2018年6月14日掲載
(1) 血球計数装置におけるRetic. 測定の変遷
網赤血球は、脱核直後の赤血球を示したもので、赤血球内に残存した網状、顆粒状の構造物をニューメチレン青で染め出し、赤血球1,000個中における網赤血球の比率を算出します。Retic.測定における自動化は、1980年後半、臨床検査室でフローサイト メーター(以下FCM)の普及と共に始まりました。当時の血液検査においては、WBC、RBC、Hct、PLT、Diffなどそれぞれの測定項目について依頼を行っており、網赤血球数においても同様で依頼件数は非常に多く、視算法による網赤血球数算定には多くの時間を要し、Retic.測定の自動化が望まれていました。1980年代後半から、FCMは大型のセルソーター(EPICS C、EPICS V)から卓上タイプのアナライザー(EPICS Profile、 EPICS XL)が登場し、その中でRetic.測定の自動化の検討がなされ、多くの臨床検査室ではFCMを用いたRetic.測定が行われるようになりました。
FCM を用いた網赤血球の測定法は、赤血球内の網状、顆粒状などの構造物をチアゾールオレンジ(TO:Thiazole orange)、アクリジンオレンジ(AO:Acridine orange)などの蛍光色素試薬を用いて染色し、蛍光強度の違いから網赤血球と成熟赤血球を分別して網赤血球比率を算定しました。これにより、Retic.測定は血球計数測定と同様、自動測定を行うことが可能となり、TAT(turn around time)は大きく改善され、省力化が図られました。一方、FCMを用いたRetic.測定には、幾つかの課題が内在しており、これら の改善が必要となりました。以下に課題を示します。
これらの課題は、血球計数装置ではすでに日常的に行われ、解決されていますが、汎用FCMを使用する場合、それぞれの検査室で解決しなければならない課題でした。これらから臨床検査室では、血球計数と同時にRetic.測定が可能な分析装置の開発を要望するようになりました。
(2) コールターカウンターにおけるRetic.測定
コールターカウンターにおけるRetic. 測定の自動化は、1998年Coulter Gen・S SYSTEM (以下コールター Gen・S)の登場によって可能となりました。
コールター Gen・S では、血球計数測定(CBC)、白血球分類(Diff)、網赤血球数測定(Retic.)の同時測定が可能で、臨床検査室のおける効率化や測定データの標準化に大きく寄与しました。コールターGen・SにおけるRetic.測定法は、自動白血球分類法で開発されたVCSテクノロジーを用いて行われ、フローサイトメトリー方式によってニューメチレン青で染色した試料をフローセルに送り込み、1検体あたり32,768個の赤血球について3種類の測定シグナルを同時検出して三次元解析を行います。
網赤血球情報を取得する測定パラメーターは、体積情報(Volume)、電導度(Conductivity)、レーザー散乱光(Light Scatter)が用いられ、測定情報としては、測定値、スキャッタープロット図がリアルタイムに表示され、詳細な測定情報を提供します。
コールター Gen・S におけるRetic.測定フローは以下の通りです。
網赤血球数の算定では、細胞算定時に網赤血球の成熟度を5分画(Heilmeyer分類)していましたが、手技が煩雑であり、細胞判定に個人差が生じることから、検査室での実施は限定でした。一方、網赤血球数の自動測定時に取得される網赤血球情報は、体積情報、細胞内密度、散乱光情報などを用いて解析を行うため、新しい測定項目の表示が可能になりました。これらは、網赤血球体積や幼若網赤血球などの細胞解析情報で、臨床的にも有用な測定情報となりました。
次回は、引き続き血球計数におけるRetic.測定について解説します。
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