今回は、クリニクラウンについてご紹介させていただきます。クリニクラウン(CC)は、クリニカル(病院)とクラウン(道化師)を併せた造語で臨床道化師とも言われ、赤い鼻がトレードマークのCCは、小児病棟を訪れてこどもたちと遊びやコミュニケーションを通じてこどもたちの成長や発達のサポートを行っています。病院のこどもたちは、これまでとは異なる環境の中、さまざまな制約の中で家族と離れて毎日不安な日々を過ごしています。こどもたちがだんだんこどもらしく過ごすことが難しくなっていく中、CCはこどもたちの病室を定期的に訪問することで少しでも病気のことを忘れてこどもらしく過ごせるような「こども時間」を届けています。
このCCの派遣、養成、認定、啓蒙活動を行っているのが、認定NPO法人日本クリニクラウン協会(JCCA)です。JCCAは、2004年オランダ総領事館によってクリニクラウンオランダ財団(以下CCNL)の活動を日本に初めて紹介し、実際にオランダのCCが病院を訪問しました。それを体感した医師、看護師、家族会の有志や道化師がCCNLと提携して、2005年日本クリニクラウン協会が設立されました。その後、2016年大阪市から「認定NPO法人」として認定され、設立から15年間で、日本全国の83病院を3485回訪問し、10万人を超える入院中のこどもたちに「こども時間」を届けています。
私は、第59回日本小児血液・がん学会学集会(愛媛.2017)に参加した際、「がんのこどもを守る会」のブースで知人から紹介され、クリニクラウンの活動を支える「あかはな会員」に申込みました。その時に親切に対応して頂いた石井裕子さん(理事)とは現在も交流を続けております。2019年度の事業報告によれば、訪問回数288回、派遣CCのべ人数576名、訪問病院数48施設、出会ったこどもたち9,588人だそうです。今年は、二月から新型コロナウィルスの感染拡大を考慮し、派遣事業を中止しているそうですが、現職時に小児専門施設に在職していたこともあり、「こども時間」のために微力ながら支援を続けたいと思っています。また、日本小児血液・がん学会学術集会では、展示ブースの一角に「こどもたちの絵画展」が開催され、30点ほどの絵画が出展されています。それぞれの絵画の紹介文には病魔に立ち向かうこどもたちの切実な思いが綴られており、それらを拝見する度に毎回胸が締め付けられる思いになります。
私たちは検査を行う側から患者さんを見つめていますが、このような取り組みからこどもたちのさまざまな思いを知ることもできます。今年の春から“YouTube”でクリニクラウンチャンネルの動画配信が開始されましたので「こども時間」の大切さを感じていただければと思います。
「Annual report.2017」報告書より抜粋
写真:認定NPO法人日本クリニクラウン協会提供
「子どもたちの絵画展」
(第61回日本小児血液
・がん学会学術集会.広島.2019.11)
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
今回の細胞編は、骨髄像における鑑別細胞と非造血細胞を出題しました。後者は普段あまり気にかけられないようですが、認識しておく必要があります。
症例編は、僅かな検査所見ですが、骨髄の正常構成から逸脱した情報を認識し、形態所見を理解して形態診断を行って下さい。また、形態診断に不可欠な検査所見や鑑別疾患についても同様に考えてみて下さい。
骨髄の細胞同定を行なって下さい。
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えて下さい。
【50歳代】
WBC12.8万/μL(幼若顆粒球29%,Neutro.51%.Eo1%,Ba8%,Ly9%,Mo2%) RBC487万/μL、Hb14.3g/dL、Ht44.7%、PLT45.9万/μL、BM-NCC62.4万/μL、
PB-MG.1000
BM-MG.400
BM-MG.1000
BM-MG.1000
問題 1
今回は、骨髄像の類似細胞と小型の細網細胞に着目してみました。また、塗抹の濃塗部分をやむなく観察する場合は、周囲の細胞との重なり具合を考えながら同定します。
【正答】
A-1.多染性赤芽球、2.正染性赤芽球、3.細網細胞 B-1.血球貪食細胞(マクロファージ)、2.3.細網細胞、4.多染性赤芽球、5.前骨髄球 C-1.前赤芽球、2.前骨髄球、3.後骨髄球 D-1.前単球、2.前骨髄球
【解説】
