2018年3月13日掲載

Vol.1ISO 15189 認定施設への One Point Information Vol.1

Future Lab Session in Osakaのご紹介


Future Lab Session in Osakaは、公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)による臨床検査室認定制度(ISO 15189)の認定施設をコアメンバーして、平成24年10月に発足し、活動を行ってきました。本Sessionの目的は、ISO 15189を指針としたQuality Management System(QMS)を用いた臨床検査室の運営を支援することで、検査結果の品質保証と標準化に貢献し、臨床検査の発展に寄与することにあります。

このSession では、従来の研修会や勉強会の手法とは異なり、小規模集団で集中的に行う研修の場を提供しており、会員施設におけるクローズドな運営を基本としております。 このSessionは年に3回開催し、1回はオープンセミナーとして開催しています。オープンセミナーでは、JABより講師を派遣いただき最新の認定制度の動向や規格解説、他の地域の認定施設から講師を招き特別講演を行っています。また、クローズドセミナーを年2回 開催し、内部監査員の養成研修、指摘事項の検討、ISO 15189に関する資料作成、QMS運用を効率的で効果的に行うためのアイディアを理論的に考え、そして実践した結果発表(ブラッシュアップ・セミナー)をしています。

近年、JAB臨床検査室認定制度の認定取得施設が増加していることを鑑み、今回、世話人の方々からの賛同により、これまでに開催されたブラッシュアップセミナーの内容を一般公開し、認定施設におけるQMS活動の継続的改善のための一助となることを期待し、『Brush Up Study』を発行する運びとなりました。

以上

2017年9月吉日
世話人代表 角坂芳彦 (関西医科大学附属病院)

Future Lab Session in Osaka 世話人会 参加施設
大阪医科大学附属病院 中央検査部
国立循環器病研究センター 臨床検査部
関西医科大学附属病院 臨床検査部
大阪医療センター 臨床検査科
大阪市立大学医学部附属病院 中央臨床検査部

要求事項

4.15.3 レビュー活動
レビューでは、プロセスの問題が示された不適合事例の原因、傾向及びパターンに関するインプット情報を分析しなければならない。

解 説

上記の規格要求事項は4.15 マネジメントレビューにある項番ですが、同様に、「4.9 不適合の識別及び管理」の “ h) 不適合の事例を文書化し、記録する。記録は、傾向を調査し、予防処置を開始するために定期的にレビューされる。” との記載があり、不適合事例に関する傾向を知ることはQMS の改善活動の重要な視点であると言えます。

これらの意図するところは、「4.2.1 一般要求事項」に “その品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善しなければならない” あるいは、4.12 継続的改善にも “検査室は、…中略… マネジメントレビューの利用を通して、検査前プロセス、 検査プロセス、 検査後プロセスを含む品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善しなければならない“ とあり、不適合事例の原因、傾向を調査し、その分析結果を踏まえ、マネジメントレビューにおいて検査室管理主体は、QMS 活動の改善計画や関連目標(あるはこれらの立案指示)をアウトプットに含むことを示唆するために4.15.3 が求められていると考えられます。

「是正処置報告書」では、個々の事例に対する是正処置が行われますが、QMS 活動で見出される不適合、例えば、内部監査を実施する毎に発見される不適合に対して、個別案件として次々と処理することを繰り返すことで、QMS を継続的に改善することは当然、必要な品質活動であると言えます。しかし、さらに効率的に継続的改善のスピードアップを行い、4.2.1 一般要求事項の“品質マネジメントシステムは、品質方針及び品質目標、並びに利用者のニーズや要求事項を満たすために要求されるすべてのプロセスの完全性を提供しなければならない” を満たすためには、多くの不適合の事例の原因、傾向を調査し、臨床検査室のQMS 活動として脆弱なポイントを探し出し、その改善策を講じることが、臨床検査室全体のQMS の有効性を底上げすることにつながることから、結果的に継続的改善への効果的な手段であると言えます。

