みなさんは、絆創膏といえば何を思い浮かべますか。実は絆創膏の呼び方はさまざまで、北海道、和歌山、広島などでは「サビオ」、東北、中四国では「カットバン」、関東、東海、関西では「バンドエイド」、長野、北陸では絆創膏、富山では「キズバン」、九州、奈良では「リバテープ」と呼ばれ、絆創膏の呼び方で出身地が分かってしまうようです。
今回は、キズのお供として九州で普及している「リバテープ」を紹介させていただきます。リバテープは、「田原坂古戦場」に程近い熊本市北区植木町に所在するリバテープ製薬株式会社(以下、リバテープ製薬)が製造販売し、黄色の消毒薬(アクリノール、商品名リバノール)を浸したガーゼを付けた絆創膏です。リバテープ製薬の歴史は古く、「西南戦争」(1877.2.15~9.24)までさかのぼります。1877年(明治10年)、西郷隆盛率いる薩摩軍と政府軍が戦った西南戦争の激戦地となった「田原坂」(現、熊本市北区植木町)では多くの死者、負傷者が発生しましたが、周辺の住民たちは、分け隔てなく両軍の兵士を看護しました。その際、民家「星子家」に薩摩軍の軍医「有馬某」が重傷を負って担ぎ込まれました。軍医は、その場に居合わせた星子亀次郎少年(以下亀次郎)に“自分はこの地に果てる、ついてはこれから述べる薬を調合錬製して、傷ついた兵士に役立ててほしい‥”と薩摩秘伝の膏薬(こうやく)の調合方法を伝え息絶えました。亀次郎は、約束通り伝え聞いた製法に基づき調合し、負傷兵の看護にあたりました。
青年になった亀次郎は、その後も研究を重ね、1878年「ほねつぎ膏」として商品化を行い創業し、1902年、屋号を「星子旭光堂」に改め、販路を海外まで広げて現在の礎を築きました。1945年(昭和20年)亀次郎の死去後、三代目義法は戦後進駐軍が使用していた救急用の包帯をヒントに研究を重ね、1950年後半フィルム上にガーゼを載せた救急絆創膏を開発し、1960年(昭和35年)日本で初めて「リバテープ」の商品名で絆創膏の販売を開始しました。リバテープは、その利便性から高度成長とともに九州から全国へと広く普及していきました。
昭和の頃、私 建一少年は野球の練習ですり傷を作って帰宅すると母親から“赤チン(マーキュロクロム液)を塗っておきなさい”とよく言われたものです。この赤チンも2020年12月に販売を終えました。現在、ご家庭でお母さんは“リバテープを貼っておきなさい”と言われているのでしょうか。“もしものキズにリバテープ”、皆様もご一緒に“いつものすり傷、リバテープばい”。
「もしものキズにリバテープ」
リバテープ製薬会社(熊本市植木町)
“夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡”(芭蕉句)
西南戦争で戦場と化した田原坂吉次峠付近
(撮影:井上佳那子さん.2021.4.18)
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
今回の細胞編は、骨髄像において鑑別を要する細胞を出題しました。通常のサイズで提示しましたので周囲の細胞と比較しながら同定してみてください。
症例編は、高齢の方で、末梢血、骨髄標本のMG染色、PO染色、EST染色を提示しています。形態的所見に僅かなヒントがあるようですので細胞化学染色も参考に診断づけてください。また、形態診断に不可欠な検査所見や鑑別疾患についても考えてみてください。
問題1
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
問題2
【高齢】 全身倦怠感、WBC 38,200/μL(blast1%)、RBC 181万/μL、Hb 5.5g/dL、Ht 16.0%、PLT 2.6万/μL、BM-NCC48.5万/μL
PB-MG.1000
BM-MG.400
BM-MG.1000
D:BM-PO.1000、E:BM-EST二重.400
問題 1
骨髄における紛らわしい細胞の鑑別について挑戦します。
【正答】
A-1.単球、2.桿状核球、3.リンパ球、4.幼若好塩基球、5.幼若好塩基球
B-1.芽球、2.後骨髄球、3.分葉核球
C-1.マクロファージ、2.前赤芽球
D-1.桿状核球、2.前骨髄球、3.形質細胞、4.正染性赤芽球、5.リンパ球
【解説】
A-1.細胞径16μm大、核は偏在し核形不整がみられ、クロマチン網工は繊細、弱好塩基性の細胞質に微細顆粒や一部空胞を認めることから単球としました。
2.細胞径12μm大、核は棒状で湾曲し、クロマチン網工は やや結節状のことから桿状核球としました。
