今月号のコラムは、先日訪れました福岡県東部、豊前市の岩屋地区に所在する「岩洞窟(がんどうくつ)」について紹介したいと思います。みなさまの中には、豊前市についてご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんので少しお伝えさせていただきます。豊前市は、福岡県行橋市と大分県中津市のほぼ中間に位置し、南部には求菩提山(くぼてさん)や犬ヶ岳などの山々が属する筑紫山地が連なり、北部は周防灘(瀬戸内海)に面し、温暖な気候からさまざまな産物を豊かに実らせることで古くから「豊国(とよのくに)」と呼ばれ、親しまれてきた自然豊かな街です。
さて、「岩洞窟(がんどうくつ)」は、豊前市のほぼ南に位置する求菩提山の麓にあります。求菩提山周辺には、求菩提百窟といわれるほど洞窟や岩の裂け目が多く、山々に神が宿るとされる山岳信仰(修験道)の修行の場として知られていました。その中でも最も規模の大きい「岩洞窟」は、古くは「狗ヶ岩屋(いぬがいわや)」と呼ばれ、多くの修験者(山伏)がこもって厳しい修行に明け暮れた場所とされています。窟内に入りますと平安時代後期(12世紀)の作とされる薬師如来像(木造仏)が安置され、これを囲むように宝塔、五輪塔や11体の石仏が遺(のこ)されています。また、洞窟の天井に目を向けますと、半肉彫りの天女(飛天:ひてん)が優美な姿で描かれており、絵筆を執る私にとっては時空を超えた美しさにしばらく目を奪われておりました。当時の修験者たちは窟内に篭り自らの肉体を極限にさらし、厳しい修行に挑み悟りを得ることで人々の救済のために祈りを捧げたとされていますが、祈りの中、目の前に舞い降りた天女に彼らは何を祈り、救いを求めたのでしょうか。今もなお山内には修行の場や宿坊跡、墓などの多くの遺構が遺されており、往時を偲ぶことができるそうです。
みなさまは、今年の夏をどのようにお過ごしになりましたか。今年は、猛暑とコロナ感染の再拡大で大変な夏になりましたが、夏の思い出としてご紹介させていただきました。
(資料:豊前市観光協会HP)
獣除けの柵を開いて山道を進み石段を上ること5分、間口17m・奥行7m・高さ4mの岩洞窟と11体の石仏や宝塔が迎えてくれます。窟の天井には壁画が目に留まります。
壁画は半肉彫りの飛天(ひてん)「迦陵頻迦(がりょうびんが」。羽衣をなびかせた天女が優雅な舞を見せているようです。
(撮影:H.Emikoさん.2022.6.1)。
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
今回の細胞編は、久しぶりに末梢血液像において鑑別を要する細胞を出題しました。
細胞の基本的な読み方に基づき判定してみてください。
症例編は、形態所見から診断は困難な症例ですので、記載所見を参考に考えてみてください。また、鑑別疾患についても検討してください。
問題1
PB-MG.1000
PB-MG.1000
PB-MG.1000
PB-MG.1000
問題2
【成人例】 発熱、全身倦怠感にて来院、貧血と白血球増加を指摘され骨髄検査が施行されました。
WBC 111,200/μL、Hb 8.9g/dL、MCV 91.3fL、PLT 22.5万/μL、NCC 48.6万/μL
ACP染色:陽性、PAS染色:陰性、免疫形質:CD34・HLA-DR発現あり
PB-MG.1000
BM-MG.600
BM-MG.1000
BM-PO.1000
問題 1
末梢血の細胞同定を行ってください。
【正答】
A-1.裸核の巨核球、2.分葉核好中球、3.異常リンパ球
B-1.リンパ球、2.単球
C-1.単球、2.異型リンパ球
D-1.低分葉核好中球、2.桿状核球
【解説】
A-1.細胞径15μm大、円形核は裸核状、核形不整は平面的で濃染性で5時方向に小さな突起を有することから血小板系が示唆され裸核の巨核球と思われます。
A-2.細胞径13μm大、クロマチンは結節状で核糸を認めることから分葉核好中球と思われます。
