開催が危ぶまれていました東京2020オリンピック競技大会は、7月23日開催され、日本のアスリートたちは史上最多27個の金メダルを獲得し、大成功の中に閉会しました。一方、変異株による感染拡大が続いており、ステイホームによる人流抑制が求められています。小生も1年以上のステイホームが続いており、ストレスが溜まっていることもあり、少しだけリフレッシュしたい気分です。
さて、今回は、気分転換を兼ねて沖縄から南へ410㎞離れた八重山諸島の石垣島をご案内させていただきます。南ぬ島(ぱいぬしま)石垣空港から車で約30分、島の北西部にある標高282mの野底岳(のそこだけ、ぬすくだぎ)を目指します。野底マーペー(のそこマーペー、ぬすくマーペー)の愛称で親しまれているこの山は、亜熱帯植物が覆い茂る山道を登りきると、山頂の尖った岩から360度のパノラマビューで、インスタ映えする絶景のスポットです。
この「野底マーペー」には悲しい伝承があり、18世紀頃、時の政府(首里王府)による政策で石垣島周辺の島人は、石垣島に強制移住させられました。石垣島から17㎞離れた黒島にマーペーという娘とカニムイという若者が仲睦まじく暮らしていましたが、マーペーは石垣島の野底村へ、カニムイは黒島に残ることになりました。マーペーは、恋人カニムイのことを忘れることができず、逢いたい一心で野底岳の山頂を目指しましたが、山頂からは於茂登岳(おもとだけ)などの石垣島の山々に阻まれ、黒島の島影さえも見ることができませんでした。絶望の淵に嘆き悲しんだマーペーは、山頂で祈るような姿で石になってしまったと言い伝えられています。また、この物語は、1977年小柳ルミ子が「星の砂」として唄われ、歌詞の中では、マーペーは石垣島の島人と結婚することになりましたが、恋人を思い慕う気持ちには変わることはなく、星の砂になってカニムイのもとへ行きたいとつづられています。
小生も石垣島には仕事で3度ほど訪れましたが、コロナ感染終息の暁には、「野底マーペー」を訪れ、石と化したマーペーに会いにいきたいと思います。
標高282mの野底岳(ヌスクマーペー)の全景
野底岳の山頂からのパノラマビュー
大崎ビーチのアオウミガメ
御神埼(おがんざき)の落陽
(撮影:比嘉華里さん.2020.11.25)
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
今回の細胞編は、骨髄像において鑑別を要する細胞を出題しました。周囲の細胞と比較しながら同定してみてください。
症例編は、高齢の方で末梢血、骨髄標本のMG染色のみを提示しています。形態的所見に特徴的なヒントがあるようですので診断づけてください。また、形態診断に不可欠な検査所見や鑑別疾患についても考えてみてください。
問題1
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
問題2
【高齢】 主訴:脾腫(+)、リンパ節腫(-)
WBC 1.32万/μL、Hb 11.0g/dL、Ht 31.5%、PLT 10.5万/μL、BM-NCC 14.5万/μL
PB-MG.400
PB-MG.1000
BM-MG.400
BM-MG.1000
問題 1
骨髄の細胞同定を行って下さい。
【正答】
A-1.前単球 、2.後骨髄球、3.多染性赤芽球
B-1.形質細胞、2.前骨髄球
C-1.多染性赤芽球、2.リンパ球、3.肥満細胞(マスト細胞)、4.多染性赤芽球
D-1.2.前骨髄球、3.後骨髄球、4.骨髄球
【解説】
A-1.細胞径20μm大、核は中心性で核形不整は軽度、クロマチン網工は繊細で核小体がみられ、弱好塩基性の細胞質には僅かに顆粒を認め、核質の繊細さから前単球としました。
2.細胞径13μm大、核に陥没が みられ、クロマチン網工は粗大粗荒のことから後骨髄球としました。
3.細胞径8μm大、円形核は僅かに偏在し、クロマチン網工は粗大粗荒で凝縮状、細胞質の色調は青紫色のことから多染性赤芽球としました。
