昨年、令和の時代を迎えましたが、平成の時代と同様に災害が絶えない日々が続いています。2019年10月31日未明に発生した火災によって世界遺産として名高い「首里城」が、正殿や南殿など主要な建造物 7棟、計4,200平米が全焼し、収蔵されている文化財1510点のうち、401点が焼失しました。首里城は、国営記念公園、都市公園として世界の人々からも親しまれ、年間約200万人が訪れる沖縄県のシンボルです。私も3回ほど訪れましたが、復元された首里城は、沖縄の青い空と朱色の沖縄瓦のコントラストが素晴らしく、当時の「琉球王国」の栄華を物語る場所となっていました。
首里城は、約450年間続いた「琉球王国」の政治や外交・文化の中心地として栄えていましたが、これまでに4度ほど焼失しており、その都度、再建がされました。1945年の沖縄戦では、数多くの砲撃を受け、5月27日に焼失し、また、その周辺の街並みや文化財が破壊されました。首里城の再建は、1958年、守礼門の再建に始まり、1980年頃から本格的な復元工事が開始され、2000年には、首里城跡として世界遺産に登録されました。
首里城は、歴史的な背景から中国と日本の築城文化を融合した独特の建築様式とされ、沖縄には、他にも勝連(かつれん)城跡、座喜味(ざきみずく)城跡、中城(なかぐすく)城跡、今帰仁城(なきじん)跡などを訪れることが出来ます。また、沖縄では城のことを“グスク“と呼びますが、その由来は琉球王国の成立前のグスク・三山時代にさかのぼるようです。
首里城火災から2ヵ月後、首里城公園の一部で入場が再開され、守礼門から歓会門までは開放されているそうです。尚、首里城の修復、再建には、約百数十億円が必要とされているようですが、一日も早い再建計画が策定され、復元されることを強く望みます。また、蘇った首里城が、“マハエ(真南風)”に乗って私たちに幸せを運んでくれることを待ち続けたいと思います。
焼失前の首里城の正殿・全景
(写真提供:津崎このみさん.2019.9.10)
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
今回は、細胞同定と症例検討を提示しました。
細胞編は、骨髄像から類似細胞の鑑別に挑戦します。
症例編は、僅かな検査所見ですが、光顕的診断に至るまでの必要な検査や形態所見について考えて下さい。
染色体異常や遺伝子異常が絡む形態所見は、日頃より習得しておくことが重要です。
骨髄の細胞同定を行ってください
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
BM-MG.1000
この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。
【所見】
【60~65歳.男性】主訴:全身倦怠感あり、リンパ節腫脹(-)、PO染色(-)
WBC9,400/μL,RBC292万/μL,Hb10.2g/dL,Ht27.0%,PLT4.4万/μL,NCC15.6万/μL(顆粒球系10%)
PB-MG.400
BM-MG/EST.400
BM-MG.1000
BM-MG.1000/BM-ACP.1000
問題 1
今回は、骨髄像において類似する細胞の同定に挑戦します。
【正答】
A.骨髄芽球、B.前単球、C.骨髄球、D.単球、E.前赤芽球、F.前骨髄球、G.細網細胞、H.幼若好塩基球
【解説】
A.細胞径15μm、円形核は偏在、クロマチン網工は繊細で核小体を有し、細胞質には顆粒を認めないことから骨髄芽球と思われます。
B.細胞径16μm、類円形核は軽度の不整がみられ、クロマチン網工は繊細網状で核小体は不明瞭、細胞質は、弱好塩基性で微細顆粒を有することから前単球と思われます。前骨髄球(F)との鑑別を要します。
C.細胞径16μm、円形核のクロマチン網工は粗顆粒状、細胞質は好酸性で小さな顆粒を有します。核網と好酸性の細胞質から骨髄球と思われます。
D.細胞径18μm大、類円形核は偏在、クロマチン網工は粗荒のようで一部に縦に切れ込み(○印)がみられ、灰青色の細胞質は不整で微細顆粒を認めます。リンパ球を思わせますが、核内への不整や細胞質の不整や微細顆粒から単球に同定しました。
E.細胞径22μm大、円形核は核中心性でクロマチン網工は粗網状、核小体は不明瞭ながら存在は確認されそうです。好塩基性の細胞質は、紺青色で辺縁には舌状の突起物を認めることから前赤芽球と思われます。
F.細胞径18μm大、類円形核はほぼ中央に位置し、クロマチン網工は粗顆粒状でスカスカの状態です。
好塩基性の細胞質には僅かながら顆粒を認めることから前骨髄球と思われます。
G.細胞径21μm大、円形核は偏在、クロマチン網工は繊細で核小体は不明瞭、豊富な細胞質は弱好塩基性で大小の顆粒を認めます。前骨髄球を思わせますが、核網の繊細さが合致しないことから細網細胞(フエラタ細胞)と思われます。
H.細胞径15μm大、円形核は偏在、クロマチン網工は粗荒で均一で淡青色の細胞質には粗大な紫褐色の顆粒を核の上方にも一部認めることから幼若型の好塩基球と思われます。
問題 2
60歳代の末梢血と骨髄標本のMG染色です。全身倦怠感で来院された患者さんで、正球性高色素性貧血と血小板数の減少を認めました。
【解説】
(PB-MG.400)
(BM-MG/EST.400)
(BM-MG.1000)
(BM-MG.1000)
A.[PB-MG.400] 末梢血に単球の増加(35%)を認めました。
B.[BM-MG.400] 骨髄は正形成で単球系の分化過程がみられ、顆粒球系は10%未満でした。
C.[BM-EST.400]骨髄 の単球系は、ブチレートEST染色に陽性でした。
D.[BM-MG.1000] 芽球3個と顆粒を有する前単球がみられます。
E.[BM-MG.1000] 単球系に紛れ大型で核は偏在し、豊富な細胞質には紫褐色の粗大な顆粒を有する幼若好酸球(矢印)を8%認めました。顆粒の大きさと色調から幼若というよりも異常型と捉え、この異常好酸球が診断を裏づけます。
【形態診断】
末梢血、骨髄ともに単球系が優位、骨髄ではその分化型の急性単球性白血病を考えます。幼若好酸球と顆粒異常を有する異常の好酸球が混在していることから16番逆位のAMLを考えました。
【臨床診断】
本例は、AML-M5bとして診断されましたが、異常好酸球がポイントとなり、後報告にinv(16)/CBFB-MYH11遺伝子変異が証明されたことで「反復性(特定の)遺伝子異常を伴うAML」として診断されました。
本染色体ならびに遺伝子異常は、AML-M4eosinophiliaに特徴とされてましたが、形態的にはAML-M2やMDS、稀にM5bで経験したことがあり、WHO分類(2001)ではt(8;21)/RUNX1-RUNX1T1やt(15;17)/PML-RARAなどと共に反復性遺伝子異常を伴うAMLの範疇になっているようです。何よりも末梢血には出現しない“異常好酸球”を骨髄で見落とさないことが大事で、その割合にはばらつきがありますので形態所見がポイントになります。
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