A-3.細胞径15μm大、円形核は核形不整が顕著で濃染性、細胞質は僅かにみられます(矢印)。A-1.に類似しますが、核の形状は立体的でクロマチンの増量がみられ異常リンパ球と思われます。ちなみにATL細胞で、6時方向はその核影と思われます。
B-1.細胞径15μm大、類円形核は偏在しクロマチンは粗剛、細胞質は淡青色のことからリンパ球と思われます。
B-2.細胞径18μm大、類円形核は不整でクロマチンは繊細、細胞質は部分的に軽度の好塩基性で微細なアズール顆粒や空胞を認め異型リンパ球様ですが、微細顆粒や空胞を認めることから単球と思われます。
C-1.細胞径18μm大、類円形核はやや不整でクロマチンは繊細気味、細胞質は部分的に軽度の好塩基性で微細なアズール顆粒を有することから単球と思われます。
C-2.細胞径21μm大、円形核は軽度の不整でクロマチンは粗剛、細胞質は強度の好塩基性がみられることから異型リンパ球と思われます。
D-1.細胞径13μm大、核は棒状でクロマチンは強度の結節状、細胞質は二次顆粒相当と思われ好中球が考えられ桿状核球様ですが、核質から本来なら分葉核球であるべきものが非分節に留まった低分葉核好中球(偽ペルゲル核異常)と思われます。
D-2.細胞径13μm大、形状はD-1.と類似しますが、核の棒状とクロマチンの結節がやや弱いことから通常の桿状核球と思われます。
問題 2
この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えてください。
【成人例】 発熱、全身倦怠感にて来院、貧血と白血球増加を指摘され骨髄検査が施行されました。
WBC 111,200/μL、Hb 8.9g/dL、MCV 91.3fL、PLT 22.5万/μL、NCC 48.6万/μL
ACP染色:陽性、PAS染色:陰性、B/T細胞系マーカー:発現なし
成人例で、白血球数著増(111,200/μL)と貧血(Hb 8.9g/dL)がみられ骨髄のNCCは48.6万/μLでした。
【解説】
A.[PB-MG.1000] 末梢血液像で芽球が95%みられ、全般にN/C比が高くクロマチンはやや粗剛、細胞質は軽度の好塩基性で一部に空胞を認めました。
B.[BM-MG.600] 骨髄は過形成で、芽球は全有核細胞の92%と増加し、末梢血とは異なりN/C比が低めの芽球が優位でした。
C.[骨髄-MG.1000] 芽球はN/C比が低く、核は類円形で不整は軽度、クロマチンは繊細で核小体を認め、細胞質は辺縁に好塩基性が強く、アズール顆粒やアウエル小体は認めないようでした。
D.[骨髄-PO.1000] 芽球はPO染色に陰性でした。PAS染色、ブチレートEST染色も陰性でACP染色が陽性でした。
【臨床診断】
末梢血および骨髄の芽球は90%以上を呈していたことから急性白血病を疑いました。
芽球はアズール顆粒やアウエル小体を認めず、PO染色に陰性であったことから、AMLではFAB分類のM0、M5a、M6b、M7やALLを考えました。
M5a、M6b、M7は特徴的な形態像を示すことから除外でき、M5aはブチレートEST染色の陰性も参考になります。
残りはM0とALLになりますが、免疫表現型で、顆粒球系マーカー(CD13/33)や幹細胞マーカー(CD34/CD117)、HLA-DRが発現し、B/T細胞マーカーの発現を認めなかったこと、また電顕ミエロペルオキシダーゼ(MPO)で一次顆粒(アズール顆粒)が証明されたことからAML-M0(最未分化型急性骨髄性白血病)と診断されました。
尚、ACP染色の陽性については診断的意義は低く、また電顕MPOについては、普及性の問題から今日では免疫表現型が診断に有効となるようです。
鑑別疾患は上記グループになりますが、M5a、M6b、M7については形態的特徴をしっかり把握し、免疫表現型の所見を参考にすることが重要かと思われます。
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