第150回「マンスリー形態マガジン」2023年10月号

今月のコラム:『栄華を語るマナーハウス』

 今年の8月18日(金)、かごんま(鹿児島)の知人8人との晩さん会を楽しむため鹿児島を訪問しました。

 新型コロナ感染の規制から4年振りの再会とあって郷土料理を味わいながら盛り上がりました。博多駅から鹿児島中央駅までの新幹線は最短で1時間16分、鹿児島も随分と近くなったものです。晩さん会までの時間を利用し、ランチタイムは知人の紹介で「マナーハウス島津重富(しげとみ)荘」を訪れました。私は初めてでしたが予約なしにも関わらず親切に対応して下さり、「フレンチレストランオトヌ」で至高のフレンチ料理を堪能することができました。テーブルマナーに緊張しながら、鹿児島ご出身のフレンチの巨匠が監修された料理を六品ほど頂戴し至福の時を過ごしました。

 「マナーハウス島津重富荘」は、薩摩藩の島津久光公の別邸が160年もの時を越え2006年に本館として生まれ変わったといわれます。江戸時代の重厚な武家屋敷造りの趣を生かし、モダンなインテリアテイストをマッチさせ「古今」と「和洋」が融合した厳かな雰囲気を醸し出しております。マナーハウス(manor house)とは、かつて英国領主がおもてなし空間として使った邸を意味し、ほかにはない空間と料理で極上のおもてなしを叶えます。美しき伝統と今を繋ぐ本館は2014 年に文化庁より国の有形文化財に登録されています。

 桜島と錦江湾が眺望できる最高のロケーションが圧巻であり、荘厳な日本庭園を背景にした格式の高い結婚式も人気で、チャペル、神殿、会場見学なども気軽にできるそうです。また、Cafe「カフエ・ド・マリーエ」からも桜島を一望できお洒落なランチも楽しめます。10,000坪にも及ぶ敷地には、手入れの行き届いた開放感あふれる4,000坪の日本庭園に四季折々の花が咲き誇り“大滝”は絶景です。その昔、007シリーズで唯一日本が舞台となった「You Only Live Twice(007は二度死ぬ)」(ショーン・コネリー主演:1967公開)のロケ地にもなったそうです。

 年金族の私にとっては年1回の贅沢として、知人との再会はもとより、湯の元“かごんま”に出かける楽しみが一つ増えました。

 


      • 重富島津家の邸宅が蘇り歴史と重厚感に寄り添いながらいただくフレンチはまた格別です。


      • 壮大で煌びやかな日本庭園は、四季折々の花が咲き誇り“大滝”は圧巻です。 


      • パイ生地の中に、鹿・いのしし・豚・とりをミンチ状に包んだパテアンクリート


      • A.季節の野菜とヒラメを合わせたヒラメのテリーヌ
        B.キビナゴをさくっと揚げ南蛮漬けの野菜を添えたきびなごのフリット
        C.トマトをベースに隠し味でスイカを使った冷製スープ ガスパチョ


      • グレープフルーツのジュレ


      • 真鯛を柔らかくふっくら仕上げ
        魚介のうまみがギュッと詰まった真鯛のブイヤベース

2023年9月号の問題.  下記の2つのご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【Q1】 小児のリンパ球は成人と同じ基準での分類でよいのか、また新生児の末梢血に芽球様や幼若細胞などが出現することを経験しましたが、分類に自信がありませんので教えてください。

【助言1】 小児リンパ球の判定については分類基準が不明確ですので、成人の基準法(小・中・大リンパ球・異型リンパ球)でもよいかと思われます(図1)。
新生児では、小リンパ球に核形不整を認めることが多く、異型リンパ球の出現頻度は少ないようです(新生児55例の検討:阿南.2020)。
リンパ球の推移から、生後2週目から6歳頃まではリンパ組織の発達に伴いリンパ球が優位であることを認識しておきます。

【助言2】 新生児は、生後の日数(日齢)よりも在胎日数を重視する方が賢明かと思います(私見)。
つまり正期産なのか早産なのかを認識するということです。正期産では環境の変化に耐え、母体からの免疫によって感染防御がなされ、一方、早産では過剰なストレス、体温調節の不良、ビタミンK不足による出血などが起こりやすいといわれます。
すなわち、新生児の大半の児は弱そうで強いがやっぱり弱いというイメージをもつことです。

【助言3】 正期産児の血球数は生後2週以内が最高値で、3ヵ月頃は低値を示すといわれ、日齢0の造血能はまだ弱く、早産ほど弱いことが推測されます。
上記の検討から、新生児では芽球様、幼若顆粒球、有核赤血球、大型・巨大血小板、裸核の巨核球、赤血球形態所見(標的・奇形・涙滴・溶血など)が出現し、それは早産ほど頻度が高いようでした。
しかし、これらの出現はあくまでも一過性(単発)であり自然消失することを確認し、継続的な場合は腫瘍性を考慮し骨髄検査や免疫表現型、遺伝子などの検索を進めることになります。
一過性であった症例のなかから末梢血液像の主な形態像を図2.に提示します。

図1. 新生児のリンパ球
A.小リンパ球
B.中リンパ球
C.大リンパ球
D.異型リンパ球
図2. 新生児の末梢血液像
A.芽球様  B.幼若顆粒球(前骨髄球)
C.二核の有核赤血球
D.巨大血小板  E.裸核の巨核球
F.標的赤血球  G.溶血(矢印)
H.Howell-Jolly小体(矢印)
I.奇形赤血球(矢印)

