2016年1月12日掲載
前号で紹介しました通り、赤血球数と白血球数の自動測定は、コールターカウンターmodel Sの登場により自動化がなされました。しかし、血小板数の自動測定は、約10年後のコールターカウンターmodel S-Plus を待たなければなりませんでした。なぜ、血小板数の自動測定にはこのような時間を要したのでしょうか。
その理由としては、
などが挙げられます。
この血小板数測定の自動化は、1978 年開発されたコールターカウンターmodel S-Plus(エスプラス:図1 参照)によって可能となりました。血小板測定を行うためにmodel S-Plusでは、ヒストグラム分析によって血小板測定を行う“ログフィット法”と“エクストラカウント機構”を搭載しました。
“ログフィット法” による血小板測定について解説します。“ログフィット法”では、2~20 fLのサイズ領域に存在するすべての粒子や細胞を計測します。計測結果から最大値と2つの最小値を算出し、この実測値に基づいて血小板のヒストグラムを作成します。作成された実測ヒストグラムからは近似する対数正規曲線(フィット曲線)を0~70 fLのサイズ領域から導き出し、正確な血小板数が算定されます(図2 参照)。その際、細胞干渉の有無やヒストグラムパターンの形状解析が行われ、ヒストグラムの異常や細胞干渉などが認められた場合にはエラーコードで異常が表示されます(図3 参照)。
“エクストラカウント機構” とは、血小板低値検体において細胞の計測時間を自動延長し、計測細胞数を一定個数までカウントすることで統計学的精度を保証する測定技術です(図3:model S-Plusの例)。これにより低値血小板検体においても、精密性の高い正確な血小板測定が可能となりました。
DxH 800における血小板のヒストグラム分析
さて、最新のコールターカウンターであるUniCel DxH 800の血小板測定はどうなっているのでしょうか。DxHでは、1:6250に希釈された試料で血小板はRBCバスでカウントされます。RBCバスには3つの50×60 μmのアパチャーがあり、スイープフローにより感応領域の後部を粒子が通過するのを防ぎながら2~25 fLサイズのすべての粒子パルスを血小板としてカウントします(図4)。この時、ヒストグラムは256に区分け分析されます。この中には血小板と一部分の赤血球ポピュレーションを含んでいます(図5)。DxHでは血小板測定が20秒に達するか、または1,800イベントになった時点、のどちらか早い方を分析に利用します。
DxH の血小板測定の実際(アルゴリズム解析)
ステップ1 - 血小板イベントのカウント
血小板イベントはRBCバスでカウントとサイズが計測されます。血小板パルスは増幅、A/D変換され、DxHの血小板アルゴリズムにより精密に解析されます。このアルゴリズム解析により、パルスエディット、同時通過補正、カウントボーティングが行われ、そして血小板ヒストグラムが作成されます。
ステップ2 - 血小板ヒストグラム分析
血小板ヒストグラム分析のプロセスでは、干渉による血小板カウント補正が必要となる状態ではそれの分析を行います。その分析にはヒストグラムスムーシングとボーティング、血小板ヒストグラムの特徴抽出と血小板ヒストグラムのパターン分類があります。ヒストグラム分析のプロセスでは、まず3つのアパチャーからのそれぞれの血小板ヒストグラムのボーティングによる平均血小板ヒストグラムの作成から始まります。
2-1 特殊抽出
DxH では、特徴抽出では血小板ヒストグラムの全領域を分析し、
などをアルゴリズム解析し、血小板ヒストグラムパターンに干渉があるかどうかを決定します。これはヒストグラムのパターン分類に役立ちます。
2-2 パターン分類
次に、ヒストグラムの特徴を利用しパターン分類を行います。測定結果のヒストグラムが巨大血小板やRBCの干渉などのパターンに分類されるかを解析し、測定結果のフラグ情報として表示することとなります。
すなわち、DxH 800における血小板測定では、3つのアパチャーから得られた情報から“ログフィット法”と“エクストラカウント機構”によって正確な個数を計測し、得られたヒストグラムを最新のアルゴリズムでパターン解析を行い、フラグ等の情報を提供しています。
UniCel DxHシリーズ コールターセルラーアナリシスシステム
製造販売届出番号:13B3X00190000038
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