2018年1月16日掲載

Vol.19自動白血球分類の新たな展開(5)

CBCを語ろう Talk CBC 白血球分類の新たな展開(5)

セルポピュレーションデータ(Cell Population Data)を用いた異常検体の検出


 今回は、自動血球計数装置 UniCel DxHシリーズ(以下DxH)に搭載されたリサーチ項目セルポピュレーションデータ(Cell Population Data:以下CPD)を用いた異常検体の検出について解説します。
 CPDは、DxHの7種類の測定パラメータによって取得された細胞解析情報をそれぞれの細胞集団毎に示したもので、平均値(MEAN)と変動幅(SD)で表示され、好中球、リンパ球、単球、好酸球におけるCPDは56項目になります。このようにCPDは細胞集団における定量的な測定情報であり、細胞分布図(スキャッタープロット)における細胞集団の変化を客観的に表すことが出来ます。前号で記述しました通り、測定結果の判定にはスキャッタープロットを用いることが有効とされていますが、その判定は視覚的であり、検査室では、これらの利用頻度は限定的なものになっています。一方、CPDは異常細胞の出現によって正常とは異なるスキャッタープロットを形成する検体を定量的な測定データを用いて検出することが可能となります。


(1)CPDと目視法分類

 CPDは、それぞれの測定パラメータにおける細胞解析情報を細胞集団毎に示していますが、これらの測定データは、物理化学的に細胞の特性や形状を表したものです。CPD項目において、Volumeは細胞体積、Conductivityは細胞内密度(N/C比など)、レーザー散乱光のMedian Angle Light Scatter(以下MALS)では顆粒特性を示しています。一方、目視法による白血球分類は、細胞化学法を用いて細胞の鑑別を行っており、細胞の大きさ、形状、核や細胞質の特徴を捉えて細胞分類を行います。それぞれの分類法は、方法論は異なりますが、正確な細胞の鑑別を行うことから結果の判定は、類似する点も多く認められます。


 (2)CPD における基準範囲

 CPDを利用するためには、それぞれの施設で基準範囲を設定し、その範囲から変動が認められたCPD項目を確認することにより、異常細胞や病的細胞の検出や病態の把握などに利用することが可能です。現在、国内外ではCPD項目を用いたさまざまな検討が行われており、骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndromes)、リンパ系腫瘍、敗血症やマラリアの検出などについての研究がなされています。



 (3)CPDを用いた異常検体の検出

 CPDの活用法については、それぞれの細胞集団が正常領域から逸脱することでCPD値が変動することから、検体の異常を検出します。また、変動が認められたCPD項目を確認することで出現している異常細胞を推察することも可能です。



 このようにCPDは、従来にない細胞解析情報で定量的な測定情報として、異常検体の検出や病態の把握などが可能なリサーチ項目です。

 次回は、DxHにおけるCBC/Diff以外の測定チャネルについて解説します。


引用文献

  • 山口直子:第12回日本検査血液学会学術集会 テクニカルセミナー2 サイトグラムで異常細胞を見つけ出せ 5. スキャッタープロットの定量化~Research Population Data ~日本血液検査学会雑誌13巻第1号,2012年
  • 山口直子:Usefulness of detection of Myelodysplastic syndromes using Neutrophil Cell Population Data”, Poster session 1, ISLH 2018年
  • 重田英夫:造血器腫瘍の病態と診断(2),血液自動分析装置による細胞解析,臨床病理41(12):1279-1288,1993年
  • 勝又ちとみ:血球計数装置における白血球の細胞解析情報を用いた敗血症検体の検出,第17回日本検査血液学会学術集会,2016年

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UniCel DxHシリーズ コールターセルラーアナリシスシステム
製造販売届出番号:13B3X00190000038

MAPSS-MKT-202106-1000

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