第151回「マンスリー形態マガジン」2023年11月号

今月のコラム:『枯れない愛しさを飾る多肉植物』

 もともと花は好きな方でガーデニングといかないまでも、花屋さんやホームセンターに行っては玄関先や庭先用として買い求め楽しんでおります。中庭には、しだれ梅、紫陽花、百日紅(さるすべり)、ハナミズキ、山紅葉、山ぼうし、椿があり、季節ごとに花を咲かせてくれますので、時々縁側でコーヒーを片手に庭の景色を眺めて和んでいます。花の特徴や育て方、ましてや花言葉のようなものは全くと言っていいほど知識がありませんので、行きつけの花屋さんからアドバイスをもらいながら日々学んでおります。何年経っても上達しませんが、枯れ気味の鉢植えの花を地植えに替え復活した時の感動はひとしおで、一層楽しく眺めています。

 そんな折、知人から「多肉植物」を紹介されました。ネットで検索してみますと、見た目は肉厚でこぢんまりして愛らしく、乾燥地帯が原産とのことから水やりの手間がさほどかからないとのことでした。2017年頃からブームになり、新型コロナ感染症の影響で在宅時間が長くなる中、癒しを求めてさらに拍車をかけたようです。多肉植物は園芸業界では“サボテン”とそれ以外の“多肉植物”に分けて分類されています。ふっくらとした肉厚のフォルムは水分の蒸発を防ぎ、さらには表皮にクチクラ層(光沢を与えている脂質ポリマー)と呼ばれる層があり、風雨、乾燥、紫外線、病原菌などの外部環境から身を守ります。種類はサボテン・リュウゼツラン・ベンケイソウ・アロエなどたくさんの種類があります。

 早速、花屋さんで数種類の多肉植物を仕入れ、小さな鉢に寄せ植えをして日々鑑賞しております。不器用な私ですが、これからも花屋さんと知人のアドバイスをいただきながら新しく仲間となった多肉植物の栽培を楽しみたいものです。


  • ブリキ製の住処にセダムやエケベリアなどの寄せ植えがとても可愛いらしいです。


  • 窮屈そうですが、ケーキ鉢に多肉植物ギュッと詰めちゃいました。寄せ植えが似合います。 

2023年10月号の問題.  下記の2つのご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【Q1】 MG染色の標本からPAS染色への移行は可能でしょうか。またPAS染色の自家製とキット法(市販品)に染色性の差はありますか。

【助言1】 MG染色標本からPAS染色への移行は可能です。MG染色標本を95%エタノールで20分間脱色した後水洗を行い、PAS染色の手順に従い1%過ヨウ素酸処理後、通常の操作を進めます。
Pre-B ALLの症例を用いて、PAS染色を通常の工程で染色したもの(a)と脱色後に染色したもの(b)を提示します。
両者とも点状から塊状の鮮赤色の陽性がみられ染色性にほとんど変化はみられません。エタノール溶液は95%の濃度で20分間の処理がよいようです。
経験から小児Pre-B ALLでは約80%以上にPAS染色の陽性がみられます。

【助言2】 PAS染色のキット法と自家製法に染色性の差はみられます。Pre-B ALLの同一例をもとにキット法(c)と自家製法(d)を提示します。
ポイントは終末反応の鮮赤色の点状陽性が鮮明であり、対比染色(助言3.参照)が適切であるかどうかです。
キット法は赤血球に溶血が起こり鮮明さに欠け対比染色が今ひとつのようで、自家製法は溶血はなく鮮明さや対比染色に問題はなさそうです。
筆者による対比染色は、後染色のギル・ヘマトキシリン染色後に飽和炭酸リチウムで1分間処理することで、核染の青色が強調され鮮赤色がより一層増すことで対応しています(図.a,bの方がよく分かるようです)。

【助言3】 PAS染色の注意点は、1%過ヨウ素酸を新調することやシップ試薬は室温で無色からピンク色に変色したら替えどきです(冷蔵では無色)。
上述した対比染色とは、終末反応が赤色に染まれば核染色をヘマトキシリン液で青色に染め、また青色に染まれば核をサフラニンOで赤色に染め上げることで判定を読みやすくするものです。
多くの細胞化学染色がこのルールを順守しています。


