太宰府(だざいふ)天満宮は福岡県太宰府に所在する重要文化財の神社で、菅原道真公(天神さま)をお祀りする全国天満宮(12,000社)の総本社として有名です。また太宰府は奈良時代の万葉集「梅花の宴」(大伴旅人)にも詠まれた「令和」ゆかりの地としても知られています。道真公の薨去(こうきょ)から令和九年(2027)で1125年となり、その春に式年大祭の斎行が行われるため「御本殿」は124年ぶりに大改修が進められています。それに伴い御本殿の前に仮殿が建設されていますが、屋根には“浮かぶ森”をイメージしたといわれる植樹がなされ、他に類をみないメルヘンチックな風景を醸し出しています。道真公を敬う私は1月28日に参拝し、大祭の儀を祝して心ばかりの御奉賛金を納めてまいりました。
道真公は、平安時代、宇多天皇の右大臣(学者)として重用されるも、醍醐天皇のとき昌泰(しょうたい)の変(藤原氏の陰謀)により901年京都から太宰府に左遷され、その後2年間を太宰府で過ごし59歳で生涯を閉じました。道真公埋葬の際、御遺骸を運んでいた御車の牛が突然伏して動かなくなったのを門弟たちは道真公の御心によるものとしてその地に墓所を定め、その上に現在の天満宮が創建されたといわれています。道真公は生誕が845年6月25日(丑年)、薨去が903年2月25日(丑年)、そして御遺骸を牽いたのが牛ということから、境内には11体の御神牛像がすべて伏した状態で奉納されています。「式年大祭1125年」は生誕と薨去の25日にあやかったものかも知れません。
本殿へ向かう途中に、漢字の「心」の字形に造られた「心字池」とよばれる池の上にアーチ状の三連橋が架かっていますが、後の905年に門弟らによって造られたといわれます。手前から過去、現在、未来の仏教思想に基づく三世一念(さんぜいちねん)を表し、過去は振り返っては成らず、現在は立ち止まっては成らず、未来はつまずいては成らずの教えのもと、水の上を歩くことにより心身ともに清められ神前に進むことになります。何度か訪れた太宰府天満宮ですが、御墓所の所以、牛像、心字池など一つ一つの謂れを改めて知り昔に思いを馳せつつお参りすることができました。
“トトロの森” ならぬ太宰府天満宮の仮殿
(撮影:阿南建一.2024.1.28)
「心字池」に架かるアーチ状の三連橋は、過去、現在、未来の仏教思想に基づく三世一念を表しています。
(撮影:阿南建一.2024.1.28)
御神牛の頭を撫でると知恵を授かると信仰されています。
(撮影:阿南建一.2024.1.28)
2024年2月号の問題. 下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。
【Q1】 | 骨髄像で骨髄巨核球の分布を判定する場合に標本上の数値基準はありますか。また形態異常として意義のあるものはどれですか。 |
【助言1】 | 骨髄塗抹標本上の成熟巨核球は大型で引き終わり部分に散見されます(矢印)。鏡検は低倍率で探索し中倍率で成熟度(大きさ・核の分葉・アズール好性顆粒の有無・血小板の産生)を観察します。一般に巨核球は標本上で数が少ないため引き終わり部分を中心に50個ほどカウントして判定します。巨核球が10個以下は減少、20~50個は増加、50個以上は著増との報告があります1)。その割合は0.03~0.07%(変動域:0~0.4%)2)、骨髄穿刺液の視算法による巨核球数の基準値は50~150/μLとされます。 1)松永卓也:巨核球からの血小板産生と造血微小環境.血栓止血誌.23(6).pp559-563.2012 2)小宮正文:骨髄細胞アトラス.pp26-30.南江堂.1983 |
【助言2】 | 形態異常には、微小巨核球、低分葉核、過分葉核、核の形成不全などがあげられ、特にMDSによくみられます。 1)微小巨核球は前骨髄球より小さいものを対象に、巨核球25個中3個以上を認めればMDS診断基準の10%以上とみなされます。 2)低分葉核(単円形核)巨核球は中型の大きさで、5q-の核型異常を認めることが多いようです。 3)過分葉核巨核球はDNA合成障害や分裂障害などで出現し、巨赤芽球性貧血でもみられます。 |
【Q2】 | 赤血球の染色性で高色素性と多染性と記載されますが同じものとして捉えるのでしょうか。 |
【助言1】 | 高色素性(hyperchromasia)は、MG染色で赤血球の厚さが増しHbの色調が強調され全体がピンク色に染まったものとされます。すなわちHb含量の低下していない赤血球や球状化し厚みが顕著に増加した赤血球(MCHC上昇)のことになりますが、正常赤血球みられる中央淡明部を欠いて全体が赤色調に濃染してみえます。一方、多染性(polychromasia)は、MG染色でHbの色調に加えて青~灰色が混ざったもので、青色調は主としてRNA(リボソーム)の存在によるもので網赤血球の特徴の1つとされます。双方は異なる所見として捉えます。 |
