第45回 「マンスリー形態マガジン」 2015年1月号

「血液腫瘍画像データベース」の構築とその評価

前 略

  皆様、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
  さて、2006年10月3日、厚生労働省がん研究助成金総合研究事業(若尾班)として九州がんセンターホームページより発信した『血液腫瘍画像データベース』は、その後厚生労働省第3次対がん総合戦略研究事業(森山班)に引き継がれ、研究事業の終了とともに2014年3月で一応幕を閉じることになりました。
約7年の登録例は225例、提示画像は1,761枚で、ページビューのアクセスは2,023,492に及びました。累計によるわが国のアクセス状況は、大阪、東京、福岡、北海道、埼玉県、愛知県が上位を占め、外国ではアジア、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアの順になっております。
  本データベースは、光栄なことに2010年4月21日より国立国会図書館データベース・ナビゲーション(京都)に登録され、これまでの努力が報いられたことが何よりも喜ばしい限りです。今後は内容の修復に努め更なるデータベースの構築に励みたいと思います。まずは、長い間本データベースをご愛顧頂きましたことに厚くお礼申し上げます。
  関連する「血液医用画像データベース」として、ベックマン・コールター社(2006年10月)より『電脳形態塾・形態自習塾・マンスリーマガジン』、九州大学医学部保健学科(2011年2月)より『画像データベースを駆使した血液形態塾』(文科省研究事業)を発信しております。ベックマン・コールター社のマンスリーマガジンではいつも閲覧下さりありがとうございます。
  これらはすべて無料ですのでどんどんアクセスして下されば幸いです。また間違いや不明な点についてはご一報下されば有りがたく存じます。本年もどうぞお付き合い下さい。

草々

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


5m近くのシングルタワー
5m近くのシングルタワー

阿南建一先生
今年も咲き誇る皇帝ダリア(メキシコダリア)
(拙宅にて 2014.11.13)



著作権について

今回のねらい

今回は末梢血の細胞所見と特殊染色に挑戦します。
末梢血では、鑑別を要する細胞とアーテイファクト(人工産物)を提示しました。
形態検査は採血行為や使用する抗凝固剤(EDTA塩)によってアーテイファクトや形態変化をもたらすことが多々あるため注意を払い、そのような変化を認識した上で形態診断に挑なければなりません。
特殊染色は前回に続きPAS染色の判定に挑みます。
PAS染色における所見の広さと臨床的意義にさらに注目してみましょう。

問題

末梢血の細胞所見をリストより選んで下さい。

1-1<設問1> 細胞所見

  • PM-MG.1000

  • PM-MG.1000

  • PM-MG.1000

骨髄のPAS染色所見から考えられる細胞をリストより選んで下さい

2-1<設問1> 所見

解答・解説

問題 1

( PB-MG ×1000 )

(正解と解説)
【正解】

(CASE A)  1-④単球 2-④単球 3-①桿状核球 4-③リンパ球
(CASE B)  5-⑨フイブリン糸
(CASE C)  6-⑥骨髄球 7-④単球

【解説】

(CASE A)
1.2.は同系細胞で、4つのなかで最も大きく(18μm大)で核形不整がみられ、核網工は繊細で、灰青色の細胞質には微細顆粒や空胞がみられることより単球に同定しました。3.はクロマチンが弱いながらも結節がみられ棒状の形状より桿状核球に同定しました。少し低顆粒気味かも知れません。4.は小リンパ球に同定しました。
(CASE B)
5.は微小集合体のフイブリン糸の析出です。原因として、採血不良によるものや抗凝固剤(EDTA)の混ぜ具合が不十分だった可能性が考えられます。この微小集合体に血小板が付着すると偽性血小板減少を来たし、また白血球数にもバラツキをもたらします。
(CASE C)
6.は核の偏在傾向より前骨髄球に類似していますが、それに比べると細胞径16μm大の小型で、細胞質の好塩基性は消失し、二次顆粒がみられることより骨髄球に同定しました。7.は1.2.と同様で単球に同定しました。

問題 2

( PB-MG ×1000 )

(正解と解説)
【正解】

(CaseA.B.C)  1-①好中球 2-①好中球 3-④単球 4-③好塩基球

【解説】 

(CaseA.B.C)
骨髄における正常細胞のPAS染色の反応を提示したものです。
1.2.は好中球の陽性の反応態度です。4.は好塩基球です。本細胞は水溶性の性質により染色の過程で顆粒が溶出し空胞化してみられますが、陽性顆粒は結構強い顆粒状にみられます。リンパ球(Aの1時方向)や単球(3)は陰性になります。

( PB-MG ×1000 )

(正解と解説)
【正解】

(CaseD.E.F)  5-⑥リンパ芽球 6-⑧成熟赤芽球 7-⑦幼若赤芽球 8-⑤骨髄芽球

【解説】 

(CaseD.E.F)
骨髄における芽球のPAS染色の陽性所見を提示したものです。
5.は点状~ドット状に強陽性のリンパ芽球で、この染色態度はリンパ芽球に特徴的でALLの診断に有効となります。TよりもBリンパ芽球の方が陽性率が高いようですが両者とも陰性例もあります。6.は びまん性陽性の成熟赤芽球、7.は顆粒状陽性の幼若(未熟)赤芽球ですが、赤芽球はこのように幼若型と成熟型の染色性が異なります。本例はM6aの症例です。赤芽球の陽性は腫瘍性を疑う所見になりますが陰性例もあります。8.は骨髄芽球に微細顆粒状陽性を呈したものですが、通常は陰性が多いようです。



これから先のページでは、医療関係者の方々を対象に医療機器・体外診断薬等の製品に関する情報を提供しております。当社製品を適正に使用していただくことを目的としており、一部の情報では専門的な用語を使用しております。
一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。

医療関係者の方は、次のページへお進みください。
(お手数ですが、「進む」ボタンのクリックをお願いします)