2017年7月12日掲載
VCSn テクノロジーにおける細胞分析法
今回から、新しいテーマとして最新の自動白血球分類法について解説します。1980年代に確立した自動白血球分類法ですが、現在の血球計数装置に搭載されている自動分類法との違いはあるのでしょうか。装置の仕様からは白血球分類の細胞数や異常を検出するフラッギング機能など、一見すると大きな違いが見受けられません。一般的に自動白血球分類法は、以下の技術的な仕様から細胞分類を行っています。
現在の自動白血球分類法は、測定結果に至るまでの分析プロセスに大幅な改良が加えられており、自動血球計数装置 UniCel DxH800では最新の細胞分析技術を搭載し、白血球分類を行っています。
自動血球計数装置 UniCel DxH シリーズには、新しい自動白血球分類法(VCSn テクノロジー)が搭載されています。VCSn テクノロジーでは、分析モジュールの改良とともにデジタル化されたパルス信号の処理や新しい分析アルゴリズムにより、正確な自動白血球分類を可能にしています。その特長としては、コールター原理による細胞体積(Volume)、電導度測定による細胞内密度(Conductivity)、5種類のレーザー散乱光情報(Light Scatter)による細胞特性の合計7種類の測定パラメータを用いて解析し、正確な細胞分析を行っています。また、これらの細胞解析情報を用いて形成される3次元プロット図は、異常検体を正確に検出します。3次元プロット図によって検出された異常な細胞集団は、測定画面に表示される3種類のスキャッター・プロットから容易に確認することができます。
(1)マルチアングルライトスキャッター(MALS : Multi Angle Light Scatter)
自動白血球分類法においては、どのような分析方法で細胞分類を行うかが重要で、言い換えれば細胞の特徴を正確に捉え、細胞情報として用いることができるかがポイントとなります。一方で血液形態観察における細胞の鑑別は、大きく分けて以下の特徴を捉えています。
この鑑別方法は、染色技術によって細胞構造や形状を特徴付けたものであり、詳細な細胞情報が得られるため、現在においても細胞鑑別法の基本として用いられています。一方、自動白血球分類測定は、それぞれの細胞を物理的、光学的な測定技術を用いることで細胞の特徴を取得し、細胞分類を行います。具体的には電気抵抗法による細胞体積、電導度測定による細胞内密度、レーザー散乱光情報によるさまざまな細胞特性、細胞化学染色法による細胞分類などが一般的には用いられています。このような細胞鑑別のアプローチは異なりますが、細胞鑑別の正確性はより詳細な情報が得られる血液形態分類が優位となっています。
VCSnテクノロジーでは、より詳細な細胞情報を取得するために5種類のレーザー散乱光情報(Light Scatter)を用いて細胞特性を解析し、正確な細胞分類を可能にしました。5種類のレーザー散乱光情報は以下の通りとなります。
レーザー散乱光情報 | 細胞特性 | |
---|---|---|
AL2 | Axial Light Loss | 血球体積情報 |
LALS | Low Angle Light Scatter | 血球の複雑性、 粒度特性、 核構造など |
LMALS | Low Median Angle Light Scatter | |
UMALS | Upper Median Angle Light Scatter | |
MALS | Median Angle Light Scatter |
5種類の散乱光測定情報
これらのレーザー散乱光は、散乱光の角度の違いから細胞構造の複雑性、 顆粒特性、 核構造や分葉度などさまざまな細胞特性を検出することができ、従来にない細胞解析を行っています。また、パルス信号として取得されるこれらの散乱光シグナルは、高分解能のアナログ・デジタル(A/D)変換コンバーターとデジタル信号処理回路(digital signal processor:DSP)によってパルス高、パルス面積、パルス幅やパルス発生時間などの情報からパルスの形状分析を行っており、細胞の重なり合いや細胞集塊、デブリスなどによる測定誤差を除外し、高精度な細胞特性情報として利用されます。
このように最新の自動白血球分類法であるVCSnテクノロジーは、数多くの細胞情報を取得し、デジタルパルス解析することによって正確な細胞分類を実現しています。
次回は、VCSn テクノロジーにおける細胞分布解析について解説します。
引用文献・資料
UniCel DxHシリーズ コールターセルラーアナリシスシステム
製造販売届出番号:13B3X00190000038
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