現在、変異ウィルスの感染拡大により非常事態宣言が発出されようとしています。私は、週二回の大学勤務のほかは、自宅でのホームワークを行っています。その中で、昨年上演が延期されていた「峠、最後のサムライ」劇場版(松竹)のロードショーが決定したことを知りました。この映画は、 “知られざる英雄” として「河井継之助」(かわいつぎのすけ)の生涯を描いたもので司馬遼太郎作の「峠」(1968)が原作だそうです。今回は、この河井継之助(以下継之助)にスポットライトを当てたいと思います。
継之助は、1827年越後長岡市に生まれ腕白な少年期を経て、青年期には勉学に励む中で中国の陽明学(王陽明)を学び、その後長岡藩(約14万石)牧野家の家臣になります。その後、長崎、佐賀、江戸に遊学し、1866年には家伝の会計能力と西洋の知識を生かし藩政改革を行います。それは「庶民を豊かにすることで藩の財政を立て直す」という今で言う“カワイノミクス”でした。その結果、僅か1年で藩の余剰金9万9000両を残したそうです。時は大政奉還、そして戊辰戦争に突入します。長岡藩は新政府軍、幕府軍にもつかず仲介役を志し、一方で外国よりガトリング砲などの軍備増強を進めました。1867年継之助は新政府との間で「武装中立」を標榜しましたが、決裂して北越戦争が開戦しました。長岡藩(1,800兵)は、幕府に対する忠義と郷土を守るために新政府軍(5,000兵)と戦い、その戦さは約3ヶ月も続きましたが衆寡敵せず、敗戦することになります。軍事総監の継之助は左足に銃弾を受け、敗走中に破傷風を発症して1868年42歳の生涯を終えました。没後、戦さの中での一揆鎮圧や長岡の街が焼け野原になったことから継之助の評価には厳しいものもがありました。一方、継之助自身は、この戦さには一貫して関わらない「武装中立」を標榜しており、新政府軍の協議の中で軍資金の拠出や出兵などの理不尽な要求は、結局長岡藩が戦争に巻き込まれることになり、到底受け入れることが出来なかったのではと思われます。その後、1869年戊辰戦争は、函館戦争を経て終結することになり、日本は新しい時代を迎えることになりました。
勝てば官軍負ければ賊軍と言われますが、己の正義を信じ、忠義と郷土のために立ち向った “知られざる英雄”継之助から私は多くのことを学びました。
長岡市光輝院栄涼寺に眠る河井継乃助の墓標
(河井継乃助記念館HP)
当時では画期的な連射式の銃とされた「ガトリング砲」
(河井継之助記念館HP)
日本三大銘菓「越乃雪」(大和屋)佐久間象山、高杉晋作、岩倉具視、大隈重信、山本五十六らも好んだ越前和菓子
(撮影:阿南.2021.1.5)
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
今回の細胞編は、骨髄像において鑑別を要する細胞を出題しました。ズームアップしていますので、核質の構造、細胞質の色調・顆粒などの所見をじっくり観察してみてください。
症例編は、幼児例でリンパ節生検捺印(スタンプ)標本のMG染色、PAS染色、ACP染色を提示しています。形態的所見にヒントがあるようですので細胞化学染色も参考に診断づけてください。また、形態診断に不可欠な検査所見や鑑別疾患についても考えてみてください。
問題1
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
問題2
【幼児】 発熱、リンパ節腫大、肝脾腫大(+)、増加する細胞:PO(-)
WBC 11,900/μL(Blast 0%)、Hb 12.8g/dL、Ht 39.0%、MCV 79.1fL、PLT 42.3万/μL、BM-NCC 14.5万/μL(Blast 0%)
*標本はリンパ節生検捺印標本です。
MG.400
MG.1000
PAS.1000
ACP.1000
問題 1
骨髄における紛らわしい細胞の鑑別について挑戦します。
【正答】
A.偽ペルゲル核異常の好酸球
B.偽ペルゲル核異常の好中球
C.幼若好塩基球
D.幼若好塩基球
E.前単球
F.前骨髄球
G.幼若好酸球
H.細網細胞
【解説】