A-1.細胞径118µm大、円形核は中心性で、クロマチン網工は粗大凝集状、細胞質は多染性の色調から多染性赤芽球と思われます。2.細胞径88µm大、円形核は偏在し濃染状、細胞質は正染性の色調から正染性赤芽球と思われます。3.細胞径98µm大、類円形核のクロマチン網工は粗網状、淡青色の細胞質は辺縁が不鮮明なことから細網細胞の一種かと思われます。
B-1.細胞径18µm大、類円形核は偏在し、クロマチン網工は繊細(スポンジ様)、豊富な淡青色の細胞質は空胞を認め、赤血球を貪食していることから血球貪食細胞と思われます。2.3.は同系として捉え、楕円状核はクロマチン網工がスポンジ様から濃縮状、僅かな細胞質を認め、線維芽細胞を思わせ細網細胞の一種としました。
4.細胞径9µm大、多染性赤芽球と思われます。5.細胞径15µm大、委縮気味で通常より小さく見えます。類円形核は中心性でクロマチン網工は粗顆粒状、太い一次顆粒を有するようで前骨髄球と思われます。
C-1.濃塗部分の観察で、特に1.と2.は通常より小さく見えます。1.細胞径15µmm大、円形核は中心性でクロマチン網工は繊細顆粒状、細胞質は好塩基性が強度で舌状突起物を有していることから前赤芽球と思われます。
2.細胞径16µmm大、後骨髄球に類似しますが、クロマチン網工は粗顆粒状で細胞質は軽度ながら好塩基性で顆粒は一次顆粒とみなし前骨髄球としました。3.細胞径13µmm大、核形は馬蹄形でクロマチン網工は粗大粗荒、核幅の短径が長径の1/3以上を呈する(小宮法.1988)ことから後骨髄球と考え、顆粒は二次顆粒とみなします。
D-1.細胞径25µm大、類円形核は偏在し軽度不整がみられ、クロマチン網工は繊細網状で核小体を有し、好塩基性の細胞質には微細なアズール顆粒を有することから前単球と思われます。2.細胞径18µm大、核は偏在し不整はなく、クロマチン網工は粗顆粒状で核小体を有し、好塩基性の細胞質には通常あるべき一次顆粒を欠いておりますが前骨髄球と思われます。両細胞は鑑別を要しますが、核質の差がポイントのようです。
問題 2
50歳代、近医にて肝脾腫、白血球数増加を指摘され来院し、精査目的のため骨髄穿刺が施行されました。
【解説】
(PB-MG.1000)
(BM-MG.400)
(BM-MG.1000)
(BM-MG.600)
A.[PB-MG.1000] 白血球数著増(12.8万/μL)の血液像では幼若顆粒球が出現し、好塩基球の増加(8%;10,240/µL)がみられ、NAP染色では活性の低値がみられました。
B.[BM-MG.400] 骨髄は過形成、M/E比は47.5で顆粒球系が優位、それらには分化過程がみられ、芽球 は基準域でした。
C.[BM-MG.1000] 骨髄の顆粒球系は幼若型から成熟型にかけて低顆粒の傾向でした。
D.[BM-MG.600] 骨髄では成熟型の巨核球が増加していました。
【臨床診断】
末梢血および骨髄で顆粒球系が優位で、それらは分化傾向が強く芽球が基準域であったこと、また、9;22転座の核型異常(Ph染色体)およびBCR-ABL1遺伝子が証明されたことから慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期と診断されました。本型の診断には顆粒球系の増加に加え、好塩基球の増加がポイントになります。BCR-ABL1変異は、9番染色体上にABL1変異が、22番染色体上にBCR変異が存在すると言われます。化学療法は、分子標的療法としてメチル酸イマチニブがBCR-ABL1を選択的に阻害するチロシンキナーゼ阻害剤として働き延命効果に導いているようです。鑑別疾患には、骨髄性の類白血病反応がありますが、これは基礎疾患を突き止めることが先決であり、好中性顆粒は豊富でNAP活性は高いようです。もちろん、Ph染色体やBCR-ABL1遺伝子異常は認めません。
日本のCMLの発症率は、白血病全体の約20%を占め男性に多いとされます。本型で大事なことは、初診時白血球数が正常の場合に早期発見することであり、血液像で幼若顆粒球の出現や好塩基球の増加(一般に500/µL以上)を見落とさないようにします。
© 2020 ベックマン・コールター株式会社
MAPSS-DX-202009-011
これから先のページでは、医療関係者の方々を対象に医療機器・体外診断薬等の製品に関する情報を提供しております。当社製品を適正に使用していただくことを目的としており、一部の情報では専門的な用語を使用しております。
一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。
医療関係者の方は、次のページへお進みください。
(お手数ですが、「進む」ボタンのクリックをお願いします)