2017年2月16日掲載
今回から、血球計数における自動白血球分類について解説します。
血球計数装置の自動化は、以前解説しました通り1950年代から始まりました。簡単に年表にまとめると以下の通りとなります。
1950年 ~ 白血球、赤血球の自動計測が実用化(Coulter counter model A)
1960年 ~ 血球計数(血小板を除く)の全自動測定が実用化(Coulter counter model S)
1970年 ~ 血小板数の全自動測定が実用化(Coulter counter model S-plus)
1980年 ~ フロー方式の自動白血球分類装置の登場(Coulter model VCS、model STKS)
CBC(Complete Blood Count)測定は、全自動測定が可能となり、検査業務の生産性(効率化)やTAT(Turn Around Time)の向上が可能となりました。一方で、白血球分画は、末梢塗抹標本を用いた目視法による白血球分類を行っており、血液担当者一人あたり検体処理は20~30検体/時間程度でした。結局のところ、血液検査(CBC/Diff )における臨床報告は、白血球分類結果を待たなければならず、相対的なTATの改善には結び付きませんでした。当時の白血球分類の自動化は、塗抹標本上の細胞画像を数千以上のデータ・ポイントに分解して細胞分類を行うパターン認識法(図1: Coulter Diff3 SYSTEM)や細胞化学によるWBCヒストグラムにおける体積分類法(図2:WBC Histogram Differential)などが開発されましたが、検体の処理能力や分類される細胞数などに課題があり、従来の検査法に代わることはありませんでした。この時代において臨床検査のさまざまな分野で新しい測定技術の確立や検体処理の自動化が図られ、自動白血球分類装置の開発が待たれていました。しかし、自動白血球分類を実用化するためには、いくつかの技術的課題を克服することが必要となり、以下の課題が考えられました。
1980年代にはフロー方式の白血球分類機能を搭載した血球計数装置が登場することになりました。1986年に自動白血球分類装置 Coulter model VCS(図3)、1988年にはヘマトロジー・アナライザー・システム Coulter model STKS(図4)が開発され、血球計数における白血球分類の自動化が飛躍的に進んでいくことになります。
ヘマトロジー・アナライザー・システム Coulter model STKSにおける装置仕様は以下の通りです。
また、自動白血球分類には、新たに開発されたVCSテクノロジーを搭載し、正確な測定が可能となりました。VCSテクノロジーは、等張性の測定試薬によって細胞を生体内に近いニアネイティブな状態(生体内と等しい浸透圧)に保ちながら、フローサイトメトリーによって検出部のフローセルに送り込み、1検体あたり8192個の細胞について3種類の測定シグナルを同時検出して三次元解析に行い、5種類の細胞に分類します。
白血球情報を取得する測定パラメーターには体積情報(Volume)、電導度(Conductivity)、レーザー散乱光(Light Scatter)が用いられています。
また、測定情報としては、数値情報のほかに3種類のデータプロット(図8)、3種類のVCSヒストグラムがリアルタイムに表示され、詳細な分類情報を提供します。
次回も引き続き血球計数における自動白血球分類について解説します。
引用文献・資料
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