細胞質の顆粒の色調(橙紅色)や顆粒の大きさ(0.5~0.7μm)から好酸球を考え、細胞の大きさから幼若型を疑います。しかし、核は小さく、クロマチン網工は粗大粗荒から成熟型を考え、分葉しそこなった核から好酸球の偽ペルゲル核異常と思われます。
細胞径14μm大、クロマチン網工は、粗大結節状から好中球の分葉核球を疑いますが、肝心の核分葉がみ られなく、細胞質は顆粒を欠いているため好中球の偽ペルゲル核異常と思われます。
細胞径16μm大、核は偏在し、クロマチン網工は無構造で粗大な紫褐色の顆粒(1.0~2.0μm)がみられ、核の上にも存在していることから幼若な好塩基球(前骨髄球あたり)と思われます。
細胞径15μm大、核は偏在し、濃染状でクロマチン網工は無構造、細胞質は柴褐色の粗大顆粒を認め、核の上にも存在し、幼若好塩基球(骨髄球あたり)と思われます。顆粒の一部は抜けて空胞状、この細胞が水溶性の性質であることをうかがわせるものです。
細胞径18μm大、核は中央に位置し、核形不整は軽度、クロマチン網工は繊細で核小体を認め、細胞質は微細なアズール顆粒が充満していることから前単球と思われます。
細胞径20μm大、核は偏在し、核は類円形で不整はなく、クロマチン網工は粗顆粒状で核小体を認め、細胞質は粗大な一次(アズール)顆粒が多くみられることから前骨髄球と思われます。
細胞径17μm大、核は偏在し不整はなく、クロマチン網工は粗顆粒状、細胞質は好塩基性で橙紅色の粗大顆粒を認めることから幼若好酸球(前骨髄球あたり)と思われます。
前骨髄球を思わせますが、細胞質の辺縁は不鮮明で、円形核のクロマチン網工は繊細気味で核小体を有し、大小の不均一な顆粒がみられます。細胞質の不鮮明さと核質は網の目状から血液細胞を否定し細網細胞(フエラタ細胞 ?)と思われます。
問題 2
この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えてください。
【幼児】 発熱、リンパ節腫大、肝脾腫大(+)、増加する細胞:PO(-)、WBC 11,900/μL(Blast 0%)、Hb 12.8g/dL、Ht 39.0%、MCV 79.1fL、PLT 42.3万/μL、BM-NCC 14.5万/μL(Blast 0%)
*標本はリンパ節生検捺印標本です。
幼児例で縦隔腫瘤による呼吸困難、および上大静脈症候群を主訴に来院されました。発熱、リンパ節腫大、肝脾腫を認めました。WBC 11,900/μLの末梢血に芽球は認めず、リンパ節(LN)生検捺印標本の所見から迫ります。
【解説】
A.[LN-MG.400] 小型~中型リンパ球の腫瘍性増殖がうかがえ、核形不整が散見されます。
B.[[LN-MG.1000] 腫瘍性細胞はN/C比が高く、クロマチン網工は粗荒で一部に核形不整(矢印)がみられます。それは核が陥没した様で、その深さは浅いように思え、その昔、改札パンチで切符に切れ込みを入れたように見えます(下図)。
C.[LN-PAS.1000] 腫瘍細胞はPO染色に陰性、PAS染色に一部が粗大顆粒状の強陽性の所見でした。
D.[LN-ACP.1000] 腫瘍細胞は、ACP染色で細胞質のゴルジ野周辺にドット(点)状の限局性陽性の所見でした。
(改札パンチで切符に開いた穴)
【臨床診断】
ゴ腫瘍細胞の免疫表現型は、pan T細胞抗原(CD1a、CD2,CD5、CD7)が陽性、HLA-DRは陰性でした。
組織診断は、非ホジキンリンパ腫のリンパ芽球型(T cell type)と診断されました。臨床的には縦隔腫瘤を伴っており、リンパ節に腫瘤形成がみられたこと、pan T細胞抗原陽性とHLA-DR陰性からTリンパ芽球性リンパ腫(T lymphoblastic lymphoma:T-LBL)と診断されました。T細胞性腫瘍を疑う形態所見として、①腫瘍細胞の独特な核の陥没 ②ACP染色のドット状の限局陽性が支持してくれます。PAS染色の塊状や粗大顆粒状の強陽性は、経験から小児B細胞性ALLの約80%にみられ、T-ALLでは陰性が多いのですが、ときどき、この症例のような強陽性態度を示した時は、リンパ系腫瘍という点では意義あるものと思われます。
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