3.細胞径13μm大、核は分葉し、クロマチン網工は粗荒であり、 弱好塩基性の細胞質に僅かな顆粒を有し、核分葉のリンパ球としました。
4.5.細胞径12μm大、核のクロマチン網工は不鮮明で、細胞質の顆粒は橙紅色から紫褐色を呈し同系と思われます。
4.は幼若好酸球類似ですが、幼若好塩基球(後骨髄球?)、5.も幼若好塩基球(前骨髄球?)としました。
B-1.細胞径20μm大、核は類円形、クロマチン網工は粗網状で核小体を有し、細胞質は好塩基性が強く一部に顆粒を認め、顆粒を有する芽球(単芽球?)としました。
2.細胞径13μm大、核の短径が長径の1/3以上を示すことから後骨髄球としました。
3.細胞径13μm大、核糸を認めることから二分節の分葉核球としました。
C-1.細胞径20μm大、核は類円形で、クロマチン網工はスポンジ様、豊富な細胞質は辺縁が不規則で突起物を有し、異物の貪食もみられマクロファージとしました。
2.細胞径24μm大、核は円形で中心性、クロマチン網工は繊細顆粒状、細胞質は好塩基性が強く突起物も認めることから前赤芽球としました。
D-1.細胞径13μm大、核は湾曲しクロマチン網工は弱い結節状を認めることから桿状核球としました。
2.細胞径22μm大、核は楕円状で偏在しクロマチン網工は顆粒状で核小体を有し、細胞質は好塩基性で粗大な顆粒を認め前骨髄球としました。
3.細胞径14μm大、核は偏在しクロマチン網工は粗荒で核周明庭を認め形質細胞としました。
4.細胞径6μm大、核は中心性で濃縮状、細胞質は紫紅色の色調から正染性赤芽球としました。
5.細胞径7μm大、核は円形で、クロマチン網工は粗荒、細胞質は弱好塩基性でリンパ球としました。
問題 2
この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えてください。
【高齢】 全身倦怠感、肝脾腫(-)、リンパ節腫(-)、出血斑(+)WBC 4,100/μL(Blast +)、RBC 310万/μL、Hb 7.4g/dL、Ht 24.4%、PLT 8.6万/μL、BM-NCC 24.2万/μL
高齢の患者さんで、全身倦怠感を主訴に来院され、貧血と血小板減少を指摘されたため骨髄穿刺が施行されました。正球性貧血、骨髄は過形成(48.5万/μL)で染色体は正常核型でした。
【解説】
A.[PB-MG.1000] 白血球数増加(3.82万/μL)の血液像で芽球が1%、幼若顆粒球の出現や単球の増加(26%,9,932/μL)がみられ、単球は大型で核の分葉傾向がみられました。好塩基球や好酸球の増加は認めず、好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコアは正常でした。
B.[BM-MG.400] 骨髄は過形成 で顆粒球系が72%を占め、単球は11%で周囲には小型巨核球、裸核巨核球(矢印)を認めました。
C.[BM-MG.1000] 骨髄の芽球は3%でアウエル小体は認めず、顆粒球系には分化過程がみられ、中央の大型細胞(矢印)は好酸性の前骨髄球と思われます。
D.[BM-PO/EST二重] 骨髄は、PO陽性の顆粒球系が優位のなか陰性の単球系が混在し、EST二重染色でもクロロアセテート陽性の顆粒球系が優位でした。
【臨床診断】
末梢血は単球の増加(9,932/μL)、骨髄は芽球増加を伴わない顆粒球系が優位(72%)で、形態異常は巨核球に僅かに認めるものでした。形態的には、骨髄の顆粒球系の増殖から慢性骨髄性白血病(CML)を疑いましたが、好塩基球やNAPスコアは正常、また染色体異常もないことから否定されました。末梢血の単球の増加がポイントと考え、芽球は基準範囲内のことから慢性骨髄性単球性白血病(CMML)を疑いました。ただ末梢血に比べ骨髄の単球の増加は認めませんが、CMMLではよく経験することです。WHO分類(2017)のCMMLの診断基準として、末梢血の芽球比率が20%未満、単球増加(1000/μL以上、10%以上)を認め、BCR-ABL1、PDGFRA、PCM1-JAK2遺伝子変異などを認めないと記載されています。本例はそれらの条件を満たしていたことからCMML(CMML-0型)と診断されました。
これから先のページでは、医療関係者の方々を対象に医療機器・体外診断薬等の製品に関する情報を提供しております。当社製品を適正に使用していただくことを目的としており、一部の情報では専門的な用語を使用しております。
一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。
医療関係者の方は、次のページへお進みください。
(お手数ですが、「進む」ボタンのクリックをお願いします)