第163回「2024年を振り返り、2025年に託すこと」2025年1月号

今月のコラム:2024年を振り返り、2025年に託すこと

2025年の新年を迎え、マンスリーマガジンは今回(第163回)で13年目を迎えました。

このような長きにわたり連載をさせていただけるのも、ひとえに閲覧してくださる皆様ならびにベックマンコールター社スタッフのご支援のおかげで、改めてお礼申し上げる次第です。今後もアクセスしていただけるよう精進いたしますので引き続き「マンスリーマガジン」をよろしくお願い申し上げます。

私こと、13年間在籍させて頂いた福岡大学医学部感染症血液内科学教室を昨年末に退職することになりました。77歳までも臨床検査技師として勤めることができましたのは前教授の田村和夫先生ならびに現教授の高松泰先生のご配慮の賜物でもあります。

そのなかで8年間は、日本小児がん研究グループ(JCCG)の形態中央診断部を担当しALL1,858例(B-ALL:1509例、T-ALL:349例)をレビューしました。この共同研究グループによる新しい治療レジメンが開発され、T-ALLが2023年6月にLancet(英国)から、B-ALLが2024年11月にJournal of Clinical Oncology(米国)から発行(パブリッシュ)され、技師冥利に尽きる成果となりました。さらに、血液内科の433例の骨髄像レビューを担当し、形態診断の難しさも改めて実感いたしました。

2024年9月には、「ベーシック形態目視録」Q&A(A5版)を出版し、初めての自費出版になりましたが、血液部門以外の16名の皆様のご協力を得ることができました。

2025年に託しますことは、昨年から計画しておりました血液形態学の専門技師の人材育成支援事業(株式会社D・リレーションズ https://www.d-relations.com/)を1月からスタートさせることです。前例のない企画でありますが、相談医の先生をはじめ講師一同、目標に向かい一歩ずつ前進する所存ですので、ご興味のある方はHPからのご参加をお待ちしております。

  • 我が家のベランダからのご来光です
       (2025.1.1  AM7:35)


  • 新書「ベーシック形態目視録Q&A」の発行 
    (2024.9.1)

  • Journal of Clinical Oncology(2024.8)
  • Lancet(2023.9)



2024年12月号の問題.  下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【Q】 MCVが60~70ほどで小球性の患者さんの血液像について。RBCの大小不同、菲薄、楕円、標的など認められず、小型のRBCばかりの時は、どのような病態が考えられるのでしょうか。また追加検査など教えて頂きたいです。
【助言1】

ヘム合成低下(鉄代謝・ポルフイリン代謝)のなかで、鉄代謝異常を呈する鉄欠乏性貧血(IDA)、無トランスフエリン血症を考え、潜在的IDAの存在やIDAへの移行も踏まえます。
また、体内の貯蔵鉄(フエリチン)が減少したものの、ヘム鉄は持ちこたえている状態 も考慮します。潜在的とは中に隠れた状態で外には現れずに存在することです。そのため、小球性低色素性貧血に含まれる鉄芽球性貧血、β-サラセミア(小型標的)や熱傷などは除外したいところです。
検査には血清フエリチン、血清鉄、総鉄結合能、トランスフェリン飽和率などの鉄動態検査は不可欠です。

【助言2】

小球性には2通りあるようです。1つ目は、骨髄の赤芽球の段階でヘモグロビン合成の障害が起こり小さくなることを運命づけられた小赤血球(鉄欠乏性貧血)で、小さいながらも円形で菲薄赤血球を呈します。
2つ目は、骨髄から放出された後に機械的ないし物理的作用による断裂や細胞膜の喪失により小球状を呈するものです。







    2025年1月号の問題.  
    下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

    【Q1】 鉄欠乏性貧血の血液像で、 楕円状の赤血球が多くみられるようですが、楕円赤血球として捉えるべきでしょうか。また、卵形赤血球と楕円赤血球の違いを教えていただきたいです。

    形態マガジン号キャプテン  阿南  建一

    MAPSS-DX-202501-5

    著作権について

    今回のねらい

    「細胞同定」については、末梢血液像の細胞同定に挑戦します。紛らわしい細胞や鑑別を要する細胞を提示しましたので試みてください。
    「ワンポイントアドバイス」は、小球性低色素性貧血の赤血球形態の捉え方について解説します。

    問題

    問題1

    1-1骨髄像の細胞同定を行ってください。

    • BM-MG.600

    解答・解説

    問題 

    骨髄像の細胞同定を行ってください。

    【解説】

    1. 直径18µm大、大型で核はやや偏在し、クロマチンは粗剛で細胞質は赤味を帯び顆粒はやや大きめです。前骨髄球に類似していますが、核網が粗く細胞質が好酸性の色調から骨髄球を考え大型であることから骨髄球のなかでも幼若型を考えます。
    2. 赤血球大で僅かに細胞質がみられクロマチンは粗剛のことからリンパ球にしました。
    3. クロマチンは粗剛で、細胞質は淡青色のことからリンパ球にしました。
    4. 細胞質は不明のことから裸核細胞と捉えました。
    5. 3.と同様にリンパ球と思われ、顆粒を認めるようです。
    6. 直径11µm大、核は中心性でクロマチンは凝集状、細胞質は好塩基性がやや強いようですが、大きさと核質から多染性赤芽球にしました。
    7. 直径15μm大、核は偏在しクロマチンは粗剛、細胞質の7時あたりは不明瞭ながら淡橙黄色で顆粒は二次顆粒とみなし後骨髄球にしました。
    8. 細胞質は不明瞭のことから裸核細胞と捉えました。
    9. 直径23μm大、大型で核は偏在し、核形不整でクロマチンはやや繊細、細胞質は軽度好塩基性で顆粒を認めることから前単球にしました。
    10. 直径15μm大、核は円形でクロマチンは顆粒状、細胞質は豊富で好塩基性が強く、細胞は典型的に比べ小型ですが5時方向に突起を認めることから前赤芽球にしました。

    これから先のページでは、医療関係者の方々を対象に医療機器・体外診断薬等の製品に関する情報を提供しております。当社製品を適正に使用していただくことを目的としており、一部の情報では専門的な用語を使用しております。
    一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。

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