第144回「マンスリー形態マガジン」2023年4月号

今月のコラム:『金字塔を打ち立てた野球小僧たち』

 「万歳 ! 侍ジャパン」 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が3月21日(日本時間22日)米国で決勝戦が行われ、日本が前回覇者の米国を3-2で破り、2009年以来14年ぶり3度目の優勝を果たしました。日本は第一ラウンドから7戦全勝で世界一を奪還し、大会の最優秀選手賞(MVP)には投打の「二刀流」こと大谷翔平選手(エンゼルス)が選出されました。野球ファンなら興奮さめやらぬ日が続いていることでしょう。

 侍ジャパンの指揮官は栗山英樹氏(元.日本ハムファイターズ監督)、温厚で熱い言葉と選手を信じる采配などが功を奏したように思われます。そして日ハム時代の大谷選手の二刀流の生みの親でもあります。大会準々決勝イタリア戦で意表をつくセーフテイーバントを成功させた大谷選手を表して“野球小僧になりきった時、彼のすばらしさが出る”と言われたそうです。

その大谷選手はメジャーリーグでも“投げて打つ”という前代未聞の漫画の世界を歩み続けていますが、投手として登板した決勝戦の九回表二死、最後の打者となったのがエンゼルスの同僚マイク・トラウト選手(メジャーリーグ三度のMVP受賞)でした。米国のキャプテンでもある彼とのマッチアップに球場は騒然、得意の高速スライダーで見事三振に打ち取り、まるで筋書のあるドラマのエピローグのようでした。

 そして、影のヒーローとも言われたボストン・レッドソックス(今年入団)の吉田正尚(まさたか)選手の活躍も目を見張るものでした。173cmの小柄ながら、選球眼、パワー、安打製造機ともいわれ、打率0.409、本塁打2、打点13の好成績で、大谷選手とともにベストナインに選ばれました。また、初の日系人として選出されたラーズ・ヌートバー選手(セントルイス・カージナルス)は下馬評を覆すリードオフマンに相応しい活躍でペッパーミルパフオーマンス(味方を鼓舞するパフォーマンス)は社会現象にもなりました。さらに最終戦に登板した今永(先発)、戸郷、高橋宏、伊藤、大勢の若手投手に加えたダルビッシュ有、大谷投手の継投はまさに“7人の侍” を物語る圧巻のパフオーマンスでした。

 米国メデイアは 侍ジャパンの“結束力の強さ” を評価し、日本選手のダッグアウトはゴミ一つないクリーンベンチと称し “地球上で最も敬意に満ちた文化だ”とも絶賛していました。一方、日本メデイアは世界制覇の快挙を称賛し各紙の社説にも取り上げられるほどで、子供たちの野球熱が高まり将来の侍が誕生することを期待したいものです。

 勇気と感動を与えたくれたことに感謝しながら、これから始まるレギュラーシーズンに侍ジャパンの雄姿を追ってみたいと思います。

2023年3月号の問題.  下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【疑問】 末梢血の大リンパ球と単球そして異型リンパ球との見分け方に迷っています。
また、小リンパ球多染性赤芽球との鑑別もうまくいきませんのでアドバイスをお願いします。

2023年3月号の解説.  

【助言1 「異型リンパ球」の名称は、最近では “反応性リンパ球”ともよばれていますが、まだ異型リンパ球が一般的のようです。
まず大リンパ球、単球、異型リンパ球の鑑別については、私見を交え表1.と画像を提示しましたのでご参照下さい。提示画像は強制乾燥標本のMG染色です。共通所見として、細胞が大きく、類円形核、N/C比が低いことです。
[大リンパ球] 核は軽度の不整、クロマチンは粗剛、細胞質は淡青色、顆粒はあれば単球より大きめです。
[単球]核は顕著な不整、クロマチンは繊細、細胞質は豊富で灰青色、微細顆粒や空胞を有し特徴の多い細胞です。
[異型リンパ球] リンパ球の形態を基本にしますが、細胞質の強度の好塩基性が特徴です。好塩基性については、画像のように放射状や一面に染まることがあります。
 
  表1. 大リンパ球/単球/異型リンパ球の鑑別
細胞の大きさ クロマチン 細胞質色 顆粒の大きさ 顆粒色
大リンパ球 7.5~16.8μm 粗大粗剛
凝集塊
淡青色 0.3~0.6μm アズール顆粒
(紫赤色)
単球 13.2~21.2μm 繊細 灰青色 微細 アズール好性
異型リンパ球 16μm以上
(原則)
粗剛
(粗荒)
濃青色 0.3~0.6μm
(時々)
アズール好性
 
      (小宮正文:図説.血球のみかた.南山堂.1988.をもとに整理したもの)

