第140回「マンスリー形態マガジン」2022年12月号

『山歩きからはじまる地域おこし、あるご夫妻の歩み』

 2022年最終号は、“山歩き” に魅せられ地域に優しい活動をされている林田正道さん・勝子さん(福岡県在住)ご夫妻をご紹介します。林田ご夫妻は、30年ほど前から山歩きをはじめられ。これまでに九州から北海道までのさまざまな山々をお二人で訪れたそうです。山歩きの楽しみとして、はじめに野山の自生地での花との出会いがあり、二つ目は三才からはじめた孫のT君との山歩きです。今では山や自然が大好きな中学生に成長されたそうです。三つ目はボランティア活動を通して出会う皆さんとの交流で、最後は1994年から公開しているホームページ「やませみ&かわせみの山歩き」を更新することで、それは28年間にわたっているそうです。

  林田ご夫妻は、約20年前から、三か所の地域で登山関連のボランティア活動にも参加されていらっしゃいます。2014年に福岡県添田町(そえだまち)の英彦山(ひこさん)山頂にバイオトイレの建設、2016年には福岡県嘉麻(かま)市と朝倉市の境をなす古処連山(こしょれんざん)における日本山岳遺産の登録や避難小屋建設、2018年に江川岳の山名公募と、地理院地図の記載手続きなどを進めてられたそうです。また、ライフワークともいえる活動として、10数年に渡って取り組んできた熊本県八代市(やつしろし)五家荘(ごかのしょう)地域における日本山岳遺産の認定(2011年)が挙げられます。五家荘の山々には、樹齢数百年のブナやフクジュソウ、ヤマシャクヤクやシャクナゲなどが咲き誇る魅力に満ちた山域で、この地域の経済を活性化するための「登山による地域興し」を提案し、地元の皆さんと汗を流されたそうです。そのために登山道の整備は十年以上にわたり、総延長は100kmを超え、登山対象の山は41座までに増えていったそうです。また、「九州百名山」の選考メンバーとして五家荘の山々10座が認定され、2011年九州では初めて「五家荘エリア」が日本山岳遺産に認定されました。

 林田さんご夫妻のこれらの活動は、全国から登山者に来てもらう為の環境づくりとして行っていらっしゃるそうです。検査技師の中には、山歩きを趣味としてされている方も多いそうですが、美しい自然に触れることができるのは、これらの地道な活動のおかげと強く感じています。私たちは自然に感動するだけではなく、これからは感謝の気持ちをもって山々を訪れたいと思います。最後にご夫妻の歩みとして山と渓谷社から出版された登山のガイドブックを次頁に紹介しますのでご一読いただければ幸いです。

 

  • シャクナゲ
    (鹿児島県屋久島宮之浦岳)


  • 氷山
    (山形県蔵王連峰熊野岳)


  • 北海道大雪山系旭岳


  • ヤマシャクヤクの群落
    (熊本県五家荘上福根山)


  • オオヤマレンゲ
    (福岡県英彦山)


  • 紅葉
    (熊本県五家荘小国見岳付近)

林田ご夫妻の歩み:山と渓谷社より
九州百名山地図帳(2011年)、アルペンガイド・九州の山(2013年)、分県登山ガイド 39福岡県の山(2016年)、40佐賀県の山(2017年)

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一

MAPSS-DX-202212-36

著作権について

今回のねらい

今回は、前回から血液細胞に関連する細胞化学染色の役割を認識するために再度呈示させていただきます。
血液診断には不可欠なマーカーでもありますので、しばらくは判定所見などを加味して深堀りしてみたいと思います。

