2017年1月17日掲載
血球計数における精度保証(Quality Assurance;QA)
今回は、血球計数における精度保証の最終章となります。これまでに精度保証のための作業や方法として、測定前のプロセスから測定後のプロセスや測定機器の校正、基準参照法について解説しました。
現在、施設で使用されている血球計数装置における精度を確認する方法としては、一般的には外部精度管理プログラムに参加することになりますが、年間数回程度しか実施されませんので、必要に応じた機器の管理状況を把握することは難しいと思われます。血球計数装置の機器メーカーでは、独自の精度管理プログラムを提供しており、それらを利用することをお勧めします。
ベックマン・コールターでは、弊社の機器とコントロールを使用されるお客様に対する精度管理プログラムとして、インターネットによる精度管理サービスを提供しています。コントロール血球の測定データを弊社のeIQAP Web サイトにアップロードすると、全世界で登録されているピア・グループ(機種・測定試薬・コントロールロットが等しい母集団)と比較した報告書が随時作成されます。また、ベックマン・コールターは、機器、測定試薬、コントロール血球、校正用血球のすべてを自社で供給しているメーカーですので、一元管理された精度保証を可能にしています。
ベックマン・コールターが提供する精度管理プログラム(IQAP)は、参加施設のコントロール測定結果を正確度(SDI)と精密度(CVI)の両方で評価し、パフォーマンスマトリックス図によって見やすく表示された報告書を提供します(図1)。
評価の指標である正確度(SDI)と精密度(CVI)の見方は、以下の通りになります。
① 正確度の評価
正確度は、SDI(Standard Deviation Index:標準偏差指数)で示され、自施設平均値(Your Mean) が全施設平均値(Pool Mean)からどのくらい離れているかを示すもので、SDI が0の場合は、全施設値と自施設値が一致していることになります。
また、計算式は下記の通りです。
正確度(SDI)を評価する場合、自施設平均値(Your mean)と全施設平均値(Pool mean)の差を、通常は全施設平均値の標準偏差で割りますが、IQAP では、これに自施設の平均値の標準偏差(Your SD)を加えたSE Diff を用いることによって、評価が厳しくなりすぎないようにするとともに、ばらつきの大きい機器ほどSDIの評価が緩くなるように集計されています。
これは、機器のばらつき具合を解決して校正を実施していただくためです。
② 精密度の評価
精密度は、CVI(Coefficient of Variation Index:変動指数)で示され、自施設の日差変動幅(YourCV)と全施設の日差変動幅の平均(Pool CV)を比較します。自施設のCVIが1の場合は、精密度が平均を示していることになります。
また、計算式は以下の通りです。
③ パフォーマンスマトリックス図の見方
パフォーマンスマトリックス図では、横軸にSDI(正確度)、縦軸にCVI(精密度)を示し、自施設の評価を表す●を表示した図が横に3濃度分、縦に各項目分が表示されています(図2)。自施設の評価が水色の領域内であれば、その装置の管理状況は良好です。また、正確度(SDI)、精密度(CVI)に何らかの確認すべき点がある場合には、IQAPレポートの報告事項(Notes)に、「Please review~(~を確認してください)」と記載され、集計結果報告(Data Evaluation)に赤字で表示されます。また、パフォーマンスマトリックス図においても、許容範囲外のデータは、正確度(SDI)、精密度(CVI)の何が問題であるかを理解できるように示されます。
が3濃度とも左右どちらか一方の同じ方に外れていれば、装置の校正を検討してください。
がマトリックス図の上方に外れている場合、装置も精度管理画面で表示されるLevey & Jenningsグラフで詳細を確認してください。1濃度のみで1項目ないしは複数項目のCVIが大きい場合は、コントロールのバイアルの劣化などの可能性があります。また、測定期間内で、校正を行った場合、CVIは3濃度とも一時的に大きくなりますが、次回のロットからは正常範囲内に戻ります。
使用されている装置の稼働状況は、偶然誤差やシフト、トレンドを判断するためにも、ある程度のまとまった測定回数が必要となります。また、1度の報告では判断を行わず、3ヶ月程度の期間でその傾向を確認するとともに季節変動なども留意して必要に応じた機器の校正時期を判断してください。
次回のTalk CBCは、自動白血球分類について解説します。
引用文献・資料
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