前 略
私が血液細胞と出合ったのは今から45年程前になります。半年後に卒業を控えた2年(当時短大は2年制)の血液検査の実習で、各班に10枚ずつの末梢血標本が配布され、それぞれの標本の白血球分画をレポートして提出することになりました。
顕微鏡を覗いた私は、分葉核球と桿状核球? リンパ球と単球?? 異型リンパ球と異常リンパ球??? と細胞の違いが判らず、ただただ標本を眺めておりました。実習時間はむなしく過ぎ、提出時間まで残り5分となったその時、あせりまくった私は隣の席のA子さんのレポートを写させて頂きました。しっかり帳尻を合わせ何事もなかったように実習室を後にして、草野球のグランドに向かいました。今思い返しても恥ずかしい行動ですが、当時の私は放課後の草野球が何よりも大好きな野球青年でした。
あの時のA子さんは“阿南くん、大丈夫かな?”と思っていることでしょうが、そんな私が今では教壇に立ち、“この細胞の特徴は…”と指導しているのも不思議な話です。私と血液細胞との出会いはそんな恥ずかしいことから始まりました。
To be continued !
草々
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
今回は骨髄の顆粒球系細胞の鑑別とPO染色の応用編です。顆粒球系細胞の分化・成熟については以前に解説致しましたDiggs ら(1956)の “血球の分化・成熟に伴う一般的原則” に従って同定しましょう。
特殊染色については、PO染色の応用編として白血病の病型を考えることに挑戦しました。白血病の光顕的診断において、MG 染色がスクリーニング検査とすれば、PO染色はAMLとALLを鑑別する上で極めて重要な役割を果たします。
CASE 1 の細胞像を確認して1 ~ 10 の細胞の同定を行ってください。
BM-MG×1000
BM-MG×1000
CASE 2 の1 ~ 4 の細胞像を確認して考えられる病型を選択してください。
PB-PO×1000
PB-PO×1000
PB-PO×1000
PB-PO×1000
主に顆粒球系細胞の成熟過程を追ったもので、はじめに最も大きく好塩基性の細胞質に粗大な一次(アズール)顆粒を有する前骨髄球(10)を確認します。それよりも小さくほぼ類円形の核を示す骨髄球(8)の細胞質は淡橙赤色で二次顆粒を有し、さらに分化・成熟すると核の陥没が出現し、それが強くなると分葉へ様変わりすることになります。また、核形の所見から核の短径と長径比(*が1/3以上は後骨髄球(2・4)、1/3未満は桿状核球(7・9)として同定します。 桿状核球の核は弓状に湾曲し、分葉核球の核はくびれて分葉傾向を示します。
分葉核球の同定基準(**は、1).核の最小幅部分が最大幅部分の1/3未満であること 2).核の最小幅部分は赤血球の約1/4(約2μm)未満であること 3).核は重なり団子状を呈する場合になります。また、3の細胞は、核がすでに濃縮傾向にあることから正染性赤芽球としました。
(*小宮正文:図説血球のみかた.第8版.南山堂.1988)
(**日本臨床衛生検査技師会.血液形態検査ワーキンググループ.1996)
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