第19回 「マンスリー形態マガジン」 2012年11月号
『 13人の豆剣士たち 』
前 略
私は2年前から倉敷芸術科学大学生命医科学科で教鞭をとっております。1995年に創立された新しい私立大学ですが倉敷市の高梁川や水島を一望できる丘陵に学び舎があります。
私の担当カルキュラムは、前期は「標本検討会」、「検査管理総論」、後期は「血液形態学の実習」、「血液形態学」を担当しています。生命医科学科では「細胞検査士」資格の取得にも力を入れており、細胞形態学にはひときわ熱心です。
この学び舎で、私の周りに集まった“血液学スキスキグループ”は今年で2年目を迎え、“13人の豆剣士たち”が日々腕を磨いております。はじめはリンパ球と単球の区別も出来なかった豆剣士たちでしたが、最近ではめきめきと腕を上げて今では症例検討も行うようになりました。
また、課外授業ではソフトボールに興じたり、焼肉の食べ放題に行ったり、豆剣士たちと楽しい時間を過ごしております。
13人の豆剣士は、竹刀を真剣に持ち替え、いずれ戦場に巣立っていきます。そして、医療の現場の中でさまざまな症例や数多くの標本と格闘しなから、少しずつ一人前になっていくことでしょう。私はいつの日か一回り大きくなった豆剣士たちと真剣勝負ができればと今から楽しみにしています。
草々
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 
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13人の豆剣士たち
著作権について
問題
CASE 1 ~ 4の細胞像を確認頂き、1 ~ 7の細胞同定を行ってください。
1-1CASE 1
-
BM-MG×1000
1-2CASE 2
-
BM-MG×1000
1-3CASE 3
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BM-MG×1000
1-4CASE 4
-
BM-MG×1000
解答・解説
- (BM-MG×1000)
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- (正解と解説)
【正解】 1. 細網細胞
【解説】
この細胞は、大型な細胞で細胞質は溶出を思わせる不明瞭であることから、血液細胞は除外できるようです。核は円形で核網は繊細であることより、細網細胞が考えられ、同定しました。形は円形でリンパ球に似ているので、リンパ球様の細網細胞とみてもよいかもしれません。
【正解】 2. リンパ球
【解説】
この細胞は、大きさ14μmで、N/C比は低く、核は偏在傾向にあり、核網は粗鋼のことから、リンパ球を思わせます。細胞質の好塩基性がみられないことから、形質細胞は否定し、成熟リンパ球と同定しました。
【正解】 3. マクロファージ
【解説】
この細胞も大型な細胞で、1.と同じく細胞質が不明瞭なため、血液細胞を除外できるようです。核は類円形で繊細で、何よりも広い細胞質には異物を貪食した様がみられることより、マクロファージと同定しました。
- (BM-MG×1000)
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- (正解と解説)
【正解】 4. 組織好塩基球
【解説】
この細胞は大きさが18μmで、細胞質は黒紫色の大型顆粒が充満し、核らしきものが10時方向にみられます。顆粒の色調は好塩基球の名残りを有し、細胞質の豊富さから、好塩基球が組織に移行した姿が伺えられ、組織好塩基球(肥満細胞、マスト細胞)と同定しました。
【正解】 5. 形質細胞
【解説】
この細胞の大きさは20μm大で、豊富な細胞質に小型な核が偏在してみられます。1.と類似しますが、細胞質には顆粒はみられず、核周明庭がみられ、空胞も見られることから形質細胞に同定しました。細胞質の赤色は、グロブリン産生の強さが伺えます。
- (BM-MG×1000)
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- (正解と解説)
【正解】 6. 組織球
【解説】
この細胞の大きさは、18μm大で、核は偏在し、豊富な細胞質は好塩基性で、中央には赤血球らしきものの貪食がうかがえます。組織球と同定しましたが、貪食したようであれば、血球貪食細胞になります。
- (BM-MG×1000)
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- (正解と解説)
【正解】 7. 組織好酸球
【解説】
この細胞の大きさは25μm大で、豊富な細胞質は不規則性で、しかも好酸性顆粒を有することから組織好酸球と同定しました。血液細胞とすれば幼若好酸球になりますが、通常、このような大型のものは存在せず、何よりも細胞質の不明瞭が合致しません。通常、この名称は使われませんが、組織好塩基球があるように組織好酸球があってもおかしくないと思います。
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