第139回「マンスリー形態マガジン」2022年11月号

『太古の森、“こだま” 探して!』

 今回は、遙かなる太古の記憶、自然と一体となる時間、生命が循環する島、「屋久島(やくしま)」を紹介させていただきます。私は、未だ訪れておりませんが知人の手記や資料などから「屋久島」の魅力に迫りたいと思います。

 屋久島は、鹿児島県の大隅半島から南西約60kmの洋上に位置する島で鹿児島県熊毛郡屋久島町に属し、福岡から空路で約1時間、鹿児島からの高速フェリーでは約2時間で訪れることができます。屋久島は島の90%が森林で覆われ、まさに自然に包囲されている山地が広がり、島の中央部には九州最高峰の宮之浦岳(標高1,936m)をはじめ、1,000mから1,900m級の山々が連なっています。このような地形から黒潮が運ぶ温暖湿潤の風がぶつかることで“ひと月のうち35日は雨が降る”(林芙美子「浮雲」より)と言われるほど世界でも屈指の多雨地帯とされており、屋久島の年間降水量は、平地で本州の約2倍の4,500mm、山地では7,500mmを超えているそうです。また、ほぼ亜熱帯に属する地域にありながら、2,000m近い山々があるため、山頂付近の年間平均気温は約6~7℃で積雪も観測されます。このような気候から類を見ない豊かな自然と多様な生態系を有しており、1993年12月世界遺産に登録されました。

 さて、屋久島と言えば「屋久杉(やくすぎ)」が有名ですが、標高500m以上に分布し、樹齢1,000年を超えるものが屋久杉とされています。屋久杉は、屋久島の厳しい自然環境に対応した抗菌性を持つ樹脂を多量に分泌することで耐久性が高くなり極めて長寿になるそうです。屋久杉の中でも最も有名な老古木が「縄文杉」(樹高25.3m,胸高16.4m)です。縄文杉の由来は、樹齢が4,000年以上で縄文時代から生きている説と奔放にうねる幹の造形が縄文土器に似ているからという説があるそうですが、その凸凹の激しい幹は屋久島の厳しい自然を生き抜いてきた証が刻まれているようで見る者を圧倒します。尚、縄文杉の推定樹齢は諸説がありますが2,170年~7,200年とされているそうです。

 屋久島で最も人気のあるスポットが「白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)」です。白谷川の峡谷に鬱蒼と茂る屋久杉と照葉樹の原生林は深く苔むし、足元にはいくつもの清水の沢が流れる太古の森は、映画「もののけ姫」の舞台となった白神山地のモデルとされており、私たちを幽玄な世界に誘ってくれます。奥深い太古の森の中、苔むした巨石や倒木に森の精霊“こだま”が現れるかもしれません。私も“こだま”の出会いを楽しみに一度訪れたいと思います。

参考資料:屋久島ガイド協会ホームページ

屋久島トレッキング

最大級の老大木「縄文杉」
(樹高25.3m,胸高16.4m)

(写真提供:
「やませ&かわせみの山歩き」さん
2005.5.27)

太古の森 「白谷雲水峡」
(もののけ姫の森)

唯一車窓からみれる「紀元杉」
(推定樹齢3000年、胸高8.1m)

(写真提供:
二反田隆夫氏
2021.11.06)

ヤクザルの威嚇

コガクウツギの花

 
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一


MAPSS-DX-202211-32

著作権について

今回のねらい

今回は、久しぶりに細胞化学染色とその判定から疾患を考えることと、判定上の注意点を深掘りしたいと思います。
ぜひ挑戦してみてください。

問題

問題1

1-1<設問1> 細胞化学染色における所見の深堀りと考えられる疾患を述べてください(倍率1000倍)。

  • 1000

1-2<設問2> 細胞化学染色における所見の深堀りと考えられる疾患を述べてください(倍率1000倍)。

  • 1000
1-3<設問3> 細胞化学染色における所見の深堀りと考えられる疾患を述べてください(倍率1000倍)。

  • 1000

1-4<設問4> 細胞化学染色における所見の深堀りと考えられる疾患を述べてください(倍率1000倍)。

  • 1000

問題2

2-1<設問1> 細胞化学染色の名称とそれが意味する所見を深堀りして 述べてください(倍率1000倍)。

  • 1000

2-2<設問2> 細胞化学染色の名称とそれが意味する所見を深堀りして 述べてください(倍率1000倍)。

  • 1000

2-3<設問3> 細胞化学染色の名称とそれが意味する所見を深堀りして 述べてください(倍率1000倍)。

  • 1000

2-4<設問4> 細胞化学染色の名称とそれが意味する所見を深堀りして 述べてください(倍率1000倍)。

  • 1000

解答・解説

問題 1

細胞化学染色の所見からその深堀りと考えられる疾患を述べて下さい(倍率1000倍)。

 

