前 略
私が、血液形態に深く関わったのは国立大阪病院(1975.12)に勤務していた頃からになりますので、早38年が過ぎました。
珍しさもあってその頃から血液細胞を顕微鏡撮影して集積していたものです。時代は流れ、顕微鏡の性能も高度化し撮影技術も高まりアナログの時代が支配してきました。やがて、デジカメによる撮影が主流になってきましたが、アナログ推奨の私には関係ないことと思ってました。ただ、在職中とは違って退職してからは自前になりますので、フイルム時代、現像代などの出費がかさみます。
今年の1月ついに異変が起こりました。撮影用のカメラに修理不可能な故障が発生し、38年もの間続いた私の"アナログ"の時代は終わりを告げることになりました。とはいうものの、驚くことに、デジカメのモニターはなんと約50万円!!
正直いって"Oh my god!"でした。
家計をやりくりし現在はデジカメ撮影に悪戦苦闘しておりますが、以前のような赤味の色調がうまくでません。血液細胞はまさしく"あずき色"と思われますので、アナログ時代に活用していた画像処理ソフトを再度有効利用し、あずき色に近づける工夫に取り組んでいます。そのコツは、ソフトウェアの編集を開き、画像調整のライティングで明るさを調整し(なるべく明るく)、自動カラー補正を行い、自動シャープをかけることになります。
そして必要な箇所を囲み、編集のコピーにてプレゼンテーションソフトに張り付けることになります。
どんなアカデミックな論文も写真の巧拙で出来栄えが半減します。技師として綺麗な塗抹、綺麗な染色そして鮮明な画像の提供は当たり前のことだと私は思いますが、みなさんはいかがでしょうか?
草々
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
~生き返った画像~
デジカメ撮影
デジカメ撮影後
画像処理ソフトで加工したもの
新人さんは新しい職場にも慣れてきたことでしょう。車の免許も一緒ですが覚え立てに事故は起こりやすいのでインシデントには十分配慮して下さいね。
問題1.はデジカメ撮影のもので、問題2.はアナログ撮影のものです。赤味が弱いのがデジカメの特徴ですね。
今回も末梢血液像の鑑別細胞に挑戦します。
問題2.のケースカンファレンスはMG染色とNAP染色の見方について挑戦します。
CASE A~Dにおける末梢血液像の細胞同定をリストより選択してください。
PB-MG×1000
PB-MG×1000
PB-MG×1000
PB-MG×1000
高齢の患者さんで白血球が186,500/μL(芽球1%、骨髄の芽球2%)、CRPが18.2mg/dLの結果でした。末梢血のMG染色とNAP染色を提示しますが考えられる疾患は何ですか。
PB-MG ×400
PB-NAP ×400
(CASE A) 1-①.異常リンパ球
(CASE B) 1-⑦.骨髄球,2-⑤.芽球
(CASE C) 1-⑨.分葉核球,2-④.単球
(CASE D) 1-⑨.分葉核球,2-③.リンパ球,3-⑩.好酸球
(CASE A)
1.3個は細胞径約27μm大の大型です。N/C比は低く、核は円形~類円形核で核網は粗荒で核小体は不明瞭です。豊富な細胞質は淡青色で辺縁に突起がみられます。
形態像より大リンパ球を疑いますが、それに比べ核網工はやや繊細であることと細胞質の突起物が合致しません。これらは周囲にも増加し単一様式がみられたことより異常リンパ球に同定しました。本例はヘアリー細胞白血病の強制乾燥標本にみられた目玉焼き状ですが、ヘアリー状の形態を証明するには自然乾燥標本にて確認することになります。
(CASE B)
1.と2.は細胞径約22μmです。
1.2.より分化傾向にあり、一見、前骨髄球を思わせますが、核の偏在性は弱く、核網工は顆粒状で、細胞質の顆粒は小さめで二次顆粒を思わせるため骨髄球に同定しました。 2.N/C比は低く、核網工は繊細で小さな核小体を認めることより骨髄芽球に同定しました。
(CASE C)
1.核のくびれ(分葉)とクロマチンの結節が強いことより分葉核球に同定しました。 2.一見、後骨髄球や桿状核球を思わせますが、細胞径約25μm大の大型で、核形は不整、核網工は繊細で灰青色の細胞質には微細なアズール顆粒を認めることより単球に同定しました。
(CASE D)
1.細胞径は14μm大で、核のくびれ(分葉)とクロマチンの結節が強いことより分葉核球に同定しました。 2.細胞径約16μm大で、N/C比は低く、核網工は粗荒で、細胞質は一部塩基性はみられるものの全体的に淡青色のようです。大きさは異型リンパ球の基準(16μm以上)を満たしておりますが形態像より大リンパ球に同定しました。 3.2.の分葉核球よりやや大きく、豊富な細胞質には好酸性顆粒を有することより好酸球に同定しました。
②.慢性骨髄性白血病(CML)
【解説】
高齢で白血球著増の末梢血液像のMG染色とNAP染色を提示しました。
芽球は末梢血、骨髄ともに3%以下でした。末梢血では顆粒球系の分化段階に伴い好塩基球(矢印)も認めます。白血球が186,500/μLのことより好塩基球数は上限基準値の100/μlを超えるため増加になります。好中球はやや過分葉気味で全般に顆粒が少ないようです。
好中球のアルカリホスファターゼ(NAP)染色は陽性が多く活性の高値が伺えます。
芽球の割合と形態像から骨髄増殖性腫瘍を疑い、なかでも慢性骨髄性白血病(CML)を疑います。ただ、NAP活性が高いことがそれに合致しません。検査にCRPが高値(18.2mg/dL)を示していることより重症な炎症性反応などが伺えます。臨床的に重症肺炎に罹患していることが判明したため、肺炎完治後再度NAP染色を実施したところ活性の低下がみられました。骨髄でも末梢血と同様な像を呈しており、結局、染色体で9;22の転座、BCR-ABL1遺伝子変異が証明されたことによりCMLの慢性期として診断されました。
高齢におけるCMLの発症は肺炎などを考慮した上で診断に結びつけることになります。
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