福岡では、先日緊急事態宣言が解除されましたが、北九州地区や首都圏では二次感染の拡大が懸念されており、私は、もう暫く自宅での外出自粛を続けたいと思います。皆さまにおかれましても、感染防止に努め、気を付けてお過ごしくださいますようお願い致します。
さて、五月のGW週にレコードの整理をしていた際、1枚のCDが目に留まりました。昔から洋楽の苦手な私が好んで聴いていたのが、ニニ・ロッソの「夜空のトランペット」でした。ロッソは、19歳でトランペットを学び始め、1961年「夕焼けのトランペット」でデビューし、1964年に発表した「夜空のトランペット」は、母国イタリア、ヨーロッパ全土、そして日本においてミリオンセラーを記録しました。ロッソの奏でるトランペットの音色は、優しく、あるときは力強く、哀愁に満ちており、“トランペットの誌人”と呼ばれるようになりました。また、彼は、作曲家としても映画音楽やジャズの分野で幅広く活躍し、「太陽がいっぱい」「夜霧のしのび逢い」など数多くの名曲をヒットさせています。
ロッソと日本の関りですが、彼は親日家として知られており、68歳で亡くなるまで28回も来日し、「竹田の子守唄」「あざみの歌」など数多くの日本の民謡や歌謡曲を取り上げています。また、日本テレビ系列で放映されていた「水曜ロードショー」のテーマ曲の「水曜日の夜」(1976)は、ロッソが来日した際に書き上げた作品です。夕陽に染まるヨットハーバーを背景に流れるロッソのトランペットの音色に懐かしむ方も多いのではないでしょうか。
ロッソが活躍した60~70年代において、これらの音楽は“ムード音楽”、“イージーリスニング”と呼ばれ、日本では大変な人気を博していました。毎年、ロッソやポール・モーリア、レイモン・ルフェーブルなど演奏家が日本を訪れ、日本全国で数多くの演奏会が開催されていました。私は、時間外に血液検査室で一人鏡検を行いながら、これらの音楽を楽しんだことが懐かしく思い出されます。
現在、新型コロナウィルス感染防止のため、外出自粛や行動制限などから自宅で過ごされる時間が多くなっています。私は、久しぶりにロッソが奏でる哀愁の音色に接することで、乾いてしまっていた心が満たされるように感じました。皆さまにおかれましても“心のオアシス“を見つけて頂ければ幸いです。
“トランペットの誌人”ニニ・ロッソが奏でる
夜空のトランペット
(イラスト.唐仁原彩瑛さん)
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
細胞編は、骨髄像において類似細胞を出題しました。なかには正常型と異なる形態を示すものもあり、それがどのような状況にあるのかも推測する必要があります。
症例編は、僅かな検査所見ですが、光顕的診断に至るまでの必要な検査や形態所見について考えて下さい。また、鑑別を要する疾患とその鑑別ポイントについても考えてみて下さい。
骨髄の細胞集団の同定を行なって下さい。
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えて下さい。
【小児.男児】
WBC4,100/μL、RBC248万/μL、Hb6.8g/dL、Ht21.2%、PLT4.9万/μL、NCC11.6万/μL、LD4620U/L、AST101U/L、Ferritin486.0ng/mL
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-PO.1000
BM-PAS.1000
問題 1
今回は、骨髄像において類似する細胞を提示しました。これらには、骨髄転移性腫瘍(骨髄癌腫)が含まれますのでしっかり区分する必要があります。A.とB.は多核、B.とC.では細胞の集団が類似しています。
【正答】
A. 破骨細胞、B. 転移性移行上皮癌細胞、C. 造骨細胞、D. 転移性腺癌細胞
【解説】
A. 破骨細胞で、通常はほぼ円形状で100μm大に達します。大小の核が複数含まれ、クロマチンは繊細網状で青白い核小体を認めます。細胞質には微細から粗大なアズール顆粒を認めます。巨核球に類似してますが、正常の巨核球は、複雑な分葉を示すことがあっても多核にはならないことと核質が異なります。
B. 膀胱原発の移行上皮癌の症例です。結合性の異型細胞がみられ、円形から紡錘形の核は偏在性を有し、クロマチンはやや繊細密で、青染性の核小体が不明瞭ながら2~3個認められます。細胞質は乏しく多稜形*を示し、その一端は有尾状に伸びています。類似するA.とは、核質、細胞質の状態が異なります。(*緻密な岩肌を思わせる様相:細胞診用語)
C. 細胞径32μm大の造骨細胞が集合してみられます。楕円状の核は偏在し、クロマチンは繊細で青染する核小体を有し、細胞質は好塩基性で、核から離れた位置にクリアゾーンがみられます。形質細胞に類似してますが、形質細胞は核質が粗荒で、核周にクリアゾーン(ゴルジ装置相当)がみられることが異なります。通常は孤立性で出現しますが、集合した場合は、D.のがん細胞との鑑別が必要となり、上皮性結合などを示さないことが異なる所見と思われます。
D. 胃原発の転移性腺癌の症例です。血液細胞に比べ、大型でN/C比が高く、上皮性結合をなして出現しています。これらの細胞質は微細空胞状(レース状)、核は細胞質に対して偏在性で、多くは細胞質と重なり合う変化(merge)がみられます。通常、消化器原発の腺癌細胞は、粘液物質に対してPAS染色が強度のびまん性陽性を呈することが多いようです。
問題 2
小児例で、二ヵ月前より全身倦怠感、顔色不良を認め、精査のため入院されました。画像検査で、頭部CT、MRIで左副鼻腔に腫瘤を認め、末梢血には芽球様を0.5%認めました。
【解説】
(BM-MG.1000)
(BM-MG.1000)
(BM-PO.1000 )
(BM-PAS.1000)
A.[BM-MG.1000] 骨髄はほぼ正形成、細胞径20μm大でほぼ円形状核、中等度好塩基性の細胞質に空胞を有する異型細胞が94%と著増していました。
B.[BM-MG.1000] 30μm大の異型細胞もみられ、クロマチン網工は粗顆粒状で核小体が一部に認められるようです。
C.[BM-PO.1000] 異型細胞はPO染色に陰性、一部の紡錘形~有尾状の細胞質は中等度の好塩基性を認めます。EST染色は陰性でした。
D.[BM-PAS.1000] 異型細胞は、PAS染色で細胞質周辺部に顆粒状や塊状の強陽性がみられます。免疫染色では、非上皮性腫瘍マーカーのdesmin、myoglobinが陽性でした。
【臨床診断】
大型な円形核の異型細胞は、単核~三核で、有尾状の細胞質には打ち抜き状の空胞を有し、PAS染色が強陽性を示しました。左副鼻腔腫瘤、そしてLDや血清フエリチンの高値から骨髄転移性腫瘍が疑われ、免疫染色では、非上皮性腫瘍マーカーのデスミン、ミオグロビンが陽性を示したことから、左副鼻腔原発の転移性横紋筋肉腫と診断されました。本型の異型細胞は、単核から多核で、細胞質の空胞や有尾状の突起を認め、PAS染色の強陽性が特徴のようです。形態的にはAML-M5に類似しますが、M5のクロマチン網工は、粗網状で明瞭な核小体を有し、EST染色(NaF阻害)が強陽性を示すことが異なる所見のよう です。
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