第108回 「マンスリー形態マガジン」 2020年4月号

『がんばれ日本! 負けるな日本人!!』


  4月7日に安倍晋三首相から緊急事態宣言が発令され、4月8日から7都府県で施行されました。現在、国内において新型コロナウイルス(COVID-19)感染者数は、空港の検疫やチャーター機での帰国者を含め5000名を超え、4月9日の感染者数は、37都道府県で576名の感染者が確認されています。また、私が住む福岡県でも、3月末から感染者が急増し、遂に220名を超えました。
  私たちは、この目に見えない厄介な相手と戦うためには、3つの密(密閉、密集、密接)を避け、不要不急の外出を控えることで人と人との接触機会を削減して、感染の拡大を防ぐことが重要です。また、日々の生活の中で大切なことは、外出時のマスク着用と帰宅の際には十分な手洗い、うがいなどを行うことです。このコラムをご覧になっている皆さまの多くは、医療機関に従事されていらっしゃいますが、この新型コロナウイルス感染症治療の最前線に携わっている方におかれましては、日々の激務大変お疲れ様です。
  先日、東京の知人より連絡があり、東京ではマスクやアルコール消毒薬だけではなく、トイレットペーパーやカップ麺などの保存食の買い占めが始まっていると連絡を頂きました。福岡では、そのようなことは見受けられませんが、必要とされている方の手元に届かないかを危惧しています。やはり、“私は”ではなく、“私たちは”と考え、助け合うことが大事と思います。
  私たちは、令和の時代のこの新たな疫病と正面から向き合い、戦わなければなりませんが、日本人は、これまでもさまざまな苦難を乗り越えてきました。それは、皆が助け合うこと、分け与えること、思いやることなど日本人のDNAに深く刻まれている相互扶助の精神によるものと思われます。まだ、出口は見えていませんが、必ず勝利することを願いながら、私も微力ながら皆さまと一緒に戦っていきたいと思います。

NHK新型コロナウィルス 特設サイトより引用)

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一


著作権について

今回のねらい

  細胞編は、骨髄像において鑑別を要する顆粒球系細胞を出題しました。

分化・成熟の過程を認識しながらの鑑別になりますが、新しいねらいとして幼若型顆粒球における成熟乖離と偽ペルゲル核異常について考えてみたいと思います。
  症例編は、僅かな検査所見ですが、光顕的診断に至るまでの必要な検査や形態所見について考えて下さい。また、鑑別を要する疾患とその 鑑別ポイントについても考えてみて下さい。

問題

骨髄の細胞同定を行なって下さい。

1-1<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。

  • BM-MG.1000

1-2<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。

  • BM-MG.1000

1-3<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。

  • BM-MG.1000

1-4<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。

  • BM-MG.1000

この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えて下さい。

2-1この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えて下さい。

【20歳代.女性】 主訴:月経過多
WBC120,700/μL、RBC180万/μL、Hb5.4g/dL、Ht16.5%、PLT3.2万/μL、NCC10.2万/μL

  • PB-MG.100

  • BM-MG.400

  • BM-MG.1000

  • BM-PO.1000

解答・解説

問題 1

今回は、骨髄像における顆粒球系と類似細胞の同定に挑戦します。全般に顆粒が少ないために核質所見の捉え方がポイントになり、周囲に押された細胞については、本来の大きさを推測することになります。核幅の比は小宮正文先生の考案(1988)を参考にしました。また、本症例は、経過観察中のものでMDSなどではありません。

【正答】
A.前単球  B-1.前骨髄球、2.桿状核球  C-1.前骨髄球、2.桿状核球、3.後骨髄球
D-1.骨髄球、2.前骨髄球、3.骨髄球(偽ペルゲル核異常)

【解説】

A.細胞径18μm大、核は曲がった楕円状でやや不整がみられ偏在傾向にあります。核網工はやや繊細で複数の核小体もみられるようです。細胞質には微細顆粒を認めることから前単球と思われます。

