第137回「マンスリー形態マガジン」2022年9月号

　最近、SDGs（Sustainable Development Goals）という言葉をよく耳にます。SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標を示し、世界の貧困、不平等・格差、気候変動、環境対策などさまざまな問題を根本的に解決して、よりよい世界を目指すための国際目標です。SDGsは、17のゴールと169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない（leave no one behind）」ことを誓っています。また、SDGsは、発展途上国のみならず、先進国自身が取り組む普遍的な目標とされ、我が国もすべての分野で積極的に参画しています。

　先日、九州大学と福岡リサイクル総合研究事業化センター（リ総研）の共同研究により、「シュレッダーくず」を “培養土”としてリサイクルする技術が開発され、見事に製品化にこぎつけたことがメデイアで報じられました。現在、ゴミの減量化に伴う古紙のリサイクル率は高まっていますが、シュレッダーで処分される「シュレッダーくず」は、線維が短く切れて再生紙にすることが難しいそうです。また、日本のごみのリサイクル率は、この数年低下しており、2018年度は19.9%でヨーロッパなどのリサイクル推進国の50%以上と比較しても決して高い水準ではありません。この中で、今回開発された技術は、土壌に広く分布する微生物「トリコデルマ911菌」が、紙を分解しながら増殖し作物の成長を助ける効果があることを解明しました。福岡県の培養土メーカーの協力の下、“実のなる野菜の土”として製品化され、ホームセンターなどで販売されています。この“実のなる野菜の土”は、通常の培養土よりも1.4倍の効力があるとされ、まさに3R（Reduce：ゴミの削減、Reuse；再使用、Recycle：資源化）を実現した「り総の土」が誕生しました。

　さて、現在、SDGsにおける目標に対して世界ではさまざまな取り組みが行われていますが、それよりも前から日本人が行っている取り組みをご存知でしょうか。日本人は、日常生活の中で“もったいない”と無駄をなくすことを自然に行っており、この言葉に感銘を受けたケニア人女性のワンガリ・マータイさんが“MOTTAINAI”として世界に紹介し、現在もさまざまな地域で“MOTTAINAI”キャンペーンが行われているそうです。私も少し忘れてかけていた“もったいない”をもう一度始めたいと思います。

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  今か今かと出番を待つ「シュレッダー屑」たち

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  培養土に様変わりした“理想研（りそうけん）の土” の誕生です

形態マガジン号キャプテン 阿南　建一