理 論 編

解説にあった“ 多くの不適合の事例の原因、傾向を調査する” とは、具体的に何をすれば良いのでしょうか? FLS(FutureLab Session)では、不適合の原因に着目し、原因究明の結果分類をすることを検討してみました。

不適合の原因は大きく分けて 仕組みの欠陥によるもの、 要員に起因するものに分けることができ、さらに要員は3つに分類することができます。これらの結果分類と対応策を表1に示します。

表1

参考資料として、C)の意図しないミスの対応策、すなわち部品・材料、設備、指示書、手順などを工夫、改善することを「エラープルーフ化」と言います。その内容を表2に示します。

表2

この原因究明の結果分類を利用してQMS の不適合の原因を調査し、臨床検査室全体のQMS 活動の有効性を底上げすることを試みたFLS に参加する認定施設の検討事例を次に示します。

実 践 編

今回、この理論を具体的に展開を試みたFLSのA認定施設は、① 750床以上、② 特定機能病院、③ 認定範囲 基幹項目1 ~ 6、非基幹項目 11 ~ 17、④ 認定範囲の要員数約45 人、⑤ 認定取得後、約2 年が経過という状況です。まず、この施設では不適合の原因追究を分析し分類する上で、分類内容の定義付けを行いました(表3)。

表3

上記の定義に従って、直近に実施された内部監査から見出された不適合29件(NC 8件、RM 21件)について、被監査部署(7部署)にヒアリングを行い、各不適合に対しての原因究明の結果をA ~ D に分類することにしました。その具体的な不適合の事象サンプルを表4に示します。

表4

また、この施設では特にB)の意図的な不順守が起こる要員の意識に、以下の傾向がみられることが調査によりわかってきました。

  1. 本業と異なり、QMS は特別なことをやっている意識が働いている
  2. 自分自身が品質管理の当事者にならないと本気になってやれない
  3. まだまだ改善という活動が、要員の中に「必然」として位置付けされていない
  4. QMS は、現実とかけ離れた「建て前」だけの活動になっている?
  5. 品質文書を作成したり、記録をとることに必然性があるか疑問である

また、B)による不適合の根本原因として、①根本原因を特定することや仕組みを見直すことに不慣れなために、作業に時間がかかる ②日常業務が忙しいので、文書改訂の実施期日に対し、自ら優先順位を低く設定する傾向にある ③実施期日のスケジュール管理ができていないので、提出期限を守れない(ついうっかり忘れた) 以上の3 点に絞っています。

今回の原因究明の結果分類は各部署単位でも集計され、不適合の事例の原因、傾向の調査より、QMS 活動の脆弱なポイントは臨床検査室全体及び各部署における特徴として見えてきました。その結果は、表5 及びグラフ1に示します。

表5

グラフ1

図1

結論として、今回の試みからFLS のこの認定施設では、不適合の根本原因(背景)と傾向が、具体的な数値をもって「見える化」 されたことになります。全体的には意識的な不順守が高い傾向を示していることから、業務で順守することをさらに明確化し、繰り返し指導を行う必要があることが分かります。特に細菌・遺伝子や情報はその傾向が強く表れています。また、血液は仕組みのノウハウが不足しており、必要なノウハウを調査し手順書など仕組みに反映させる取り組みがQMS の改善には有効であることが示されています。

これらプロセスの問題に対する原因、傾向の分析結果を踏まえ、現在、この施設では、図1に示した1から5のStep によりQMS 全体の品質目標に展開し、効果的で効率的な継続的改善に取り組むQMS 活動が行われています。また、今後はこの手法を用いて、苦情処置、インシデント報告書などの是正処置報告書も解析することを検討しています。


引用文献:資料
1)Future Lab Session in OSAKA 第1 回 ブラッシュアップセミナー
2)ISO 15189:2012 英和対訳版(一般財団法人 日本規格協会 出版事業部)
3)ISO 9000の知識 著者 中篠武志( 日本経済新聞社出版社) 2010年(3版)

監修:Future Lab Session in OSAKA 世話人会
発行:ベックマン・コールター株式会社

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