皆様、昨年は「マンスリー形態マガジン」をご愛顧下さりありがとうございました。 今年も何とぞよろしくお願いいたします。 皆様はお正月をいかがお過ごしになられたでしょうか。私の正月の楽しみといえば、年に一度届けられる知人や友人からの賀状に目を通し、添えられた近況報告に一喜一憂しながら変わらない一年であることを願っておりました。 今年こそ、未曾有の災禍から解放されることを願い、皆様にとりましても実りある一年でありますようお祈り申し上げます。 |
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
前回から血液細胞に関連する細胞化学染色の役割を認識するために提示しております。
血液診断には不可欠なマーカーでもあり、判定などに慣れるために今回も挑戦してみてください。
問題1
問題2
問題 1
骨髄の細胞化学染色から染色名と得られる情報を述べてください。
【解説】
A.PO染色です(ベンチジン法)。
4個のPO陽性像(黄褐色)は好中球です。11時方向はPO陰性の好中球で異常所見です。2時方向はPO陰性のリンパ球です。本染色はベンチジン法ですが、キット法(市販)のDAB法が一般的で陽性の場合は黒褐色に染まります。 |
B.PAS染色です(自家製法)。
【左】 | 2個の成熟赤芽球で、上段はびまん性陽性を呈し下段は陰性です。正常の赤芽球は一部を除きPAS陰性ですが、腫瘍性の場合は陽性に染まりやすく、成熟型はこのようにびまん性に染まる傾向にあります。 |
【右】 | PAS陽性の微小巨核球です。巨核球におけるアズール好性の顆粒は紫紅色に染まります。微小巨核球は極端に小型のためMG染色で見逃した場合はPAS染色が有効になります。 |
C.鉄染色です(キット法)。
中央左の細胞は核が2時方向(矢印)にあり、細胞質は鉄染色で濃青色に染まっています。細胞質にヘモジデリン鉄顆粒を貪食したマクロファージの存在が考えられます。本細胞の鉄顆粒の貪食は赤芽球に鉄の供給をするともいわれるため、骨髄内の鉄動態を知る上で重要なことと思われます。 |
D.鉄染色です(キット法)。
中央付近に位置する複数の細胞は成熟赤芽球でいずれも陰性のようです。正常骨髄の成熟赤芽球では細胞質に1~3個程度の鉄顆粒を有し、それは全体の15~60%の割合にみられます。 本例は陽性顆粒をほとんど認めない鉄欠乏性貧血の症例で不可染鉄の状態が考えられ、マクロファージにも鉄顆粒の貪食をほとんど認めませんでした。鉄染色の手順では反応液の①2%フエロシアン化カリウム、②2%HCL、③1%サフラニンの混和順を間違えないように行います。 |
問題 2
骨髄の細胞化学染色から染色名と得られる情報を述べてください。
【解説】
A.PO染色です(ベンチジン法)。急性前骨髄球性白血病(APL:M3)の症例です。
細胞集団はPO強陽性で細胞質一面にベタっとした染まりがみられます。このような陽性態度はAPL細胞に特徴的です。もともと正常の前骨髄球はPO強陽性を呈しますが、腫瘍性になると細胞質に隙間なく強く染まる傾向にあります。 |
B.PO染色です(ベンチジン法)。急性骨髄性白血病(AML)の症例です。
【左】 | 二つの細胞は重なっているために塗抹上のアーチファクトが考えられます。双方とも細胞質にPO陽性の箇所が認められ、上段は弱めで下段はやや強い染色性です。また、下段は核の上にも一部陽性がみられます。AMLの症例ですので下段はPO陽性の骨髄芽球、上段は弱陽性の単球と思われます。 |
【右】 | 形状から上段が骨髄芽球、下段が幼若顆粒球です。PO染色は一見双方とも陽性にみえますが、注意深く観察すると上段の陽性部分は下部の一カ所に限定されており(〇印)、幼若顆粒球の陽性の一部が被ったようにもみられることから、骨髄芽球のPO染色は陽性ではなく陰性と判定した方がよさそうです。 |
C.鉄染色です。鉄芽球性貧血の症例です。
赤血球の細胞質に複数個の球菌様の小体がみられることから、鉄染色に陽性のパッペンハイマー(PH)小体と思われます(矢印)。これは主にヘモジデリン鉄が染まったもので、MG染色では紫青色に染まり、鉄染色では濃青色に染まります。本例はヘム合成低下による鉄利用障害とされ、赤芽球のミトコンドリア内に沈着した環状鉄芽球の存在も診断に有効となります。 |
D.メチル紫染色です。不安定ヘモグロビン症の症例です。
本症の診断に必要な赤血球内のハインツ小体を証明するために超生体染色を行ったもので、メチル紫に点状陽性を呈したハインツ小体を7個認めました(矢印)。ハインツ小体は、大量の酸化剤によりヘモグロビンが変性している時か、赤血球の酸化防御作用の低下また酸化を受けやすい異常ヘモグロビンが存在する時に形成するといわれています。 |
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