【Q2】 ヘマトゴーンってどのような細胞のことを言っているのでしょうか。また、どのような場合に出現しその特徴はあるのでしょうか。

【助言1】 ヘマトゴーンとは、hematoとgoneから成り立ち、hematoは“血液” という接頭語で、gone(過去分詞)は“消えた”という意味で、複数形としてhematogones(HGs)と表記されています。
つまり、勝手に消えていく細胞のことを指しますが、形態的に腫瘍性細胞に類似しているため注意が必要です。Muzzafar T先生ら(2009)は、HGsをBenign precursor B cells(正常の骨髄Bリンパ球前駆細胞)として捉え、Pre B-ALL(前駆B細胞急性リンパ性白血病)とは一線を引いています。
HGsは急性白血病や悪性リンパ腫の治療後、造血幹細胞移植後、化学療法後、感染後に出現するといわれます。急性白血病の治療後に骨髄にHGsが出現すると生存期間が長いという報告もあるようです。
従って、その形態を熟知することが求められます。

【助言2】 ところが、HGsの形態については形態基準がないようですので経験から述べます。
小児ALLのリンパ芽球を対象にして考えてみましょう。HGsの骨髄の分布様式は正常クローンに紛れ込みの状態、クロマチンは増量や緻密さを欠き核質は伸び切り、まるで風船をパンパンに膨らませたようにみえます。
一方、リンパ芽球は単一でクロマチンは増量し緻密さがみられます。HGsはPAS染色に陰性ですが、リンパ芽球は陽性(点状・塊状)になることが多いようです(図1)。
私見として、リンパ芽球とワンクッションを置くために“幼若リンパ球”(juvenile lymphocyte)の枠を設けて使用しています。Muzzafar T先生は、HGsではCD81の発現が高率であると報告されています。

図1. HGsと小児Pre B-ALL
A. HGs:正常細胞のなかに紛れ込み、クロマチンは伸び切り状態で風船を膨らましたようにみえる(赤矢印)。
B. 小児Pre B-ALL:単一で、クロマチンは増量しクロマチン網工は緻密さがみられ、PAS染色に陽性(点状)のことが多い(○印)。


2023年10月号の問題.  下記の2つのご質問をいただきましたがどのようにお答えしますか。

【Q1】 MG染色の標本からPAS染色への移行は可能でしょうか。またPAS染色の自家製とキット法(市販品)に染色性の差はありますでしょうか。

【Q2】 AML-M4の症例でブチレートエステラーゼ染色が陰性でしたが、このようなことはあるのでしょうか。単球を証明するための検査は他にありますか。

形態マガジン号キャプテン  阿南  建一

MAPSS-DX-202310-29

著作権について

今回のねらい

今回は末梢血液像における主に赤血球の形態異常について深堀りしますが、関連についてはJSLH(2005)、旧厚生省特発性造血障害研究班(1990)、ICSH(2012)の分類基準を参考にしてください。
「ワンポイントアドバイス」は、新生児の末梢血液像におけるリンパ球や幼若細胞などの出現について、またヘマトゴーンについて解説してみたいと思います。

問題

問題1

1-1末梢血液像の細胞同定を行ってください(全体像から判定し出現機序や病態を述べてください)。

  • PB.MG.1000

1-2末梢血液像の細胞同定を行ってください(全体像から判定し出現機序や病態を述べてください)。

  • PB.MG.1000

1-3末梢血液像の細胞同定を行ってください(全体像から判定し出現機序や病態を述べてください)。

  • PB.MG.1000

1-4末梢血液像の細胞同定を行ってください(全体像から判定し出現機序や病態を述べてください)。

  • PB.MG.1000

1-5末梢血液像の細胞同定を行ってください(全体像から判定し出現機序や病態を述べてください)。

  • PB.MG.1000

1-6末梢血液像の細胞同定を行ってください(全体像から判定し出現機序や病態を述べてください)。

  • PB.MG.1000

解答・解説

問題 

末梢血液像の細胞同定を行ってください(全体像から判定し、出現機序や病態を述べてください)。

【解説】

A. 正常の赤血球に比べ楕円形(卵円形)で、中央淡明部も楕円状のことから楕円赤血球を考えます。細胞膜の骨格を形成する主要タンパク分子の欠損や分子間の結合異常とされ、遺伝性楕円赤血球症の例です。

B. 赤血球膜表面に多数の突起がみられ、その分布、長さ、太さは規則的で先端が尖っていることからウニ状赤血球を考えます。血球内のATP減少に伴いカルシウムの増加、カリウムの減少によってウニ状に変形するといわれます。ATP産生障害を伴う溶血性貧血などにみられるようですが本例は不明です。

C. 正常の赤血球に比べ大型で、それは12µm以上を示すことから巨赤血球と思われます。なかには多染性(矢印)もみられ赤血球産生の亢進がうかがえそうです。DNA合成障害による巨赤芽球性貧血の例です。

D. 多染性赤血球内に輪状形の構造物がみられ、カボット環(Cabot ring)(矢印)を考えます。核膜の遺残物、細胞分裂時に出現する紡錘糸由来といわれ悪性貧血の例です。

E. 赤血球の膜表面に多数の突起がみられ、突起の分布、長さ、太さは不規則的で、先端が鈍で丸みを帯びていることから有棘赤血球を考えます。血漿の脂質異常により細胞膜のリン脂質:コレステロール比に異常が起こるとされますが本例は不明です。

F. 楕円赤血球(A)を思わせますが、赤血球が一定の方向に向いていることより、塗抹時に発生したアーチファクトが考えられます。

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