第143回「マンスリー形態マガジン」2023年3月号

被災地への想い

 東日本大震災(2011.3.11)から12年を迎え、災害に見舞われた皆様には改めてお悔やみ申し上げます。報道によりますと、被災によって仮設住宅にお住まいの方が約420戸、原発事故による福島を中心に避難されている方が30,884人といわれます。そして震災前に比べ10年間で約14万人の方が地元を離れているそうです。帰還を希望されている方におかれても、1日も早い復興を願い自治体まかせでなく政府の使命感をもった行動力を切望したいものです。 

 私ごとですが、震災時の7月にお仕事で仙台にお邪魔させていただきました。仙台空港は仮設の状態で、大変な環境のなか東北の皆様は快く迎えて下さり、あの時の皆様の熱意は今でも決して忘れることができません。今年も14時46分、我が街のサイレンの吹鳴に合わせて黙とうをさせていただきました。さらに新型コロナ感染拡大も重なり、未曾有の災禍のなか多忙な検査業務の日々かと存じますが、皆様どうかご健勝であられますことを心からお祈り申し上げます。

お知らせ

 平素よりマンスリーマガジンをお読みいただきましてありがとうございます。

 本年2月号より新しい企画として「ワンポイントアドバイス」をスタートさせましたが、ご愛読の皆様からこれまでの「コラム」も引き続き掲載してほしいとのご要望をいただきました。大変嬉しいお言葉であり、浅学で文才のない私ですが、可能な限り再度挑戦してみたいと思っております。「ワンポイントアドバイス」「コラム」、さらに従来の「細胞同定」の三大看板で挑戦いたしますのでどうぞよろしくお願いいたします。
 早速、3月号は大河ドラマを取り上げてみましたので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

今月のコラム:『家康は泰然自若な天下人』

 三河国(現.愛知県岡崎市)を舞台としたNHK大河ドラマ「どうする家康」がオンエアされました。史書によりますと、松平広忠の子として幼名は竹千代、元服(1555)後は元信、元康、家康と改名し、1566年には朝廷から従五位下三河守に叙任され徳川に改姓し“徳川家康” が誕生します。現在ドラマの序盤ではありますが、戦(いくさ)の作戦がことごとく裏目に出たことで遠のく家臣もいるありさま、家康のフアンの一人として心配が尽きない日々です。しかし、戦国では幾多の修羅場を乗り越えるのは世の常、あの関ケ原の戦いで天下を掌握し、征夷大将軍の座に昇りつめた天下人家康が誕生するまでの生きざまを楽しみたいものです。

 さて、 「本能寺の変」(1582)で織田信長死後、信長の後継者となった羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)との対立が始まりますが、その象徴たる戦は小牧・長久手の戦い(1584)といわれます。諸説ありますが、徳川軍1万6千人、羽柴軍10万人と圧倒的不利のなか、半年以上続いた合戦を徳川軍は勝利します。その勝因は服部半蔵伊賀忍者)の情報網を生かした頭脳作戦であり、羽柴軍の敗因は秀吉の片腕であった軍師黒田官兵衛が不在であったことだそうです。家康の勝利は決定的なものとはならず政治的和睦をすることになり、秀吉の覇業が一歩進むことになります。そして秀吉は1586年朝廷より関白・大政大臣に任ぜられ豊臣姓を賜り天下人になります。秀吉の死後(1598)は秀吉の側近石田三成との対立が深まり、1600年10月家康(東軍)と三成(西軍)の天下分け目の合戦「関ケ原の戦い」(現.岐阜県不破郡)が始まります。ここでも西軍が優位とされましたが、早朝より深い霧に包まれていたことが味方し、慎重に出陣を探っていた西軍に対し、先手を打ち攻める策をとった東軍が6時間ほどで勝利します。

 幾多の戦略術や自然界をも見方にした家康公は、常に物事に動じない泰然自若(たいぜんじじゃく)な天下人として、1603年2月朝廷より征夷大将軍に任命され江戸幕府を開き、260年におよぶ徳川家の歴史が始まります。若い頃は短気な面もあったそうですが、健康志向が強く、倹約家、またリーダーシップの持ち主だったともいわれます。身の丈159cmの家康は74歳の頃でも戦場では20kgの甲冑を着て戦った頑丈な武将でもあったそうですが、74年にわたる生涯に幕を閉じ、亡骸は久能山に葬られ、その後日光東照宮に改葬されたそうです。終稿にあたり家康公の名句、機が熟するまで辛抱強く待とう、という“鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥(ほととぎす)”をそっとつぶやいてみました。

2023年2月号の問題.  下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【疑問】 通常、血液像の目視を100カウントで実施していますが、200カウントで実施した方が良い場合の条件を教えていただきたいです。
検体数によりメイ・ギムザ染色を染色用バットや染色瓶で使い分けていますが注注意点がありますか。また、メイグリュンワルド染色液はどれくらいの頻度で交換した方が良いでしょうか。

2023年2月号の解説.
  