【助言2】 | 実際の症例として、大型赤血球を中心に高色素性を呈した自己免疫性溶血性貧血(A)(MCV100fL・MCHC34.0g/dL)と小型赤血球を中心に高色素性を呈した遺伝性球状赤血球(B)(MCV76.3fL・MCHC:37.0g/dL )、また貧血の回復期に多染性の大型赤血球(網赤血球)が増加した例を提示します。 |
2024年3月号の問題. 下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。
【Q1】 | 結核で単球が増加することを経験しますがその動態を教えてくださいますか。 |
【Q2】 | MDSの末梢血液標本で好酸球の偽ペルゲル核異常を判定するコツはありますか。 |
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
「細胞同定」については、骨髄像の同定に挑戦します。紛らわしい細胞や鑑別を要する細胞を提示しましたので試みてください。
「ワンポイントアドバイス」は、骨髄における巨核球の数値基準と末梢血における高色素性および多染性赤血球の捉え方について解説します。
問題1
BGM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
問題1
問題
骨髄像の細胞同定を行ってください。
【解説】
A-1. 直径15μm大、核は楕円形状で粗荒、細胞質は淡橙色で二次顆粒とみなし後骨髄球にしました。
A-2. 直径15μm大、核は馬蹄形で細胞質は橙紅色の太目の顆粒を認めることから幼若好酸球にしました。
A-3. 直径12µm大、N/C比は高くクロマチンは粗剛、細胞質は淡青色であることからリンパ球にしました。
A-4. 直径15μm大、核の最小幅が1μmを越えないこと(私見)から後骨髄球にしました。
A-5. 直径13µm大、核は桿状で湾曲していることから桿状核球にしました。
A-6. 周囲の細胞に押されて縮小傾向の後骨髄球にしました。
A-7. 直径13μm大、核の湾曲から桿状核球にしました。
A-8. 直径22µm大、核は偏在しクロマチンは粗網状、細胞質は豊富で好塩基性を有し二次顆粒とみなし前骨髄球にしました。
B-1. 直径13μm大、核は分葉し細胞質は橙紅色の顆粒を認め成熟好酸球にしました。
B-2. 直径28µm大、核は偏在し不整でクロマチンは網状、細胞質は好塩基性で突起を有し微細顆粒を認めることから前単球と思われます。
B-3. 直径18μm大、核は切れ込みクロマチンは繊細、細胞質は灰青色で空胞を有し微細顆粒を認めることから単球にしました。
B-4. 直径15μm大、核は円形で中心性、クロマチンは凝集塊状、細胞質は青紫色のことから多染性赤芽球にしました。
B-5. 細胞質は不明瞭で大きさは不明、核は類円形でクロマチンは細網状、細胞質には異物の貪食がみられることからマクロファージ(大食細胞)と思われます。
C-1. 直径20μm大、核はほぼ円形で偏在しクロマチンは繊細顆粒状、細胞質は好塩基性で突起を有していることから前赤芽球にしました。
C-2. 直径16μm大、核は円形で偏在しクロマチンは粗荒、細胞質は橙黄色で二次顆粒とみなし骨髄球にしました。
C-3. 直径15μm大、核は類円形で偏在しクロマチンは虎斑状、細胞質は好塩基性で空胞を有し核周明庭を認めることから形質細胞と思われます。
C-4. 直径16μm大、核は不整でクロマチンは繊細、細胞質は微細顆粒を認めることから単球にしました。
C-5.6. 12μm大、二個は同じ細胞と思われ核は円形でクロマチンは凝集塊状、細胞質は青紫色であることから多染性赤芽球にしました。
C-7. 直径12µm大で桿状核球にしました。
D-1. 直径20μm大、N/C比は高くクロマチンは繊細網状で核小体を認め、細胞質は軽度の好塩基性で骨髄芽球と思われます。
D-2. 直径14µm大、核は類円形でクロマチンは粗剛、細胞質には僅かに顆粒を認めリンパ球にしました。
D-3. 直径23μm大の大型、核は円形で中心性、クロマチンは繊細顆粒状、細胞質は好塩基性が強度で突起を有することから前赤芽球にしました。
D-4. 直径8µm大、核は円形で濃縮傾向、細胞質は橙紅色のことから正染性赤芽球にしました。
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