【解説】

A.骨髄のペルオキシダーゼ(PO)染色です。骨髄に芽球が95%と増加し、芽球の多くがPO染色に陽性で あった急性骨髄性白血病(AML-M1)の症例です。PO染色は、Mc.Junkin(ベンチジン)法を用いたもので黄褐色の陽性を呈しています。PO染色は、ベンチジン誘導体を用いた方法が反応感度がよいとされますが、市販品ではジアミノベンチジン(DAB)染色キットが一般的です。好中球の陽性所見を対象にして判定します。

B.骨髄のPAS染色です。骨髄に芽球が92%と増加し、芽球の多くがPAS染色に点状、顆粒状、塊状陽性であった急性リンパ性白血病(pre B-ALL)の症例です。芽球は、小型でN/C比が高くPO染色に陰性でした。PAS染色における点状や塊状の陽性はリンパ芽球に特徴的であり、骨髄芽球、単芽球、巨核芽球では陰性が多く、陽性の場合は細顆粒状を呈します。経験的にB細胞性は、T細胞性に比べPAS陽性率が高く80%の症例で陽性がみられます。

C.骨髄のPAS染色です。骨髄の幼若赤芽球に顆粒状(矢印)、9時方向の小型の成熟赤芽球にびまん性の陽性がみられます。赤芽球のPAS陽性は腫瘍性に染まりやすく、幼若型と成熟型では陽性態度が異なることで鑑別します。本例はAML-M6の症例ですが、骨髄異形成症候群(MDS)では成熟赤芽球の陽性が多くみられます。正常の赤芽球系は通常PAS染色に陰性ですが、鉄欠乏性貧血やβ-サラセミアの一部に成熟赤芽球の陽性を呈することがあります。

D.リンパ節生検スタンプ標本の(左)酸ホスファターゼ(ACP)染色、(右)酸エステラーゼ(aEST)染色です。リンパ節に増殖したT細胞性腫瘍の症例で、共に細胞質のゴルジ装置周辺に点状(dot状)の陽性を呈しています。ACP染色に比べaEST染色は馴染みが薄いようですが、緩衝液を酸性領域(pH5.2)で基質にα-ナフチールアセテート(α-NA)を反応することによって茶褐色の陽性所見を呈し、ACP染色と同様にT細胞性腫瘍の証明に使用されます。


問題 2

細胞化学染色の所見からその深堀りと考えられる疾患を述べて下さい(倍率1000倍)。

 

【解説】

A.骨髄のPO染色です。本例は周囲の芽球を含めPO染色に陰性でした。好中球(中央)の陽性所見を対照としたつもりですが、好中球に比し顆粒が太いことからこれは好酸球と思われます。好酸球は好中球に比べると内因性PO活性が強いとされ、経時的変化に影響を受けず、好中球は数日で陰性化することを経験します。従って、本例は塗抹後経過した標本を染めたことが推測され、それに伴う芽球の陰性(PO失活)も考えられ、新鮮な標本であることを証明するには好中球の陽性細胞を対照とすべきと思われます。

B.末梢血の正常リンパ球の酸ホスファターゼ(ACP)染色です。(左)小型のリンパ球で核周の8時方向に点状(dot状)の陽性がみられ、これはT細胞の陽性態度です。(右)中型のリンパ球で細胞質一面に散在性の陽性がみられ、これはBリンパ球の陽性態度です。

C.骨髄の鉄染色です。(左)成熟赤芽球の核周囲に環状鉄芽球を多数認めた骨髄異形成症候群(MDS-RS)の症例です。ヘモグロビン合成障害によって核周囲に存在するミトコンドリアに鉄の過剰沈着が生じたもの(病的な可染鉄)とされ、先天性では鉄芽球性貧血がこれに属します。(右)成熟赤芽球の多くは鉄顆粒を含まない不可染鉄とみなされ、鉄欠乏性貧血や症候性貧血(一過性)などにみられます。

D.骨髄のエステラーゼ(EST)二重染色です。(左)ブチレートESTに陽性の幼若顆粒球(青矢印)と単球(赤矢印)です。(右)2個はリンパ芽球に顆粒状の陽性を呈したものです。ブチレートEST染色の強陽性は単球の証明になりますが、単球以外の顆粒球、リンパ球、巨核球、形質細胞などにも陽性に染まることが非特異的ESTとよばれる所以のようです。ただ単球系では他の細胞に比べて強陽性の所見がポイントになります。

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