B-1.細胞径16μm大、核は楕円状で不整は軽度、偏在傾向にあります。核網工は粗顆粒状で一部に核小体を認めます。A.との大きな違いは核質と思われます。2.細胞径13μm大、核の短径が長径の1/3未満の長さ(棒状)で、クロマチンの結節を認めることから桿状核球と思われます。

C-1.細胞径16μm大、核は楕円状で不整はなく偏在傾向にあり、周囲の赤血球に押され、本来より萎縮してみえるようです。核網工は、粗顆粒状でクロマチンの結節を認めないことから前骨髄球と思われます。一見、後骨髄球を思わせますが、それより大きく細胞質の軽度の好塩基性と核網工をポイントにしました。
2.細胞径12μm大、棒状でクロマチン結節も僅かにみられることから桿状核球と思われます。
3.細胞径14μm大、核は陥没し偏在傾向にあります。核網工はやや粗荒で、核の短径が長径の1/3以上の長さから後骨髄球と思われます。

D-1.細胞径15μm大、核は類円形で核網工は粗荒でやや偏在傾向にあります。核幅の短径が長径の1/2以上の長さと好酸性の細胞質の色調から骨髄球と思われます。2.細胞径17μm大、核は類円形で偏在傾向にあり、核網工は粗顆粒状で核小体は認められるようです。細胞質は、好塩基性が残り僅かに顆粒を有していることから前骨髄球と思われます。3.細胞径14~15μm大、核はほぼ円形でクロマチンの凝集が強度のようです。
形状から骨髄球(D-1)を思わせますが、核質所見が合致しません。従って、好中球に遭遇する偽ペルゲル核異常が骨髄球に起ったものではないかと思われます。

問題 2

20歳代の女性、月経過多で来院され、貧血、血小板数減少、および白血球数の著増(芽球の増加)より骨髄穿刺が施行されました。

【解説】

(PB-MG.1000)

(BM-MG.1000)

(BM-PO.1000 )

(BM-EST二重.1000 )

A.[PB-MG.1000] 白血球数著増(120,700/μL)のもと芽球は95%と増加していました。芽球は顕著な核形不整や明瞭な核小体を有し、アウエル小体(矢印)も認めます。芽球には小さなアズール顆粒を有するものがみられました。
B.[BM-MG.1000] 骨髄は低形成気味で過凝固状態でありました。芽球は56.2%でアウエル小体(矢印)や顆粒球系の分化過程がみられました。骨髄の芽球には微細顆粒を有するものがみられましたが、4時と10時方向は核網工の粗顆粒状、粗大顆粒を有することから前骨髄球と思われます。
C.[BM-PO.1000] 骨髄の芽球はPO染色に3%以上が陽性でした(矢印)。
D.[BM-EST二重.1000] 骨髄の芽球はEST二重染色でブチレートに陰性でクロロアセテートに強陽性でした。

【臨床診断】
末梢血や骨髄に増加する芽球は、アウエル小体を有し、PO染色が3%以上の陽性、クロロアセテート陽性により骨髄芽球と判定され、AMLが疑われました。そして骨髄の芽球が90%未満(実際は56.2%)であったことからAMLの分化型(M2)と診断されました。尚、染色体ならびに遺伝子異常は認めませんでした。
AMLでは、分化型のM2になるほど芽球に顆粒を有する頻度が高くなるため、前骨髄球との鑑別が求められます。経験的に芽球は前骨髄球に比べ、核の偏在性は少なく、核網工の繊細さ、微細顆粒を有する所見をポイントにしています。また、M2には、若年者で8;21転座/RUNX1-RUNX1T1遺伝子変異がM2の18~40%にみられるため、その形態的特徴を認識することも大事です。

 

これから先のページでは、医療関係者の方々を対象に医療機器・体外診断薬等の製品に関する情報を提供しております。当社製品を適正に使用していただくことを目的としており、一部の情報では専門的な用語を使用しております。
一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。

医療関係者の方は、次のページへお進みください。
(お手数ですが、「進む」ボタンのクリックをお願いします)