2012年10月09日
「平成24年度日本臨床衛生検査技師会 中部圏支部医学検査学会(第51回)」詳細ページを掲載しました。
- その他
【 平成24年度日本臨床衛生検査技師会 中部圏支部医学検査学会(第51回) ランチョンセミナー 】
- 日 時
- 2012年11月3日(土) 12:05~12:50
- 会 場
- セラミックパークMINO (岐阜県多治見市) MAP
小会議室 (第3会場) - 演 題
- 基準範囲の最近の動向
~3調査の統合基準範囲の設定と普及に向けた動き~ - 演 者
- 山本慶和先生
天理医療大学 臨床検査学科 - 座 長
- 藤田孝先生
藤田保健衛生大学病院 臨床検査部 - 内 容
- 平成23年に国内の大規模な基準範囲が、日臨技・検査値標準化委員会(医学検査
60(4):31-44(2011))より発表された。また、日本臨床検査医学会より医学部の学生用共通基準範囲が(2010)設定された。
このような状況を踏まえ、国内の統一した基準範囲を設定する環境が整いつつある認識の下、九州大学の康教授を中心にした共用基準範囲設定WGが2011年9月に発足した。
このWGは、日本臨床検査医学会、日本臨床衛生検査技師会、日本臨床化学会、日本検査血液学会およびIFCCからなる協議会形式を取っている。
このWGでは過去に大規模な基準範囲が報告された福岡県五病院会(臨床化学30:171-184 (2001))、IFCCアジア地区プロジェクト(Clin Chem 54:356-365 (2008))と日臨技の基準範囲を加えた3調査から共用できる基準範囲の設定を検討することとなった。
3調査の測定値は基本的には正確さが確認された方法に基づいていることより、3調査データを統合して基準範囲を設定する運びとなった。
対象は末梢血検査(CBC)8項目、生化学検査27項目、免疫検査6項目とした。
【3調査のソースデータ】
1)日臨技・検査値標準化部会の下に「共有基準範囲設定WG」が設定された。全国の健常人ボランティア5700人余りの基準固体を正確さが確保された(トレーサビリティ体系)105の基幹施設によって測定された。さらにデータの精確さ確保するために、施設間差(BA%)、施設内変動(CA%)を基準にしたデータおよび検査診断上の異常値レベル、貧血、炎症に関連する異常値を除外した。これらの除外基準より対象となった基準固体は4723人となった。
2)IFCCプロジェクトの国際研究プロジェクトはアジア7カ国17施設、日本12地区17大学病院、30一般病院、2県技師会が参加した。基準個体は、北海道から沖縄県の大学、病院、技師会より12地区(100~160人/地区)の日本国内健常人ボランティア1988人であった。
3)福岡県五病院会は福岡県内の4大学病院と1市中総合病院の構成で組織され、福岡県医師会と福岡県臨床検査技師会との連携のもと標準化を推進している。基準個体は2004年の県内の健常人ボランティア2082人であった。
【統合手順】
1)調査間差、性差、年齢間差を3レベル枝分かれ分散分析(3N-ANOVA)法にて確認した。
2)方法間差、機種間差(Alb、HDL-C、ASTおよびCBC)を同様に確認した。3)この3調査から得られた基準個体の測定値が、年齢、性別構成を考慮して、統計学的に妥当な形で統合された(6345例:表)。
【基準範囲の設定基準】
1)基準範囲は対象年齢を20~60才として、男性、女性、男女の3通り、および10代毎の性別・年代別に、調整Box-Coxべき乗変換式を用いたパラメトリック法により、潜在異常値除外法(LAVE)を用いて設定を行った。
2)LAVE処理する際、項目によって4つの2次除外基準を設けた。
3)性別、年齢別プロフィール図を作成した。
【今後の展望】
共用基準範囲設定WGのこの成果は、日本臨床化学会学術集会(平成24年9月6日盛岡市)に報告される。また、日本臨床検査標準化協議会(JCCLS)に基準範囲検討委員会が設置され、このWGのメンバーが参加する予定である。今回設定された基準範囲および日臨技が提示した基準範囲を吟味し共用基準範囲を設定して日本国内で広く認知され、その関連情報とともに、広く利用できるように、利用要件や設定値の確認法について提案を行ってゆく計画である。
(抄録より抜粋)