【助言2 次に、小リンパ球と多染性赤芽球の鑑別について述べます。通常、末梢血に赤芽球が出現することはありませんが、何らかの理由で出現する場合があり“有核赤血球”ともよばれます。多くは正染性赤芽球ですが、稀に多染性や好塩基性赤芽球が出現します。出現の機序として、骨髄の類洞(関所たる部位)が異常組織の増殖によって破壊されたり、髄外造血などが考えられます。ご質問の小リンパ球と類似する多染性赤芽球の鑑別は私見を交え表2.に示しますが、核のクロマチン、細胞質の色調の違いが最大のポイントです。
画像は末梢血(A.B)と骨髄(C.D)を提示し、A.Cが小リンパ球、B.Dが多染性赤芽球です。D.は細胞質が青色の色調から好塩基性赤芽球にみえますが、紫色の混在もうかがえることから多染性として捉え、何よりもクロマチンの凝集塊(強度)は多染性赤芽球の様相と思われます。
 
  表2. 小リンパ球と多染性赤芽球の鑑別
直径 角の位置 核の形状 クロマチン 細胞質色 顆粒
小リンパ球 7~9μm 中心~偏在 ほぼ円形 凝集塊 青色
(好塩基性)
ごくまれ
多染性赤芽球 9~12μm 中心性 円形 凝集塊
(強度)
青紫~紫紅色 なし
 
      (小宮正文:図説.血球のみかた.南山堂.1988.をもとに整理したもの)



2023年4月号の問題.  下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【疑問】 末梢血の異型リンパ球のカウント数が技師間で異なり困っています。基準を一定にするための方法があれば教えてください。
併せて末梢血で異常リンパ球をみつけるポイントを教教えてください。

形態マガジン号キャプテン  阿南  建一

MAPSS-DX-202304-21

著作権について

今回のねらい

 4月号の「細胞同定」は骨髄における紛らわしい細胞の鑑別に挑戦します。顆粒球系と非造血細胞を提示しましたので判定してみてください。
「ワンポイントアドバイス」は、異型リンパ球(反応性リンパ球)と異常リンパ球についてのお問い合わせに挑戦します。

問題

問題1

1-1<設問1> 骨髄の細胞同定を行ってください。

1-2<設問2> 骨髄の細胞同定を行ってください。

1-3<設問3> 骨髄の細胞同定を行ってください。

1-4<設問4> 骨髄の細胞同定を行ってください。

解答・解説

問題 1

骨髄の細胞同定を行ってください。 

非腫瘍性の骨髄で鑑別を要する細胞を提示しました。四つの画像はすべて高倍率にて撮影したものですが、B.Dは拡大しているため実際より細胞が大きくなってみえています。そのため提示した細胞のサイズは赤血球の大きさと比較して判定します。

【正答】

A-1.分葉核球 2.骨髄球 3.前骨髄球 4.桿状核球 5.前単球
B-1.幼若好塩基球 2.多染性赤芽球
C-1.分葉核球 2.単球 3.リンパ球 4.幼若好塩基球 5.前赤芽球
D-1.細網細胞 2.正染性赤芽球


【解説】

A-1.直径13μm大、分葉核球と思われます。
A-2.直径14μm大、骨髄球と思われますが隣接する細胞に押されて小さくみえます。
A-3.直径23μm大、核は偏在しクロマチンは顆粒状、軽度好塩基性の細胞質辺縁の粗大は一次顆粒とみなし前骨髄球にしました。
A-4.直径13μm大、核は陥没(1μm以上)しクロマチンは結節状、顆粒は減少気味の桿状核球と思われます。
A-5.直径23μm大、類円形核のクロマチンは網状で核小体がみられ、細胞質には微細顆粒を有することから前単球と思われます。

B-1. 直径14μm大、核は偏在しクロマチンは無構造、細胞質には黒褐色の粗大顆粒を認めることから幼若好塩基球(前骨髄球)と思われます。
B-2.直径8μm大、核は円形でクロマチンは凝集塊がみられ、細胞質は青紫色(多染性の色調)から多染性赤芽球と思われ、一部に不染部がみられます。

C-1.直径12µm大、核はくびれてクロマチンは強度の結節状から分葉核球と思われます。
C-2.直径17μm大、核は偏在し不整がみられクロマチンは繊細で灰青色の細胞質には微細顆粒を認めることから単球と思われます。
C-3.直径11μm大、N/C比は高くクロマチンは粗剛より小リンパ球と思われます。
C-4.直径18µm大、核は偏在し不整は軽度でクロマチンはやや粗剛、細胞質には多数の空胞がみられます。空胞は染色の過程で溶出したことが考えられ幼若好塩基球と思われます。
C-5.直径24μm大、核はほぼ円形でクロマチンは繊細顆粒状、細胞質は強度な好塩基性で1時方向には舌状突起がみられることから前赤芽球と思われます。

D-1.直径29μm大、類円形核はクロマチンが粗網状で核小体を認め、細胞質は豊富で顆粒が散在性にみられます。細胞質辺縁が不規則性のことから細網細胞と思われます。
D-2.直径10μm大、核はほぼ円形でクロマチンは濃縮状、細胞質は紫紅色(正染性の色調)から正染性赤芽球と思われます。

これから先のページでは、医療関係者の方々を対象に医療機器・体外診断薬等の製品に関する情報を提供しております。当社製品を適正に使用していただくことを目的としており、一部の情報では専門的な用語を使用しております。
一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。

医療関係者の方は、次のページへお進みください。
(お手数ですが、「進む」ボタンのクリックをお願いします)