2012年10月23日
「平成24年度日本臨床衛生検査技師会 九州支部医学検査学会(第47回)」詳細ページを掲載しました。
- その他
- 日 時
- 2012年11月17日(土) 12:00 ~ 13:00
- 会 場
- 宮崎観光ホテル 3階 第2会場 MAP
- 演 題
- 3調査の統合データを用いた共用基準範囲の設定
- 演 者
- 堀田 多恵子 先生
九州大学病院 検査部 技師長 - 座 長
- 渡邊 正一
ベックマン・コールター ダイアグノスティックス学術部門長 - 内 容
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[背景]
臨床検査値を判断するうえで基準範囲は重要であるが、国内で共通基準範囲と認識されるものはなく、各医療施設は様々な基準範囲を使用して診療を行っているのが現状である。我々は日本臨床検査技師会(以下日臨技)、IFCC血漿蛋白・基準範囲判断値委員会(以下IFCC)、福岡県五病院会(以下九州)の3つのプロジェクトから得られた基準個体の測定値のデータを、年齢・性別を考慮して、再構成し統計学的に妥当な形で統合した。その総データ数は6345例をもとに、末梢血検査(CBC)8項目、生化学検査27項目、免疫検査6項目を対象に、基準範囲の設定を試みた。[対象]
3プロジェクトの基準個体:
日臨技は測定値の精確性が確保された基幹施設(約160)のボランティア5700人余り。問診票による除外後の基準個体は4723人。
IFCC は国際研究プロジェクト:
「臨床検査値の地域差と探索と共有基準範囲の設定」の日本人基準個体1988人。
九州は福岡県五病院会(福岡県内の4大学病院と1市中総合病院)設定の福岡県共有基準範囲の10年目の検証のためのボランティア2082人。項目:
CBC:RBC, Hb, Ht, WBC, PLT, MCV, MCH, MCHC
化学:TP, Alb, UN, CRE, UA, TG, CHO, HDL-C, LDL-C
酵素:AST, ALT, LD, ALP, CK, ChE, Amy
電解質:Na, K, Cl, Ca, P, Mg, Fe
糖関連:Glu, HbA1c
免疫:CRP, IgG, IgA, IgM, C3, C4[方法]
3プロジェクト統合の妥当性の確認
3レベル枝分かれ分散分析(3N-ANOVA)法により、プロジェクト間差の大きさを標準偏差(SD)に相当する形で表し、その純個体間差SDに対する割合(SDR)を求めた。Naを除きSDR≦0.3であった。3プロジェクトの基準個体は、男女混合比は5:5に近づくように結果として4.3:5.7となった。年齢分布の20歳から60歳代を4サブグループとしてほぼ均等分布となるようにした。その結果基準個体は6345人(M:2733、F:3612)。各年代の内訳は20才代1675人(M:701、F:974)、30才代1707人(M:720、F:987)、40才代1646人(M:725、F:921)、50才代1317人(M:587、F:730)となった。[基準範囲]
男性、女性、男女の3通り、および10代毎の性別・年代別に、調整Box-Coxべき乗変換式を用いたパラメトリック法により、潜在異常値除外法(LAVE)を用いて設定を行った。
男女別、年齢別基準範囲の設定
男女別に基準範囲を分けて設定する基準を、性差SDR≧0.5とした。加齢に伴い上昇あるいは低下する項目、および女性では45歳付近より大きく変動する項目については45歳で層別化して検証を行った。[まとめ]
この基準範囲は、基準範囲共有化委員会が3つの基準範囲プロジェクトの基準個体データを再構成し、統計学的に妥当な形で統合し設定した基準範囲である。日本国内で広く認知され、国内の共通基準範囲として広く利用されるように、JCCLS(日本臨床検査標準協議会)からパブリックコメントを求めるなど、利用促進のための活動に展開していく予定である。(抄録より抜粋)