B-1.細胞径24μm大、類円形核は極端に偏在し、クロマチン塊は虎斑状に分散してみられ、濃青紫色の豊富な細胞質は核周明庭、空胞やピンク様の封入体がみられます。これは免疫グロブリンの産生を予測するも のとして形質細胞にしました。
2.細胞径23μm大、核は偏在し、クロマチン網工は顆粒状で核小体は不明瞭、特徴的な一次顆粒が減少気味の前骨髄球と思われます。
C-1.細胞径10μm大、円形核は僅かに偏在し、クロマチン網工は粗荒で凝集塊を認め、細胞質は青紫色のことから多染性赤芽球としました。
2.細胞径11μm大、細胞質が不明瞭ながらも円形核、クロマチン網工は粗荒であることから中型のリンパ球としました。
3.細胞径18μm大、細胞質は暗紫色の顆粒が充満し、中心性の核は委縮し、クロマチン網工は不明瞭ながらも篩(ふるい)状の小さな丸い空隙がうかがえ肥満細胞としました。
4.細胞径10μm大、1.と同様の多染性赤芽球としました。
D-1.2.細胞径20μm大、共に類円形核は偏在し、クロマチン網工は顆粒状で核小体を認め、弱好塩基性の細胞質には粗大な一次顆粒を認めることから前骨髄球としました。
3.細胞径14μm大、核形は陥没し、クロマチン網工は粗大粗荒で、核幅の短径が長径の1/3以上から後骨髄球としました。
4.細胞径15μm大、核形は不整はなく、クロマチン網工は粗大粗荒で、核幅の短径が長径の1/2以上のことから骨髄球としました。(核の短径・長径比は小宮正文先生の基準法に基づいたものです)
。
問題 2
この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えてください。
【小児】 主訴:リンパ節腫大
WBC 37.8万/μL、RBC 431万/μL、Hb 15.0g/dL、Ht 47.8%、PLT 12.2万/μL、BM-NCC 168.6万/μL
高齢の患者さんで、近医にて脾腫を指摘され精査のため当院を紹介来院されました。貧血と白血球数の増加を認め、骨髄検査が施行されました。脾腫大(6横指)を認め、リンパ節腫脹は認められませんでした。
【解説】
A.[末梢血-MG] 白血球数増加(23,200/μL)の百分率は、リンパ球が90%と著増し、周囲には核影を認めました。
B.[末梢血-MG] リンパ球の多くはN-C比がやや高く、クロマチン網工は粗網状で核小体を認めました。一部に細胞質の突起を有するものがあり、前リンパ球を疑いました。
C.[骨髄-MG] 骨髄は正形成でリンパ球は85%を占め、濃淡の核染を有するものが混在していました。
D.[骨髄-MG] 骨髄のリンパ球の形態は末梢血と同様で、明瞭な核小体や核形不整を認めたことから異常リンパ球として前リンパ球を疑いました。前リンパ球はPO染色、PAS染色、EST染色に陰性でした。
【臨床診断】
末梢血および骨髄に増加するリンパ球は、慢性リンパ性白血病(CLL)に類似しますが、核形不整や明瞭な核小体を認めたことから前リンパ球が考えました。これらの免疫表現型は、CD19・CD20・HLA-DR・sIgの発現を認め、さらにFMC7の発現を認めたことからB細胞性の性格を有していました。末梢血の前リンパ球は55%を超え、骨髄でも85%と増殖し、かつ孤立性脾腫(リンパ節腫大を認めない脾腫)の所見から、B細胞性前リンパ球性白血病(B-PLL)と診断されました。B-PLLの形態分類(Galton博士.1974,Catovsky博士.1983)を参考にすると、核膜の切れ込み(cleft)と明瞭な核小体を有する細胞が優勢するcleft typeと思われます。
WHO分類(2017)では、TP53遺伝子に関連する17p13欠失が半数例にみられると言われ、治療抵抗性の報告が多いようです。
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