2019年12月、第一生命保険(株)が主催する第71回「保健文化賞」授賞式が、明治記念館で執り行われ、翌日皇居で天皇皇后両陛下の拝謁(はいえつ)を賜る儀式が行われました。この「保健文化賞」は、1950年に創立され、わが国の保健衛生の向上に取り組む団体・個人に感謝と敬意を捧げる賞です。第71回を迎えた今回は、団体10件、個人5名が決定し、その中に福岡にあるNPO法人「癒し憩いネットワーク」も受賞されました。「癒し憩いネットワーク」では、写真や動画を用いた“癒し・憩い”のコンテンツを制作し、数々の美しい画像を発信しており、患者やその家族の人生の質(Quality of Life:QOL)の向上に貢献したことが受賞の理由となりました。
法人の代表を務められている牛尾恭輔先生は、1998年東京の国立がんセンターから故郷の福岡の九州がんセンターに赴任され、主に消化管の画像診断に従事されていました。その中で、さまざまな患者さんを通して医師として力の弱さ、医療の限界も身をもって感じられたそうです。牛尾先生は、そこから患者さんのQuality of Life(QOL)の向上を考えられ、QOLの向上は、“がん”の患者さんや慢性疾患で長期の治療が必要な方々とその家族の方々、また、医療従事者の方々にも必要であることを学ばれ、18年前からQOLの向上を目指す「癒し憩い画像データベース」の構築を開始されました。このコンテンツでは、日本の各地の美しい景色、誰もが持つ心の原風景、日常のふとした風情などの写真や動画がどなたでも閲覧でき、九州がんセンターでは外来や病棟のベッドサイドで利用が可能となっています。
私は、2004年から定年までの4年間九州がんセンターに在職し、その間「血液腫瘍画像データベース」を構築し、インターネットで国内外に発信しましたが、これは牛尾先生の依頼を受けて製作したものです。このデータベースを構築したことは、大変光栄なことであり、牛尾先生の心優しい包容力と行動力には今でも感謝の念を忘れておりません。また、牛尾先生は、今でもご自身で日本各地の風景収集に飛び回っておられ、日々データベースの構築を行っていらっしゃるそうです。みなさまも一度「癒し憩い画像データベース」にお立ち寄りください。
第71回「保健文化賞」を受賞される牛尾恭輔先生(右)
癒し憩い画像データベース https://iyashi-ikoi.net/
血液腫瘍データベース http://www.midb.jp/blood_db/
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
今回は、細胞同定と症例検討を提示しました。
細胞編は、骨髄像から類似細胞の鑑別に挑戦します。
症例編は、僅かな検査所見ですが、光顕的診断に至るまでの必要な検査や形態所見について考えて下さい。
腫瘍性のみならず感染症などで重症度を推測する形態像については日頃から眼力を養っておく必要があります。
骨髄の細胞同定を行なって下さい。
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。
【乳児.男児】 主訴:発熱、発汗
WBC50,000/μL、RBC325万/μL、Hb8.2g/dL、Ht24.9%、PLT9.7万/μL、NCC50.6万/μL、LD339U/L、Fbg187mg/dL、FDP12.1μg/mL、CRP11.6mg/dL
PB-MG.400
BM-MG.400
BM-MG.600
BM-MG.1000
問題 1
今回は、骨髄像において類似する細胞の同定に挑戦します。
【正答】
A-1.前骨髄球、2.細網細胞 B-1.多染性赤芽球、2.リンパ球、3.形質細胞 C-1.2.形質細胞
D-1.前骨髄球、2.桿状核球、3.骨髄巨核球(二核)、4.桿状核球
【解説】
A-1.細胞径18μm大、楕円状核は偏在気味でクロマチン網工は粗網状、細胞質は辺縁部に好塩基性がみられ、一次顆粒を有することから前骨髄球と思われます。2.1.の細胞より大きく、偏在した円形状の核はクロマチン網工が繊細、細胞質は不整で好塩基性が弱く、粗大顆粒を有することから細網細胞と思われます。
B-1. 細胞径11μm大、多染性の細胞質に円形核は中心性で、クロマチン網工は凝集塊状から多染性赤芽球と思われます。2.同大でN/C比は高く、核質は均一であることから小リンパ球と思われます。3.細胞質は一部がちぎれ、強好塩基性で偏在傾向の円形核に核周明庭や空胞がみられることから形質細胞と思われます。
C-1.2.細胞径13μm大、どちらの細胞も好塩基性は強度、円形核の周囲には僅かながら明庭がみられ、空胞を有することから形質細胞と思われます。
D-1.細胞径20μm大、楕円状核は偏在気味でクロマチン網工は粗顆粒状、細胞質辺縁部に好塩基性がみられ、豊富な一次顆粒を有することから前骨髄球と思われます。2.4.細胞径14μm大で桿状核球と思われます。
2.核の最小幅がやや広いようですが、クロマチン網工には結節状がみられ、4.と同様として判定し桿状核球と思われます。3.細胞径24μmの大型、二個の核を有することから核分裂異常が推測され、好塩基性の細胞質は突起を有しており巨核球と思われます。血小板の付着がみられることから血小板産生を思わせますが、細胞質には好塩基性でアズール顆粒も存在しないことから血小板産生能はみられないと判定し、偶然に付着したものと思われます。
問題 2
乳児の末梢血と骨髄標本のMG染色です。発熱、発疹(体幹・四肢・顔面)を主訴に来院ました。白血球の著増(50,000/μL)、貧血、血小板減少がみられ、CRP高値(11.6mg/dL)、DIC所見もみられました。
【解説】
(PB-MG.400)
(BM-MG.400)
(BM-EST.600)
(BM-MG.1000)
A.[PB-MG.400] 幼若顆粒球4%、好中球91%(中毒性顆粒認める)、赤芽球1/100w
B.[BM-MG.400] 骨髄は過形成、M/E比3.45で顆粒球系がやや優位であった。
C.[BM-EST.600]芽球は2%、顆粒球系に一部異形成(二核・輪状核・顆粒分布)を認めた。
D.[BM-MG.1000] 幼若顆粒球から成熟型にかけて中毒性顆粒を多く認めた。
【検査】
血液培養でグラム陽性球菌のStaphylocossus aureusが検出された。
【臨床診断】
末梢血の好中球増加や骨髄の顆粒球系優位がみられた中毒性顆粒がポイントとなり、好中球の著増から細菌感染症を疑い、Staphylocossus aureusが検出されたことから全身にわたる症状も加味し、細菌感染による全身性感染症(敗血症)と診断されました。肺炎によるCRPの高値、またDIC所見がみられましたが、抗菌剤で軽快し、中毒性顆粒や軽度の異形成は消失しました。
本例は、好中球の中毒性顆粒が主でしたが、好中球の空胞は、3個以上みられる場合には重症度に関係するとされ、多くの症例で血液培養が陽性となるともいわれます(手登根氏.2014)。
血球数減少は、本例が3ヵ月の乳児であったことから、この時期に起る酸素飽和度の上昇、また組織への酸素供給量の増加による一過性の血球減少も考慮する必要があると思われます。
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