症例22
年齢 | 80歳代 | |||
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現症 | 腰痛がひどく、近医を受診し汎血球減少を指摘され当院へ紹介される.汎血球減少の精査と芽球様細胞の出現より骨髄穿刺が施行された. | |||
血液学所見 | WBC(/μl) | 1,200 | RBC(万/μl) | 131 |
Hb(g/dl) | 5.3 | Ht(%) | 16.0 | |
PLT(万/μl) | 4.4 | MCV(fl) | 121.8 | |
MCH(pg) | 40.4 | MCHC(%) | 33.1 | |
血液像(%) | Blast 0.5,Seg 47.5,Ly 51.5 Mo 0.5, Ebl 1/100w |
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骨髄所見 | NCC(万/μl) | 1.4 | BM-MgK | 0 |
Blast様(%) | 54.0 | |||
生化学所見 | LDH 412 IU/l | |||
染色体所見 | 47,XY,+8 |
[末梢血×1000.MG染色] 白血球減少のなか芽球様細胞がみられる. 拡大して見る |
[骨髄×400.MG染色] 低形成のなか芽球様細胞が54%みられる. 拡大して見る |
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[骨髄×1000.MG染色] 芽球様細胞は軽度ながら核形不整がみられる. 拡大して見る |
[骨髄×1000.MG染色] 赤芽球系細胞に異形成を認める. 拡大して解説を見る |
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[骨髄×1000.MS染色] 巨核球系細胞に異形成を認める. 拡大して見る |
正解 : 3 急性骨髄性白血病(M2)
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年齢 | 80歳代 |
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〜前発信〜 | |
末梢血所見から | 汎血球減少症に芽球様細胞の出現(0.5%)がポイントである. 芽球様細胞については、PO染色を行い系統を考える. |
骨髄所見から | 通常骨髄が低形成の場合は真の低形成を証明するために骨髄生検が必要となる. また、骨髄像では間質成分(ストローマ)を塗抹の引き終わり部分で探すことに意義がある. 本例はストローマは散見され、周囲には造血細胞の抑制がみられたことより真の低形成がうかがえる. 低形成のなか芽球様細胞がNECの54%みられ、急性白血病の基準を超えるものであった. 背景には若干ながら造血細胞に異形成を認める. |
細胞化学所見から | 標的は芽球様細胞であり、系統を推測する意味からまずPO染色を行う. PO染色で芽球様細胞は15%が陽性であったことからAMLを考え、AMLのどの病型にあてはまるかを模索する. |
【形態診断】 | 高齢、低形成骨髄像、芽球の増加、異形成などの所見から @低形成白血病、AMDSからAMLへの転化、BMDSを伴うAMLを考える. |
〜後発信〜 | |
表面形質から | 顆粒球系マーカーのCD13、CD33が陽性、HLA−DRが陽性であった. |
分子生物学的から | 47,XY,+8 |
【臨床診断】 | 臨床的にMDSを示唆する既往もなく、骨髄生検は施行されなかったが、骨髄の間質成分の存在から真の骨髄低形成を推定し、芽球の増加(20%以上)から低形成白血病と診断された.
しかし、背景の二系統の形態異常も考慮すべきである. 染色体異常(+8)はMDSによくみられるパターンでもある. 高齢でもあり、強力な化学療法は行わず、家族から“外来でQOLを中心に考えたい”との希望もあり輸血と対症療法にて経過観察となる. |
WHO分類 | 特異的染色体異常を伴わないAML ☆AML with maturation (低形成かMDSの併発か ) |