新緑の薫り漂う4月27日、私は近所にある櫻井神社(1632年創建)を訪れました。参道の途中に高さ10mほどの年季の入った木に咲く愛らしい白色の花をみつけました。「椿の花かな?」と思いましたが、一緒に訪れていた知人に訊ねると「沙羅(さら)の花」とのこと、初めてみるものでしたので思わず写真を撮りました。
後日、沙羅の花について調べてみますと夏に向けて沙羅の木に白い花を咲かせる別名ナツツバキ(夏椿)と思われました。ナツツバキは直径15cm程度の花で、花びらは白く花芯部は黄色で、夜明けに開いて夕方に落ちてしまう「一日花」とされ、花言葉は“愛らしさ”です。開花時期は3~7月頃で、純白の花は少し明るい木陰と相まって涼しさを運んでくれます。日本では古くから「沙羅双樹」(さらそうじゅ)と呼ばれているようです。
インド原産の沙羅双樹は日本では越冬できないため滋賀県のある植物園でのみ目にすることができるそうですが、オレンジやジャスミンが合わさったような爽やかな香りを漂わせるのが特徴とされます。お釈迦さまが最期を迎えるときにこの木を選んで横たわったといわれ、対になっていたことから「沙羅双樹」とよばれ、満開の花は死を惜しむかのように舞い散ったといわれます。そして三大聖木の一つとして仏教においては重要な樹木とされています。
鎌倉時代に書かれた平家物語の冒頭文に“祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。”とあるように、「一日花」である沙羅双樹をこの世の全てのものは常に同じ状態が続くことはなく、盛んな者も必ず衰える「無常」の例えとして、また「はかなさの象徴」として登場しています。
不意に見た花がはるか昔に書かれた花と同じものだったとは驚きでした。6月に入り再び櫻井神社を参拝すると、花が一輪も無く佇む沙羅の木に、まさに無常さを感じてしまいました。
2024年5月号の問題. 下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。
【Q1】 | 普通染色でメイグリュンワルド染色液からギムザ染色液に入れる際、成書では緩衝液でメイグリュンワルドを落とすと書いてありますが、それを省略したり、水を使用したりすると、染色にどのような影響が出るのか教えていただきたいです。また、普通染色で細胞質が青色に染まるのはどのような理由からでしょうか。 |
【助言1】 | 染色の過程で緩衝液による洗浄は、多分にメイグリュンワルド液がギムザ液のpHに変化を与え染色性の干渉を抑制するための処置と思われます。自動染色機によるメイギムザ染色では、メイグリュンワルド液からギムザ液に直接入り、ギムザ液の中では染色が終了するまで染色籠は上下しています。メイグリュンワルド液を洗い流すまた両液をなじませるための動作かと思われます。また、持ち越しのメイグリュンワルド液の量はごく少量で染色性に明らかな変化を及ぼすことはないと思われます。実際に標本を観察していて染色性に影響を及ぼす程の変化はないと実感しています。 |
【助言2】 | 普通染色は塩基性色素、酸性色素、中性色素があり、緩衝液で希釈することによって色素が荷電し細胞内物質と色素がイオン結合し染色されます。塩基性色素にはメチレンブルーやメチレンアズールが含まれ、前者は緩衝液中では陽性に荷電し、細胞内で陰性に荷電している核のDNAやRNA(核小体)また細胞質のリボソーム(RNA)や一部の蛋白成分を青色に染めます。後者はメチレンブルーの酸化によって生じ、核のDNAはメチレン青よりもメチレンアズールの方が強く親和性を示し、また細胞質のアズール顆粒も赤色に染めます。細胞質が青染する血液細胞は細胞質のリボソームに主にメチレンブルーが作用したもので、リンパ球、単球、異型リンパ球などがそうで、ほかに幼若細胞では細胞分裂時に2個分の細胞質を産生するためにRNA量が増加し青色に染まることが考えられます。 |
2024年6月号の問題. 下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。
【Q1】 | 塗沫標本を作製した際に何度引いても気泡が入る検体がありました。中性脂肪、総コレステロール、LDLコレステロールが少々高値のほかは基準値内でした。この原因と血液中に何が起こっているのでしょうか。このほかにも末梢血塗抹時に起こる特殊な事象があればご教示いただけますでしょうか。 |
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
「細胞同定」については、骨髄像の同定に挑戦します。紛らわしい細胞や鑑別を要する細胞を提示しましたので試みてください。
「ワンポイントアドバイス」は、普通染色について解説します。
問題1
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
問題
骨髄像の細胞同定を行ってください。
【解説】
A-1. 直径15μm大、核は類円形で偏在しクロマチンは粗剛、細胞質は橙黄色で顆粒は小さく二次顆粒とみなし骨髄球にしました。
A-2. 直径13μm大、核は湾曲しバナナ状でクロマチンは一部結節状、細胞質は橙紅色のことから桿状核球にしました。
A-3. 直径20μm大、核は類円形で中央寄り、クロマチンは粗網状、細胞質は軽度好塩基性で顆粒は一部に認め、全体の所見から前骨髄球にしました。
A-4. 直径13μm大、クロマチンの結節は認めますが核の分葉まではいかないようで2.と同様に桿状核球にしました。
B-1. 直径13μm大、核は湾曲し偏在傾向でクロマチンは粗剛、細胞質は淡紅色で顆粒は二次顆粒とみなし桿状核球にしました。
B-2. 直径20μm大、核は類円形で中央寄りクロマチンは粗剛、細胞質は僅かに好塩基性がみられ顆粒は小さく二次顆粒とみなすと骨髄球になりますが、大型であることから前骨髄球の分裂直後として未熟骨髄球になる可能性もあるようです。
B-3. 直径12µm大、核はくびれ分葉傾向でクロマチンは結節状、細胞質は橙紅色で顆粒は小さく二次顆粒とみなし分葉核球にしました。
B-4. 直径13μm大、核は湾曲しクロマチンは粗剛、細胞質は壊れ気味で顆粒は二次顆粒とみなし桿状核球にしました。
B-5. 直径15μm大、核は不整がみられクロマチンは繊細、細胞質は灰青色で一部空胞を認めることから単球にしました。
B-6. 直径15μm大、細胞は紡錘形で核は中央にみられるも不明瞭、細胞質は黒紫色の顆粒が充満していることから肥満細胞にしました。
C-1. 直径15μm大、核形不整でクロマチンは繊細、細胞質は軽度好塩基性のことから単球にしました。
C-2. 直径12μm大、核は分葉しクロマチンは結節状のことから分葉核球にしました。
C-3.4. 直径13µm大、共に核は湾曲しバナナ状、細胞質は橙紅色とみなし桿状核球を考え、4.の方がクロマチン結節が強いようです。
C-5. 直径15μm大、核形不整でクロマチンは繊細、細胞質は軽度好塩基性から単球にしました。
C-6. 直径12µm大、核はくびれ分葉傾向でクロマチンは結節状から分葉核球にしました。
D-1.直径16μm大、N/C比は高く、核は円形でクロマチンは網状、核小体を認め、細胞質は軽度好塩基性から骨髄芽球にしました。
D-2.3. 直径13~14μm大、共に核は分葉しクロマチンは結節状、細胞質は橙紅色で二次顆粒とみなし分葉核球にしました。
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