風薫る皐月(さつき)の季節を迎えるとたくさんの人々が自然に触れる姿を目にします。ある人は近郊の山に出かけ深緑の香りを満喫し、またある人はアウトドアを楽しんでいます。登山愛好家に至っては “日本百名山”征服の意気込みが伝わってきそうです。私は裏山から聴こえる小鳥のさえずりに耳を傾け、パソコンの手を休めコーヒーを嗜(たしな)む至福の時でもあります。
“そういえば、日本で最初に誕生した山はどこだろう ? ” という疑問をもとに調べてみますと、兵庫県の淡路島にある標高448mの「先山(せんざん)」に辿りつきました。先山は標高1,000m未満ですので低山に分類され日本百低山の1つです。先山は淡路島の瀬戸内海東部に位置し、日本で最初に生まれた島といわれ“国生みの島”ともよばれ、古書「国生み神話」(901年頃)のなかでは、イザナギノミコトとイザナミノミコトの二柱の神(二神)が最初に誕生させた山ということから「先山」(せんざん)と名付けられたそうです。先山の頂上には、淡路四国八十八ケ所第一番の札所になっている千光寺や天の岩戸に姿を隠した天照大神を祀る岩戸神社などが「国生み神話」ゆかりの地として認定されています。千光寺の境内には、国の重要文化財に指定されている梵鐘(1283年の銘あり)のほか、運慶作といわれる仁王像、本堂や三重塔、鐘楼堂などが建てられ、千光寺の縁起にちなんだ狛猪(こまいのしし)もみることができます。1918年(大正7年)から1938年(昭和13年)にかけて改修・中興がなされています。先山は“淡路富士”の愛称で親しまれ、11月下旬からの紅葉シーズンは登山者で賑わうそうです。
偶然ですが、わが住む福岡県糸島にも“糸島富士” と呼ばれる標高365mの低山「可也山(かやさん)」がそびえ、花崗閃緑岩からなる独立峰で万葉集(760年頃)にも詠まれています。糸島は中国史書「魏志倭人伝」(280年頃)のなかに“倭(日の本)” 「伊都国(いとこく)」として文化が栄え、「可也山」は大陸から入港する際の目印となっていたといわれています。先山は遠方ゆえ、まず身近の「可也山」を探索しながら説話にもふれてみたいものです。
(淡路島観光協会資料を参考に作成したもの)
日本の最初に生まれた“淡路富士” こと
「先山」(標高448m)の全景
(淡路島観光協会資料から)
古くは大陸から入港の際の目印となった
“糸島富士” こと「可也山」(標高365m)の全景
(撮影:2022.5)
2023年5月号の問題. 下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。
【疑問】 | ペルゲル様核異常の好中球はotherとして報告するというお話でしたが、その場合、化学療法などの基準とされる好中球数にはこれらの形態異常の好中球は含めないのでしょうか、それとも合算してもよいのでしょうか。また、システム的に絶対数は再計算されて報告されているのでしょうか。 |
2023年5月号の解説.
