症例2 解説と解答
年齢・性別 | 10-15歳 男児 | |||
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血液学所見 | WBC(/μl) | 14,500 (Blast46%) |
RBC(万/μl) | 286 |
Hb(g/dl) | 10.2 | Ht(%) | 25.6 | |
PLT(万/μl) | 7.6 | MCV(fl) | 89.5 | |
MCH(pg) | 35.7 | MCHC(%) | 39.8 | |
骨髄所見 | NCC(万/μl) | 8.7 | MgK (μl) | 6.25 |
細胞化学所見 | CRP 3.35 mg/dl | |||
生化学所見 | LDH 3,370 IU/l |
[PB-MG.×400] 拡大して見る |
[BM-MG.×1000 ] 拡大して見る |
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[BM-MG.×1000] 拡大して見る |
[BM-PO.×1000 ] 拡大して見る |
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[BM-EST二重.×400] 拡大して見る |
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1.末梢血の所見を述べて下さい。
白血球の増加 (14,500/μl)、貧血、血小板減少を認めます。
芽球は46%みられました。末梢血に芽球が20%以上認めることより急性白血病を疑うことになります。
2.骨髄の所見を述べて下さい。
低形成(8.7万/μl)像で芽球から顆粒球系に分化傾向がみられます。
芽球は48.4%みられ、それらには大小不同、核形不整などを認めました。
また、芽球にはアウエル小体を認め、PO染色では芽球から分化傾向の細胞まで強陽性でした。EST二重染色では顆粒球系がクロロアセテートに陽性(青色)で
ブチレートに陰性より単球系の混在はみられないようです。
3.予想される診断に何か障害はありますか。
末梢血、骨髄ともに芽球が20%以上、90%以下、アウエル小体やPO染色を認めたことで分化型の急性骨髄性白血病(AML-M2)を疑いますが、その典型例にしては芽球を含めた形態異常が気になります。 CRP,LDの上昇は、炎症や腫瘍に反応したものと思われます。
4.追加検査は何かありますか。
染色体でt(8;21)(q22;q22)の核型異常やAML1-ETOの遺伝子異常の検索が必要になります。
5.形態診断を述べて下さい(条件つきの場合はコメントを)。
末梢血にて芽球が20%以上、骨髄にて90%以下、アウエル小体やPO染色が3%以上の陽性を認めたことよりAML-M2を疑い、さらに芽球を含めた形態異常より
8;21転座のAMLを疑います。
本病型の形態診断における所見については
本例以外も含めて下記に示します(阿南建一:第35回日本小児学会総会.1993)。
1) 芽球:@大小不同、A顕著な核形不整、B明瞭な核小体、Cアウエル小体
(長いもの、短いもの、束・松葉状)、
2) 顆粒球系:偽ペルゲル核異常、低顆粒、
3) PO染色所見:強陽性(芽球から好中球まで)
AML-M2に多くみられますが、M1の経験もあります。後者の場合は芽球が
90%以上を示す未分化型ですので上記1)の芽球の形態所見が参考になります。
本型の臨床診断は、上記染色体異常と遺伝子異常が認められ、8;21転座のAML
(M2)と診断されました。
6.鑑別診断があれば述べて下さい。
分化型のAMLとしてM2やM4との鑑別を要します。
M2との鑑別は芽球から成熟型に形態異常を有することにあります。
M4との鑑別は単球の割合と機能が重要な所見になります。
それは、芽球の20%以上を基本として、@末梢血における単球が5,000/μl以上、
A骨髄における顆粒球系と単球系が各々20%以上を占めることです。
他の所見として、単球は非特異的エステラーゼ染色に陽性であり、
リゾチーム活性(血清、尿)の上昇を認めることが多いようです。