【Q2】 AML-M4の症例でブチレートエステラーゼ染色が陰性でしたが、このようなことはあるのでしょうか。単球を証明するための検査はほかにありますか。

【助言1】 急性骨髄単球性白血病(M4相当)には、ブチレートエステラーゼ(EST)染色に陰性の単球を経験します。頻度は約10%と言われその原因は不明のようですので私見を述べます。
両系統は分化過程において、好中球・単球系前駆細胞として共存することから、好中球系と単球系の同質を有するものと好中球系と単球系に二分するものが存在することが考えられます。
前者を homogeneous type(未分化)、後者を two cell line type(分化)と捉えると、前駆細胞の腫瘍化(例えばM4)に伴い、前者は未分化のため細胞判別の困難さや酵素産生の低下が考えられ、ブチレートESTに陰性の単球がみられることが推測されます。
ちなみに好中球系もクロロアセテートESTの陽性率もtwo cell lineに比べると低く、それを示唆しているようです。M4全般からブチレートEST染色の陽性は弱いようでもあります。

【助言2】 対策として、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)染色をお薦めします。ブチレート陰性のM4を提示します。
MG染色で好中球系と単球系の判別が困難であり(a)、EST二重染色で好中球系は低率ながらクロロアセテートESTに陽性ですが、単球系はブチレートに陰性です(b)。
MPO染色は好中球系が陽性で単球系が陰性から弱陽性を示すので両系統の判別が可能となります(c)。
MPOはESTよりも早期に発現する可能性が高いことが推測されます。



2023年11月号の問題.  下記の2つのご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【Q1】 スライドの見方は末梢血が縦読み、骨髄が横読みと習ったのですが、具体的な見方とその理由などを教えていただきたいです。

【Q2】 新人さんに向けて末梢血液像の指導の仕方や細胞の目合わせのための良い方法はありますか。

形態マガジン号キャプテン  阿南  建一

MAPSS-DX-202311-27

著作権について

今回のねらい

今回は末梢血液像における主に赤血球の形態異常について深堀りしますが、関連についてはJSLH(2005)、旧厚生省特発造血障害研究班(1990)、ICSH(2012)の分類基準を参考にしてください。
「ワンポイントアドバイス」は、MG染色からPAS染色への移行やPAS染色のキット法と自家製法の違い、また急性骨髄単球性白血病(M4相当)におけるEST陰性の場合の対策について解説します。

問題

問題1

1-1<設問1> 骨髄像の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-2<設問2> 骨髄像の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-3<設問3> 骨髄像の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-4<設問4> 骨髄像の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-5<設問5> 骨髄像の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-6<設問6> 骨髄像の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

解答・解説

問題 

骨髄像のMG染色で撮影は1,000倍で行っています。

【解説】

幼若な好中球系の分化度です(1.2.4)。1.最大であり、核は偏在し核小体を認め太めの顆粒は一次顆粒とみなし前骨髄球、2.N/C比は高く、クロマチンは網状のことから芽球(骨髄芽球)、4.小さく、核は類円形でクロマチンは粗剛で細胞質は好塩基性が薄れ小さめの顆粒は二次顆粒とみなし骨髄球としました。
3.核は円形でクロマチンは粗大凝集で細胞質は多染性色(青紫色)のことから多染性赤芽球としました。

成熟傾向の好中球系です(1.3)。1.核は楕円形状で核の陥没は1μmほど、クロマチンが粗剛のことから後骨髄球、3.核はバナナ状で核の陥没は1μm以上、クロマチンは結節状のことから桿状核球としました。
2.核は分葉傾向で、細胞質は小さな空虚で満たされ、染色時に顆粒が溶出したものとして好塩基球にしました。

1.核はうねり状でクロマチンは繊細、細胞質は灰青色と捉え単球、2.核は分節しクロマチンは結節状のことから分葉核球としました。

赤芽球の分化度です(1.2.3)。1.直径15μm大、核は円形で中心性、クロマチンは粗顆粒状、細胞質は好塩基性が強度のことから好塩基性赤芽球、2.核は偏在しクロマチンは粗大凝集、細胞質は多染性色から多染性赤芽球、3.核は濃縮して突出傾向、細胞質は正染性色(橙紅色)のことから正染性赤芽球としました。

3個は鑑別要の細胞です(1.2.3)。1.直径10μm大、核は円形でクロマチンは粗剛、細胞質は好塩基性から小リンパ球、2.核は偏在しクロマチン塊は虎斑状、細胞質は好塩基性で核周明庭を認めることから形質細胞、3.核は円形で偏在傾向、クロマチンは粗大凝集、細胞質は多染性色のことから多染性赤芽球としました。

1.大型、核は楕円形状でクロマチンは細網状、細胞質の辺縁は不鮮明でアズール好性顆粒を有し細網細胞としました。2.核は中央部に認めるも豊富な顆粒に被り不明瞭、顆粒は太めで黒紫色のことから肥満細胞(マスト細胞)としました。

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