2016年10月12日掲載
血球計数における精度保証(Quality Assurance;QA)
今回は、血球計数における精度保証(QA)について解説します。血液計数装置の精度は、正確性(Accuracy)と精密性(Precision)によって決定され、正確性は定期的な校正作業、また、精密性は日々の保守管理により維持されます。一般的には血球計数装置の仕様は臨床的許容範囲内にあり、その精度は満足できる性能を有しています(右表参照)。しかし、血液検体はさまざまな要因で影響を受けやすく、採血作業から測定結果の判定までの一連の検査プロセスを管理する必要があります。
1) 測定前プロセス
測定エラーの要因として一番に挙げられることは、採血によって生じることが多く、採血担当者は適切な手技で実施を行うことが求められます。
採血では以下の点を留意して実施します。
検体保管は室温保存が一般的で、冷蔵保存では寒冷凝集素やクリオグロブリンが測定値に影響を及ぼす場合があり、凍結保存では溶血を来します。また、EDTA加採血管では約4時間経過後に単球や好中球の形態変化(空砲形成、顆粒減少等)が目立つようになるため、末梢血塗抹標本は採血後4 時間以内に作製します。
2) 測定プロセス
測定プロセスでは、機器の準備、内部精度管理、 測定検体の確認などが挙げられます。機器の準備 においては、以下の確認が必要となります。
また、精度管理図は、機器に搭載されているQCプログラムから確認を行います。
管理血球の精度管理方法としては、Levery & Jennings 法( L-J 法)が用いられており、測定結果の平均値(X)と平均値との差(R)を経時的にプロットした精度管理図(下図参照)が作成され、管理図には、アッセイシートに記載された期待値と管理幅の上限、下限値が表示されます。作成される精度管理図の傾向は機器の状態を反映しており、確認が必要となります。
グラフの傾向から読み取れる点を以下に記載します。
また、上記のような変動に遭遇した場合には、前日検体を測定をすることにより、その測定結果より変動の原因を機器と管理血球に棲み分けができることがあります。
測定検体を用いた精度管理法については、加重移動平均法(XB法)が一般的に用いられており、DxH にも搭載されています。
XB法は、検体測定時の赤血球恒数(MCV、MCH、MCHC)を用いたリアルタイム精度保証プログラムで、20 検体を1 バッチとして処理され、加重平均された結果から機器管理を行います。一般的に赤血球恒数は、年齢、性差や生理的変動が少なく、それぞれのターゲット値(例: MCV 90.5fL、MCH 30.5pg、MCHC 34.0%)は機器が管理されている状態では、1%以内に推移し、それぞれのバッチごとの結果も3%以内で安定しています。また、異常を示す結果について以下に示します(下図参照)。
次回のTalk CBCは、外部精度管理や測定後のプロセスにおける精度保証について述べたいと思います。
引用文献・資料
UniCel DxHシリーズ コールターセルラーアナリシスシステム
製造販売届出番号:13B3X00190000038
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