第165回「江戸を継ぐ石造アーチ水路橋」2025年3月号

今月のコラム:江戸を継ぐ石造アーチ水路橋

熊本県上益城(かみましき)山都町に「通潤橋(つうじゅんきょう)」という橋が架かっているのをご存知でしょうか。今から約160年前の1854年(嘉永7年)、四方を河川に囲まれた白糸台地に農業用水を送るために造られた石造アーチ水路橋です。時の惣庄屋「布田保之助(ふたやすのすけ)(1801〜1873年)が、“肥後の石工”たちに建設させたもので、橋長約78.0m、高さ約21.3m、橋幅6.6mであり日本最大級とされ、昭和35年に国の重要文化財に、令和5年9月に国宝に指定されています。

橋を少しでも軽くするために欄干に手すりがないことや、丈夫な通水管をつくるために石造りの管とつなぎ目に「漆喰」を使うなどの技巧を施し、橋の上部にサイフオンの原理を応用した3本の石の通水管が敷設(ふせつ)されています。 頑丈に建設された通潤橋でしたが、2016年の熊本地震で橋の上部が損傷、復旧工事が進むなか、2018年の豪雨で石垣が崩落しました。2020年7月に4年振りに放水が再開され、再び白糸大地の棚田を潤しています。放水は石管の底に沈殿した土砂やごみを放出するために、農地の灌漑期以外に行われています。ちなみに2025年の放水は、4月5日(土)13時から約15分間行われる予定で、期間は放水カレンダーで確認できます(観覧料500円)。

私はまだ訪れたことはありませんが、知人の話によるとこの放水は圧巻で橋の両端にある石組みの流路の構造も一見の価値があるとのこと。ただ、手摺りや柵がないので、高所恐怖症の私としては見上げて見学するしかないかも知れませんが、通潤橋の近くには布田保之助を祀る布田神社があるそうですので、併せて参拝を考えております。皆さんも訪れてみては如何でしょうか。

  • 復興した通潤橋の放水
    (山都町郷土史伝承会資料)


  • 布田保之助氏を祀る布田神社.昭和11年11月創立
    (山都町郷土史伝承会資料)


  • 地震、豪雨に耐え抜いた通潤橋



2025年2月号の問題.  下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【Q】 血球貪食細胞は標本中にどれくらい認めれば所見として報告した方がよいでしょうか。また末梢血にも出現することはありますか。マクロファージの役割も教えてください。
【助言1】 血球貪食症候群(HPS)とは骨髄などの網内系組織において炎症性サイトカインにより活性化されたマクロファージが増殖し自己血球を貪食する病態で、血球貪食性リンパ性組織球症(hemo-phagocyticlymphohistiocytosis:HLH)などと呼ばれます。
骨髄像における血球貪食細胞については、HLH-2004の診断基準(Henter JL,et al.2007)によりますと、骨髄の有核細胞中の2%以上に意義があると記載されています。
また末梢血液像に出現することを経験し、大型細胞であることから特に塗抹の引き終わりに注意します。本症は全身性の高炎症性サイトカイン血症とされるため、早期発見、適切な治療が求められます。発熱、血球減少、血清フェリチン・CRP・LD・sIL-2Rの上昇、NK活性の低下や消失などが特徴とされます。
【助言2】 単球から分化したマクロファージの役割は、適応免疫系で重要な役割を担い、細菌やウイルスなどの異物を殺滅する炎症応答を引き起こし、組織修復や組織再生に関与するといわれます。 
マクロファージは組織ごとに特有の名称でよばれ、固有の機能をもつとされます。
(皮膚:ランゲルハンス細胞、肝臓:クッパー細胞、リンパ節:マクロファージ・樹状細胞など) 

  • 末梢血液像にみられた血小板
    (矢印)を貪食した血球貪食細胞


  • 骨髄像にみられた白血球(矢印)、赤血球、赤芽球、血小板を貪食した血球貪食細胞








    2025年3月号の問題.  
    下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

    【Q1】 当施設では赤血球形態異常の報報告は、破砕、球状、連銭形成に注意を配っていますが、臨床へ迅速に報告する必要な形態異常は何があるでしょうか。
    【Q2】 慢性骨髄性白血病では好塩基球が増加しますが、観察上何%あれば報告したらよいでしょうか。花粉症の時期な好酸球とともに好塩基球も増加することがあり判断に迷うことがあります。

    形態マガジン号キャプテン  阿南  建一

    MAPSS-DX-202503-15

    著作権について

    今回のねらい

    「細胞同定」については、骨髄像の600倍から細胞を観察してみたいと思います。
    「ワンポイントアドバイス」は、頻度は少ないのですが、診断が遅れると臓器不全などで予後不良とされる血球貪食症候群を取り上げました。

    問題

    問題1

    1-1骨髄像の細胞同定を行ってください。

    • BM-MG.600

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