【助言1 血液像の百分率は慣用的な分類であり、計数器による血算値、スキャッタープロット、フラッグメッセージの情報は不可欠です。担当医からの指示がなく、異常細胞の出現や計数器に異常情報がない場合は100カウント、異常情報があり時系列に変化を認める場合などは200カウントするのが一般的かと思われます。
【助言2
染色法には上乗せ法(染色用バット)と浸漬法(染色瓶)があります(図)。上乗せ法(A)は染色液の混和が困難であるため染め上がりにムラが生じ、色素やゴミの沈着がみられることがあります。浸漬法(B)はそのような心配は少ないようですが染色毎に染色液の混和は必要です。色素やゴミの沈着は鏡検において支障をきたすため検体数に関係なく浸漬法を推奨します。メイグリュンワルドとギムザ染色用の染色瓶を準備します。
メイグリュンワルド染色液*(500mL)にはメタノール成分が含まれますので揮発には十分気をつけます。浸漬法で行う場合は、検体数によって50mL用や500mL用の染色瓶を使い分け、染色中にも常に蓋をするように心がけます。染色後、蓋で密閉しさらにサランラップで密封すれば室温保存で約1週間は使用できそうです。しかし、使用時の揮発は避けられませんので逐次補充します。尚、ギムザ希釈液は毎日新調しますが、ギムザ原液1~1.5滴:pH6.4リン酸緩衝液1mLを目安にします。
  *0.3%エオジン酸メチレン青メタノール
  図. 染色法
 
  • A.上乗せ法


  • B.浸漬法



2023年3月号の問題.  下記のご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【疑問】 末梢血の大リンパ球と単球そして異型リンパ球との見分け方に迷っています。
また、小リンパ球と多染性赤芽球との鑑別もうまくいきませんのでアドバイスをお願いします。

形態マガジン号キャプテン  阿南  建一

MAPSS-DX-202303-27

著作権について

今回のねらい

 3月号の「細胞同定」は骨髄で鑑別を要する細胞を提示し、「ワンポイントアドバイス」はリンパ球、単球、異型リンパ球(反応性リンパ球)の鑑別について提示し、それぞれ4月号で解説してみたいと思います。

問題

問題1

1-1骨髄の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-2骨髄の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-3骨髄の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-4骨髄の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

解答・解説

問題 1

骨髄の細胞同定を行ってください。 

非腫瘍性の骨髄で鑑別を要する細胞を提示しました。

【正答】

A-1.前骨髄球、2.後骨髄球
B-1.分葉核球、2.正染性赤芽球
C-1.前単球、2.細網細胞
D-1.桿状核球、2.単球

【解説】

A-1.直径18μm大、核は偏在し軽度の不整がみられクロマチンは粗網状で核小体を認め、好塩基性の細胞質にはやや大きめの顆粒と小さな空胞を認めます。細胞質には僅かながらゴルジ体(1時方向)を認め、顆粒 は一次顆粒とみなし前骨髄球としました。骨髄芽球と前単球にも類似していますが、前者はクロマチンが繊細で通常は顆粒を認めないこと、後者はクロマチンが網状で微細顆粒を有することがポイントです。

A-2.直径17µm大、核は陥没し核の短径が長径の1/3以上の長さ(小宮法.1988)から後骨髄球と思われます。ただ細胞質の顆粒は橙紅色に染まり好酸球に類似していますが、顆粒が小さいことから否定されます。また本顆粒の色調は顆粒の輪郭が不鮮明であることから染色性の問題も考えられますが時々経験します。

B-1.直径13μm大、4~5分葉の分葉核好中球と思われます。

B-2.直径7µm大、核は円形でクロマチンは濃縮状、細胞質の色調は紫紅色のことから正染性赤芽球と思われます。B.ACP染色です。Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)の症例です。

C-1.直径25μm大、核は偏在し核形不整がみられクロマチンは網状で核小体を認め、好塩基性の細胞質には粗大顆粒を認めます。顆粒を除外すると前単球に類似しており、粗大顆粒は単球にはふさわしくない二次的変化によるものとして前単球としました。

C-2.直径21μm大、核は類円形、クロマチンは粗網状で核小体を有し、好塩基性の細胞質辺縁は不鮮明で顆粒を認めます。核所見および細胞質の不鮮明さから非造血細胞の細網細胞にしました。

D-1.直径15μm大、核は陥没し核の短径が長径の1/3未満でクロマチンは結節状、細胞質は橙紅色で空胞を有し、小さな顆粒は二次顆粒とみなし桿状核球としました。空胞については1つの好中球に数個以上存在するものが増加すれば敗血症の重症度を反映するともいわれますが、本例の空胞は二個止まりで増加していませんでした。

D-2.直径18μm大、周囲の赤血球に押されて委縮気味です。核は分葉傾向でクロマチンは繊細で灰青色の細胞質には微細顆粒を認めることから単球としました。

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