問題

問題1

1-1<設問1> 骨髄のPO染色ですが、染色所見の判定とどのような細胞を考えますか。

  • BM-PO.1000

1-2<設問2> 骨髄のPO染色ですが、染色所見の判定とどのような細胞を考えますか。

  • BM-PO.1000

問題2

2-1骨髄のPAS染色ですが、染色所見の判定とどのような細胞を考えますか。また、関連疾患も述べてください。

  • BM-PAS.1000

2-2骨髄のPAS染色ですが、染色所見の判定とどのような細胞を考えますか。また、関連疾患も述べてください。

  • BM-PAS.1000

2-3骨髄のPAS染色ですが、染色所見の判定とどのような細胞を考えますか。また、関連疾患も述べてください。

  • BM-PAS.1000

2-4骨髄のPAS染色ですが、染色所見の判定とどのような細胞を考えますか。また、関連疾患も述べてください。

  • BM-PAS.1000

解答・解説

問題 1

骨髄のPO染色ですが、染色所見の判定とどのような細胞を考えますか。 

【解説】

骨髄のPO染色です。PO染色は後(核)染色がギムザ染色ですので、見慣れた状況下のもと細胞の判定が可能となります。

A-1.形状から好中球が考えられ、通常PO陽性のところが陰性で異常所見になります。好中球性顆 粒球のPO陽性については、一次顆粒が染まるとされ、好中球の陽性は残存する一次顆粒が染まったものと解釈します。従って本細胞は二次顆粒が占めている可能性が高いようです。
A-2.3.は顆粒が大きく染色態度が強度であることから成熟好酸球が考えられます。
A-4.大型で核形不整や核染の弱さからPO陰性の前単球と思われ、A-5.も同様な形態でPO弱陽性の前単球と思われます。単球系はPO陰性から弱陽性を呈しますが、前単球あたりから染まってくるようです。

B-1.2個とも同系統の細胞で細胞質には所々に小さな空胞がみられることから、染色の過程で顆粒が溶出したPO陰性の好塩基球が考えられるようです。好塩基球はもともとPO陽性ですが、水溶性の性質から染色の過程で陽性顆粒が溶出することで陰性になるようです。
B-2.大型で豊富な細胞質に粗大な顆粒がみられることからPO強陽性の幼若好酸球と思われます。
B-3.4.同系統の細胞で細胞質には鮮明な空胞がみられ、B-1.と同様に染色の過程で顆粒が溶出したPO陰性の幼若な好塩基球と思われるようです。
B-5.N/C比が高く核染が弱い芽球様細胞と思われ、2時方向(矢印)の細胞質には陽性がみられることからPO陽性の骨髄芽球が考えられます。

本例は慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期における症例で、末梢血では芽球の出現や好塩基球の増加がみられますので注意を払うことが必要です。


問題 2

骨髄のPAS染色ですが、染色所見の判定とどのような細胞を考えますか。また、関連疾患も述べてください。 

【解説】

骨髄のPAS染色です。PAS染色は終末反応で鮮赤(紅)色に染まり、その陽性態度をさらに鮮明にするために後(核)染色をヘマトキシリン液で青く染めることが求められます(対比染色)。我々は、ギル・ヘマトキシリン液で染色後に飽和炭酸リチウムを使用することで核の色出しを行っています。
本例はBリンパ芽球性白血病(B-ALL)の症例ですが、リンパ芽球のPAS染色の判定は、細胞質内の塊状、点状、顆粒状(粗大・細)に着目し、塊状、点状、粗大顆粒状は強陽性態度として捉えています。

A-1.大きな塊を呈していることから塊状陽性と判定しました。
A-2.3.小さな粒状を呈していることから点状(dot状)と判定しました。

B-1.点状と11時方向に小さな顆粒状(細顆粒状)の陽性態度がみられますが、点状の方を強陽性所見と捉え点状陽性を優先にしたいところです。
B-2.大きな顆粒状(粗大顆粒状)の陽性態度がみられます。
B-3.点状陽性になります。

C-1.塊状と粗大顆粒状の陽性態度がみられ、双方とも強陽性所見として捉えたいところです。
C-2.点状陽性になります。リンパ芽球の陽性物質はグリコゲンともいわれます。

D-1.11時方向に細顆粒状の陽性態度がみられますが、3時方向の塊状陽性を優先したところです。


【知っておきたい情報】

1)リンパ芽球はN/C比が高いために核の上にも陽性所見がみられますが、多分に核形不整の隙間の細胞質に染まったものがそのように見えるのかも知れません。
2)正常の成熟リンパ球はPAS染色に大半が陰性ですが、リンパ芽球では染まる確立が高くなります。
3)小児のB-ALLの約80%はPAS染色に陽性ですが、なかでも小型のリンパ芽球でPAS染色に強陽性(塊状・点状)、common ALL抗原(CD10)を有する群は、経験的に予後良好のようです。
4)PAS染色はキット法(市販)よりも自家製法の方が染色性の感度が高いようです。

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