【提言1】 | Pelger-Huet (ペルゲル・ヒュエット:PH)核異常好中球の形態は低分葉核の団子状が多く、分葉しても2分葉止まりで鼻めがね状ともいわれ、クロマチンの強度な結節が特徴です。PH核異常好中球は、先天性(常染色体優性遺伝)や後天性(MDS、化学療法後など)にみられますが(図)、細胞質は二次顆粒を有し、経験的に酵素染色が陽性を示すことから核のみの異常と考えます。核の形態異常は正常好中球として分類するには不適と思われ、「other」欄に “%” を、「comment」欄に“低分葉核(ペルゲル様核)好中球”などと記載することを提案したわけです。 次にPH核異常好中球を絶対数評価の対象にすべきかについては、二次顆粒を有するものやPO染色陽性ついては正常好中球の範疇として、低(脱)顆粒やペルオキシダーゼ染色陰性については細胞質の機能異常とみなし範疇としないという考えでおります(図)。これらについては規定が不明確であり、また治療中の好中球減少は感染症対策が急務であるため、臨床の先生と十分な話し合いのもと行ってください。 |
【提言2】 | 自動血球計数装置ではスキャッタープロットのあるエリアに出現することや単球の一角に含まれるなどの情報はありますが、絶対数表記については今のところ不可能かと思われます。フラッグメッセージを含めて異常情報がある場合は塗抹標本で確認することが大事かと思われます。 |
A. 先天性異常:核膜上の蛋白質ラミンBレセプター(LBL)遺伝子異常 B. 骨髄異形成症候群:DNAの成熟・分裂障害 によるもの ? C. 抗腫瘍剤投与後 D. 骨髄異形成症候群:低顆粒、PO陰性の好中球(矢印) |
2023年6月号の問題. 下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。
【疑問】 | 腫瘍性芽球とペルオキシダーゼ(PO)染色の関係や一つの芽球につきどのくらい染まっていれば陽性として判定するのでしょうか。またMDSの際に出現するPO陰性好中球は何個中何個あれば異常とするのでしょうか。 現在、市販のDAB染色キットを使用していますが注意することは何かありますか。 |
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
4月より血液室に配属された皆さまもいらっしゃいますので、今回は末梢血液像に挑戦してみたいと思います。末梢血液像は形態診断の第一歩でもあり見逃しは決して許されませんので同定を行ってみてください。
「ワンポイントアドバイス」は、ペルゲル核異常の捉え方と報告、また絶対数評価について私見を述べさせていただきました。
問題1
問題 1
末梢血液像の細胞同定を行ってください。
末梢血液像です。細胞の大きさは回りの赤血球の大きさ(7~8µm)を参考にしてください。
【正答】
A.異常リンパ球 B.単球 C-1.桿状核球、C-2.分葉核球 D.リンパ球 E-1・E-2.分葉核球 F-1.異型リンパ球、F-2.分葉核球 G-1.桿状核球、G-2.異型リンパ球 H.単球 I-1・I-2.分葉核球
【解説】
A. 直径12μm大、小型でクロマチンの粗剛からリンパ球として捉え、核形不整から異常リンパ球を考え、単一様式であったことから異常リンパ球としました。本例はATLの症例ですが、不明の場合は抗HTLV-Ⅰ抗体陽性を確認します。
B. 直径21µm大、核は中心性で不整がみられクロマチンは繊細、豊富な細胞質は軽度の好塩基性で微細顆粒が充満していることから単球でよいかと思われます。
C-1.直径13μm大、湾曲した桿状様の核はクロマチンの結節を認め、細胞質は橙紅色で顆粒は二次顆粒とみなし桿状核球としましたが、核中央部をくびれとして捉えると分葉核球も考慮します。2.直径13µm大、核分葉がみられ、上部には核糸(矢印)を認めることから分葉核球でよいかと思います。
D. 直径15μm大、核は類円形でクロマチンは粗剛、細胞質は淡青色で散在性の顆粒を有していることから顆粒リンパ球と思われます。
E. 直径13μm大、双方とも核糸は認めないものの、核のくびれが顕著でクロマチンは結節状のことから分葉核球と思われます。細胞質の顆粒が太いことから二次顆粒よりも混在する一次顆粒のようにもみえます。
F-1.直径22µm大、N/C比は低く、核形不整がみられクロマチンは粗剛、細胞質の好塩基性が強度と多彩様式であったことから異型リンパ球にしました。2.直径12µm大、好中球の形態から核中央部にはくびれがみられることから分葉核球と思われます。
G-1.直径12µm大、湾曲した桿状様の核はクロマチンの結節を認め、細胞質は橙紅色で顆粒は細く二次顆粒とみなし桿状核球としました。2.直径16μm大、N/C比は低く、核は類円形でクロマチンは粗剛、細胞質は強度の好塩基性と多彩様式であったことから異型リンパ球にしました。
H. 直径21µm大、核は馬蹄形でクロマチンは繊細、細胞質には微細顆粒が充満し単球と思われます。
I. 直径13μm大、双方とも分葉核球ですが過分葉核球かどうかになります。一般に過分葉は6分葉以上を対象にしますが、5分葉以上が3%以上存在すれば過分葉とする考えもあるようで、本例は過分葉まではいかないようでしたので分葉核球としました。
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