2016年5月17日掲載

Vol.6赤血球恒数(指数)の見方・考え方

CBCを語ろう Talk CBC 赤血球の数だけでは分からない「赤血球の質」について

赤血球恒数

血管内で循環している赤血球の量はRBC(赤血球数)で知ることができます。しかし、赤血球の大きさや1個あたりのヘモグロビン含有量などの「赤血球の質」については、赤血球恒数(指数)を使って判断する必要があります。赤血球恒数にはMCV(平均赤血球体積)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)があり、Hgb(ヘモグロビン濃度)、Hct(ヘマトクリット)、RBCより計算されます(表1)。

表1

赤血球恒 単位 計算式 示すもの 分類
MCV
(Mean Corpuscular Volume)
平均赤血球容積
fL
Hct(%) × 10
RBC(106/μL)
赤血球1個の大きさ
(平均値)
80以下 小球性
81~100 正球性
101以上 大球性
MCH
(Mean Corpuscular Hemoglobin)
平均赤血球ヘモグロビン量
pg
Hgb(g/dL) × 10
RBC(106/μL)
赤血球1 個あたりの
ヘモグロビン量
   
MCHC
(Mean Corpuscular Hemoglobin Consentration)
平均赤血球ヘモグロビン濃度
Hgb(g/dL) × 100
Hct(%)
赤血球1個あたりの
ヘモグロビン濃度
30以下 低色素性
31~35 正色素性
MCV
:赤血球1個の平均容積で、単位のfL(femto liter)は、10-9μLすなわち10-15Lに相当します。81~100にあれば正球性(normocytic)、80以下ならば小球性(microcytic)、101以上ならば大球性(macrocytic)と呼びます。
弊社機器は、前号で示した通りコールター原理によって個々の赤血球の大きさ(容積)を直接測定しており、MCVはヒストグラムから算出しています。そのため、Hct(ヘマトクリット)は次式より計算されています。
Hct(%)=(RBC(106/μL)× MCV(fL))/10
MCH
:赤血球1個に含まれるヘモグロビン量で、単位のpg(pico gram)は10-12gに相当します。
MCHC
:赤血球1個に含まれるヘモグロビン濃度を%で表したものです。31~35にあれば正色素性(normochromic)、30以下ならば低色素性(hypochromic)と呼びます。


WHOでは、Hgbが成人男性13g/dL未満、成人女性12g/dL未満、妊婦や幼児では11g/dL未満を貧血としています。通常Hgbの低下とともにRBCやHctも減少しますが、赤血球の主な生理機能がヘモグロビンによる肺から全身組織への酸素運搬であることから、3つのうちHgbが生体にとって最も重要な指標となります。貧血の分類は大別して、原因による病態生理学的分類と赤血球恒数による形態学的分類がありますが、貧血の診断を進めるには赤血球恒数による分類(小球性低色素性貧血、正球性正色素性貧血、大球性正色素性貧血)が使われます(表2)。

表2

  小球性低色素性貧血 正球性正色素性貧血 大球性正色素性貧血
MCV 80以下 80~100 101以上
MCHC 30以下 31~35 31~35
鑑別疾患 鉄欠乏性貧血 溶血性貧血 巨赤芽球性貧血
鉄芽球性貧血 出血性貧血 悪性貧血
サラセミア 腎性貧血  
慢性疾患による貧血(ACD) 再生不良性貧血
骨髄異形成症候群

MCHCが正常値以上になることは稀です。それは、正常でも赤血球内のヘモグロビン濃度はほとんど飽和状態にあるからです。一部、新生児や遺伝性球状赤血球症で高値となることが知られています。そのため成人の検体でMCHCが高値となった場合は、RBC、Hgb、Hctのいずれかに誤差が生じている可能性があります。

  1. 採血不良による凝固、溶血および混和不足:凝固検体では、RBC、Hct は偽高値となります。また、検体混和不足の場合、血液が均一にならず正しい測定値が得られないことがあります。
  2. 高ビリルビン血症および高脂血症:Hgb測定は比色法であるためビリルビンが高い検体や乳びが強い検体ではHgbが偽高値となりMCHやMCHCが偽高値となります。また、WBCが高値の場合もHgbが偽高値となることがあります*。
    *UniCel DxH 800は、WBC高値に関してはHgbを自動補正しているためMCHCの偽高値は発生しません。
  3. 寒冷凝集:寒冷凝集素症やマイコプラズマ肺炎など寒冷凝集素が高い検体では、赤血球が凝集してRBCやHctが偽低値となりますがHgbは影響を受けないためMCV、MCH、MCHC が偽高値となります。

赤血球恒数を利用した装置の性能確認:XB解析

Dennis B. Dorsey医学博士は、1963年に比較的一定である血球指数は、血液計装性能を追随できる可能性があると提議しました。Brian Bull医学博士は、その技術を改良し、XB解析と命名しました。XB解析では患者検体結果の「加重移動平均」を使用します。これはKoepkeとProtextorが、精度管理物質は「測定される患者の成分に、構造と反応性が似ていることが理想である。それゆえ、新しく採血された患者血サンプルは最も適した精度管理物質であるように思える」と述べたからです。Bullによれば、「XBアルゴリズムを使用して20名の患者を1バッチとする平均MCV、MCH、MCHCが、ポピュレーションの期待平均指数の3%以内である場合、アナライザーは‘コントロールされている’」と説明しています。このXB解析を装置の性能確認に応用することができ、UniCel DxH 800でもXB解析を搭載して装置の性能確認のひとつとしています。


個人内変動の小さいMCV

健常者検体についてCBC項目における個人内変動および個人間変動が少ない項目としてMCV、MCHが知られています。また、個人内、個人間変動ともに大きなものはWBC(白血球数)、個人内が小さく個人間が大きいものとしてRBC、Hgb、Hct、PLT(血小板数)、PCT(血小板クリット)とされています。特にMCVは個人内変動が少ないことから、前回値チェックで患者間違いなどを検出できることが知られています。

今回は、赤血球恒数ということで文字が多くなってしまいました<m(__)m>。次回は血小板を予定しています。

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UniCel DxHシリーズ コールターセルラーアナリシスシステム
製造販売届出番号:13B3X00190000038

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