2017年8月9日掲載

Vol.16自動白血球分類の新たな展開(2)

CBCを語ろう Talk CBC 白血球分類の新たな展開(2)

正確な細胞分布図(スキャッタープロット)と解析アルゴリズム

 今回は、自動白血球分類法における細胞分布図について解説します。自動血球計数装置から表示される細胞分布図(スキャッタープロット:以下プロット図)は、それぞれの測定パラメータによって取得された細胞特性の数値データを、2軸の細胞分布図として形成したもので細胞分類や測定結果の判定などに用いられています。また、プロット図の細胞分布からは、疾患や病態などの把握を行うことが可能であり、細胞分類データと同様に重要な測定情報として利用されています。一方、プロット図はさまざまな要因によって正確な細胞分布が形成されない場合があり、以下の要因が考えられます。

  1. 細胞特性が類似した細胞集団が存在し、これらの重なりが認められた場合
  2. 計測イベント数の大幅な低下や増加により、正確なプロット図が形成できない場合
  3. 異常な細胞分布や単一の細胞集団など通常とは異なる領域に細胞集団が存在する場合

 これらの場合には、細胞分類データの乖離や測定結果の判定が異なるなど正確性を欠くことになります。上述した通り、自動白血球分類において、プロット図の細胞分布情報は測定精度を決定付ける重要な測定情報ですので、それぞれの測定機器ではさまざまな工夫がなされています。


 (2) 細胞分布図(スキャッタープロット)と解析アルゴリズム
  自動血球計数装置 UniCel DxH シリーズ(以下DxH)では、最新の画像解析アルゴリズムを用い正確な細胞集団の分布形成を実現しました。プロット図形成における解析アルゴリズムは以下の通りです。

 a) 細胞集団の領域分割(ウォーターシェッド アルゴリズム)
 ウォーターシェッド アルゴリズムとは、クラスタコア(集団の中心部)の検出とそれぞれのクラスタ(集団)における分布や集積状態を確認し、クラスタの分割を行うためのアルゴリズムです。このアルゴリズムに用いることで細胞ポピュレーション間の明確な識別や出現頻度の少ない僅かな細胞ポピュレーションの検出が可能となります。

 図2の1), 2) は、DxH の実測データのプロット図を示したものです。このプロット図にはいくかのクラスタが確認でき、クラスタ間の重なりも認められます。また、この状態のままではそれぞれのクラスタを正確な分割することは難しいと思われます。
このプロット図をデジタル画像処理し、輝度(明るさ)勾配を徐々に変更していくことにより(図2)中央プロット図のように最も濃淡の濃い部分が出現します。これらは、それぞれのクラスタコアを示すものでクラスタのピーク位置が検出されます。また、この解析プロセスの中で、それぞれのクラスタ形状が明らかとなり、それぞれのクラスタの分割がなされます。


 従来の解析法では、プロット図のそれぞれの領域の細胞分布の中から目的とする細胞集団の絞り込みを行い(ゲート解析)、目的の細胞集団を分割していました。この方法は、それぞれの細胞分布が明瞭な正常検体では正確な絞り込みが可能ですが、複雑な形状の細胞分布や重なりが認められた場合には、正確な分割が難しくなります。日常業務の中で、異常検体サンプルなどにおいてはこのような細胞の重なりはよく遭遇しますので、正確なクラスタコアやクラスタの検出は、細胞ポピュレーションの識別に非常に重要となります。
 ウォーターシェッドアルゴリズムを使用することで、重なりあった集団の細部情報まで検出が可能となり、異常細胞ポピュレーションなどの検出精度が向上しています。

 b) 細胞集団における境界線抽出(スネイク アルゴリズム)スネイク アルゴリズムとは、デジタル画像処理した画像の中から対象物の輪郭線を抽出するプログラムです。DxH においては、それぞれのクラスタの境界線分離を行うために利用されています。上述した通り、クラスタの重なりや隣接が認められた場合は、それらの分割が難しく、ウォーターシェッドアルゴリズムを用いて領域分割を行いますが、正確なクラスタの決定のためにスネイクアルゴリズムを用いてクラスタ間の分離が可能となりました。

次回は、引き続きVCSn テクノロジーにおける細胞分布解析について解説します。

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UniCel DxHシリーズ コールターセルラーアナリシスシステム
製造販売届出番号:13B3X00190000038

MAPSS-MKT-202106-1000

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