前 略
ただ今、日本小児白血病・リンパ腫研究グループ(Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group: JPLSG)における急性リンパ性白血病(ALL)の形態中央診断を仰せつかり業務を行っております。
本グループは国内の小児白血病診療施設をほぼ網羅する多施設共同研究の受け皿として立ち上がったもので、事務局は名古屋医療センターにあります。
今や小児白血病は、国内外の積極的な共同研究の取り組みを通じて過去40年間の治療の進歩により、治療成績の向上がみられるようです。なかでもALLは乳児白血病を除くと約80%以上の症例において長期生存が期待できるようになってきております。
日本の小児がん研究グループは以前より4グループが活動しておりましたが、JPLSGの立ち上げによって1つに集約されたことになります。その昔私は4グループのなかの九州山口小児がん研究グループ(KYCCSG. 1984-2007)と小児がん白血病研究グループ(CCLSG.1989-2008)の形態中央診断を担当したことがありますが、普通染色と特殊染色のみで行う光顕的診断の限界や他施設の診断にはかなりの重圧を感じておりました。
しかし、約2500例の標本を観察することによって形態診断の深さを改め直すことができたことも事実です。
JPLSG-ALLの形態中央診断は本部より2011年に依頼され、場所は福岡大学腫瘍血液感染症内科学にお世話になっております。これは同内科学の教授のご配慮によるものと同大学長より非常勤講師の委嘱も拝受しております。参加施設は145で、当診断部の登録例はB-ALL721例、T-ALL175例(2015.1.23現在)となっております。JPLSG登録例については、1人あたり初診時の末梢血・骨髄、治療後として3~4回の末梢血や骨髄の染色標本や未染色標本が送られてきます。当診断部では治療による芽球の割合や初診時についてはPAS染色を施行します。PAS染色はリンパ芽球に80%以上に染まりやすく、なかでも点状~塊状陽性はリンパ芽球を強く支持するものになるからです。もちろん、染色法は自家製法が最適です。
検査技師として新たなる臨床研究グループに参画することができたのは光栄なことであり、前グループでは約24年間活動したことになりますが、今は業務を無事に遂行することと後継者づくりにも目を配ることが求められています。
草々
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
2015.2.20 我が家にて
今回は骨髄の細胞同定と形態診断に挑戦します。
骨髄では赤芽球系細胞の分化過程を提示します。前回と同様に骨髄では顆粒球系細胞と主格をなすものであるため同定基準の確立は必要です。
本細胞は細胞質の色調で命名されていますので好塩基性、多染性、正染性の細胞質の所見をしっかり捉えることになります。それはDNA合成障害における成熟乖離現象(核の遅延)を見抜くことにつながり巨赤芽球の同定が可能になります。
形態診断については初めての試みになります。1枚の画像から形態診断することはナンセンスですが、特徴的な形態像を提示していますので若干の所見を参考にして考えてみて下さい。
骨髄の細胞同定をリストより選んで下さい。
BM-MG×1000
BM-MG×1000
末梢血・骨髄の細胞像より、所見を参考にした選択所見から形態診断を試みて下さい。
【所見】
A.(末梢血) 骨髄の芽球が20%以上、顆粒球系と単球系成分あり
B.(末梢血) PO染色が陰性、CD4/8の発現あり
C.(骨髄) 骨髄の芽球が20%未満、提示細胞のみ形態異常あり
D.(骨髄) 骨髄の芽球が20%未満、顆粒球系成分あり
PB-MG×1000
PB-MG×1000
BM-MG×1000
BM-MG×1000
問題 1
(正解と解説)
【正解】
(CASE A) 1-⑥.前赤芽球、2-⑨.正染性赤芽球、3-⑤.分葉核球、4-③.後骨髄球、5-⑤.分葉核球
(CASE B) 1-⑧.多染性赤芽球、2-⑦.好塩基性赤芽球、3-⑨.正染性赤芽球
【解説】
問題 2
(正解と解説)
【正解】
(CASE A) ③.単球が増加しているー急性骨髄単球性白血病(M4)
(CASE B) ⑥.リンパ球に核異型性がみられるー成人T細胞白血病(ATL)
(CASE C) ②.好中球に核異型性がみられるー非定型性慢性骨髄性白血病(aCML)
(CASE D) ④.単球系に成熟過程がみられるー慢性骨髄単球性白血病(CMML)
【解説】
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