Point:形態論は同じ土俵で論じ合わなければ意味がない!だから標準化が必要です‥
まず、用語の標準化について検討しましょう。基準案がないために私見を述べます。
- 1. 「(正常)芽球」と「病的芽球」
- “芽球”は正常にも病的芽球(白血病細胞)としても混同されて使用されているようで、その病態は異なるため使い分けることが必要です。双方の異なる点を示します。
- @「(正常)芽球」 (normal) blast
染色体異常がなく末梢血には反応性に出現することがあります。
核は円形〜類円形、核形不整なし、核小体1〜2個、アズール顆粒は認めません。 - A「病的芽球 (白血病細胞)」 pathological blast (leukemic cell)
多くは染色体異常を伴い腫瘍性に出現する白血病細胞を指します。
顕著な核形不整や明瞭な核小体をもち、アズール顆粒を認めるものもあります。異型性があります。 - 2. 「異型リンパ球」と「異常(病的)リンパ球」
- @ 「異型リンパ球」atypical lymphocyte
“異型”とは正常のリンパ球に比べると“異常にみえる”という意味で腫瘍細胞の性質をもったリンパ球ではありません。すなわち反応性の形態変化として捉えます。健康小児で10%未満、成人でも3%未満に末梢血にみられるといわれています。抗原刺激を受けたリンパ球は大型化し、細胞質には好塩基性が一面に広がってみえるか放射状に走るようにみえます。 - A「異常(病的)リンパ球」abnormal (pathological) lymphocyte
異常リンパ球は腫瘍性の形態変化(異型性)として捉え、大型化、核形不整、明瞭な核小体、細胞質の突起、空胞などの形態所見で、単一(同じような細胞が腫瘍性に増加する)様式をとることが多いようです。 - 3. 「幼若リンパ球」
- 生後2週目から6歳頃までにリンパ組織の発達時にリンパ球の優勢がみられますが、その際骨髄にも幼若なリンパ球 juvenile lymphocyteが出現することがあります。もちろん一過性ですが、異常リンパ球の様相を呈し、同定に苦慮するため臨床所見、検査所見を照らし合わせながら観察を余儀なくされるリンパ球になります。
- 4. 「幼若」と「未熟」
- 幼若 juvenileとは一連の分化・成熟段階に出現する幼若細胞を指すものであり、未熟 immatureとは分化した“いわゆる芽球”よりもさらに幼若な芽球について使用する用語と思われます。
- 5. 「幼若分画」と「成熟分画」
- 前者は分裂能に関連する細胞群であり、後者は成熟を方向づけられた細胞群を指すものであります。
分裂能を有するものは、顆粒球系では、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球が、赤芽球では前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球が相当します。 - 6. 「多彩」と「単一」
- 細胞の出現様式を表現する際に用いる用語で、前者はバリエーションに富むもので、後者は同一細胞が増加するパターンを指すものです。原則として多彩は反応性に、単一(monotonous)は腫瘍性に用いるようにしています。
- 7. 「過分葉」
- 好中球の過分葉は「hypersegmentation」として従来から使用されていますが、その他(リンパ球、単球など)の過分葉については「lobulation」として使い分ける必要があると思われます。
- 8. 「異形成」と「異型性」
- 異形成 (dysplasia)は細胞が分化する段階において発生する成熟障害に用いるもので、異型性 (atypia)は正常型に比して腫瘍性の所見を述べる場合に用いるものです。
双方ともに異常クローン、形態異常を持ちあわせています。