2012年12月07日
「平成24年度日本臨床検査技師会 首都圏支部(第1回)・関甲信支部(第49回)医学検査学会」報告ページを掲載しました。
- その他
会場となったワークピア横浜は、横浜みなとみらいの山下公園にほど近い場所にあり、学会当日は美しい秋空で、穏やかな海風が吹いておりました。
ランチョンセミナーでは、演者に宮地勇人先生(東海大学医学部)を、座長に山崎家春先生(関東中央病院)をお迎えし、「共用可能な基準範囲の設定に向けて」と題してご講演いただきました。講演では、共用基準範囲設定ワーキンググループ(WG)の概要について分かりやすいご紹介だけでなく、血液検査の測定項目におけるMCV(平均赤血球体積)やMCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)における機械間差についても詳細にお話しいただきました。時間の都合により、質疑応答を設けることができなかったのですが、講演後も先生へのご質問待ちの方が多数いらっしゃるなど、講演内容への関心の高さを感じました。ご参加いただきまして、ありがとうございました。
【 平成24年度日本臨床検査技師会 首都圏支部(第1回)・関甲信支部(第49回)医学検査学会
ベックマン・コールター ランチョンセミナー10 】
ベックマン・コールター ランチョンセミナー10 】
- 日 時
- 2012年11月4日(日)12:15~13:05
- 会 場
- ワークピア横浜 3階いちょう(第5会場) MAP
- 演 題
- 共用可能な基準範囲の設定に向けて
- 演 者
- 宮地 勇人 先生
東海大学医学部基盤診療学系 臨床検査学 教授 - 座 長
- 山崎 家春 先生
関東中央病院 臨床検査部 副部長 - 内 容
- 臨床検査値の基準範囲の設定は、従来から様々な活動が行われて来た。2011年10月、主要な研究調査の成果に基づき、全国で共用可能な基準範囲を設定する共用基準範囲設定ワーキンググループ(WG)が設置された。その目的は、これまでの調査研究データおよび各施設で使用されている臨床検査値基準範囲に基づき、共用可能な基準範囲を設定し、各種機関団体に提案することにある。本WGの構成員は、従来からの調査研究活動(日本臨床衛生検査技師会、IFCC[アジア地域]プロジェクト、福岡県五病院会)において中心的役割を担ってきた委員および学会連絡委員(日本臨床検査医学会、日本臨床化学会、日本検査血液学会、日本臨床衛生技師会)である。
共用基準範囲の設定におけるデータソースは上記の主要3研究調査で、検査項目は、標準化対応または全国的に測定値が揃っていると見なされる末梢血検査(CBC)8項目、生化学検査27項目、免疫検査6項目の計41項目である。これらのデータは、年齢・性別構成を考慮して、方法間差・機種間差および正確さの確認の上、統計学的に妥当な形で統合され、基準個体の総データ数は6,345例となった。
基準範囲の設定は、検査値の変動要因を解析した上で、性別および性別・年代別に行った。まず、層別化の必要性の有無を検討した。性差、年代差、調査間差の大きさは、3レベル枝分かれ分散分析(3N-ANOVA)法により、標準偏差(SD)に相当する形で表し、その純個体間差SDに対する割合(SDR)を求めた。層別化を考慮すべき“カテゴリー間差”は、SDR≧0.3の場合とし、男女別の基準範囲を設定する基準は、性差SDR≧0.5とした。基準範囲は、対象年齢を20?60歳として、男性、女性、男女の3群、および性別・年代別(10歳代毎)に、調整Box-Coxべき乗変換式を用いたパラメトリック法により、生化学検査や血液検査データ異常を指標とした潜在異常値除外法(latent abnormal values exclusion: LAVE)による2次除外を用いて設定を行った。また、年齢45歳で層別化し、年齢層で基準範囲の上下限が大きく異なる項目を明確化した。
本WGの研究成果としての共用基準範囲は、全国的に広く臨床利用するために必要な作業を検討し、各種機関団体に提案、意見聴取する必要がある。その取り組みのため、2012年に日本臨床検査標準協議会に臨床検査基準値検討委員会が設置された。
小生は、検査血液学の立場から本WGに参加した。MCV、MCHCでの機種間差が改めて確認され、それを認識した上で、基準範囲を利用することとなった。本講演では、共用基準範囲設定に向けた活動の概要を説明し、検査血液学の立場からの視点での課題と議論を紹介し、今後の展望について言及する。