの結節はなく、豊富な細胞質はやや好塩基性で膜の辺縁には不規則性(突起)がみられます。核形は桿状核球に類似しますが、細胞の大きさや核質、細胞質の色調などは合致しないことから単球に同定しました。

(case C-2)
細胞径23μm大、核は偏在し中央部当たりにはゴルジ野がみられ、好塩基性の細胞質には粗大な一次顆粒(アズール顆粒)がみられることから前骨髄球に同定しました。

(case C-3)
細胞径15μm大の小型で、N/C比は高く核網工の粗荒さからリンパ球に同定しました。

(case D-1)
細胞径25μm大、この系列にしてはかなり小型ですが、異物の貪食もみられマクロファージに同定しました。

(case D-2)
細胞径20μm大、核形は短径が長径の1/3以上の長さを呈しているようですので後骨髄球に同定しました。

(case D-3)
細胞径12μm大、核は円形でやや偏在、クロマチンの凝集塊がみられ、細胞質は多染性の色調から多染性赤芽球に同定しました。



問題 2

   50歳代、男性の例。感冒様、微熱で来院し、血液検査で白血病が疑われ入院となりました。 来院2週間前には皮下出血、尿道出血を認めました。

【解説】

(BM-MG ×400)

(BM-MG ×1000)

(BM-PO ×1000)

(BM-PAS ×1000)

【末梢血液像所見】(A図)
   末梢血液像はありませんでしたが、白血球増加(23,100/μL)の血液像で芽球は92.0%と増加していました。

【骨髄像所見】(B図)
   低形成の骨髄(8.9万/μL)で芽球は98.0%と増加していました。芽球はN/C比が低く、やや大小不同性で、核は円形から類円形、核網工は繊細で明瞭な核小体がみられます。一部にアウエル小体(赤色矢印)を認めました。

【特殊染色】(C図、D図)
   PO染色(C)に陽性の芽球は40%みられました(赤色矢印)。
   PAS染色(D)には芽球の陽性はみられませんでした(陽性は対照の好中球)。

【生化学所見】
   LD 428IU/L、CRP 13.4mg/dL

【染色体所見】
   46,XY

【表面形質】
   CD13・CD33・34・CD117(+)、HLA-DR(+)

【臨床診断】
   末梢血と骨髄の芽球の増加は、各々92%、98%と顕著であったことより急性白血病を疑いました。
骨髄は低形成ながらも芽球の増加は顕著で、それにはアウエル小体を有するものやPO染色に40%が陽性であったことから急性骨髄性白血病(AML-M1)を疑いました。
LDの高値については、白血病細胞の崩壊によって血中へ流出したことが考えられ、CRPの高値については、尿道出血から皮下出血を来たしたことで急性炎症も推測されます。



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