2015年11月10日掲載

Vol.2自動血球計数装置の誕生と血液学検査

CBCを語ろう Talk CBC 今回は血球計数装置の誕生から自動化へ

血液学検査は、コールターカウンターmodel Aの誕生により用手法検査から自動化の道を歩み始めました。しかし、検体測定に至る過程においては、検体の希釈、試薬の添加など手技によって行われており、半自動血球計数器では、シングルチャンネル(単一項目)測定しか行うことができませんので赤血球、白血球などの測定はそれぞれ別々に行っていました。また、Hgb測定は比色計、Hct(PCV)値の算定は遠心器を用いて行うなど血液学検査は多くの労力を必要とし、検体の処理は時間当たり10~20検体程度を行うのがやっとでした。
1968年 世界初となる自動血球計数装置 コールターカウンター model S(図1)が開発されました。コールターカウンター model S(以下model S)は、全血サンプルを自動吸引し、検体の希釈、溶血剤の添加、血球計測、結果の印字までを全自動で行うことが可能な自動血球計数装置で装置(図 2)はモジュール化されたユニットで構成されており、1) アナライザーモジュール、2) ダイリューターモジュール、3) パワーサプライモジュール、4) ニューマチックモジュール、5) デュアルチケットプリンターを実験台に設置するデスクトップタイプです。

model Sの特徴は、WBC,RBC,Hgb,MCVの直接測定項目を含むCBC 7項目の多項目測定と1時間当たり180検体の検体処理が可能となったことでした。前述した通り、血球算定以外の血液学検査は比色計や遠心器などを用いて行われており、多くの検査要員と時間を要しましたがmodel Sの登場によりTAT (Turnaround Time :検査所要時間)が大幅に改善されることになりました。また、赤血球恒数(MCV,MCH,MCHC)の自動測定によりこれらを用いた貧血分類が可能となり、臨床サイドに有用な情報を提供することになりました。
model Sの開発に至る過程では、連続測定を行うための課題を解決する必要がありました。検体測定を行う検出器(図3)の直径は100μmで、この細孔(アパチャー)を血球は高速で通過します。希釈された血液には検体凝固などで出現したフィブリン糸やゴミが存在しており、これらが検出器の詰りの原因となって測定誤差が発生します。model Sでは、WBC、RBC測定部に3個の検出器を搭載し、それぞれの測定結果の平均から測定値を求め、詰りなどで異常値を呈した場合はその結果をリジェクトし、正確な連続測定が可能となりました。この新しい測定技術は、UniCel DxH800などの現代のコールターカウンターに引き継がれており、正確な測定結果を提供しています。
また、自動血球計数装置の精度管理に必要とされる管理血球(図4)4Cコントロールも同時に開発されました。人由来の加工血である4Cコントロールは長期的に安定した性状を有しており、非常に高い製造技術は、現在の6C セルコントロールなどにも応用されています。
全自動血球計数装置 コールターカウンター model Sの登場は、従来の血液検査業務を大きく変革し、全自動の多項目測定と高速検体処理により血液検査学検査は迅速検査として臨床に大きく貢献することになりました。測定精度の向上と効率的な検体処理が可能となった血液学検査は、次に訪れる技術的革新により総合血液分析装置として大きく変貌していくことになります。(続く)

 


文献

  1. 西村敏治:検査の変遷と将来展望(12) 血球計数の変遷と展望. 医学検査 48(1):1 -10 1999
  2. 西村敏治:最新統合型血液分析装置の機能. 臨床病理レビュー (126):9-16 2003
  3. 巽典之:3.機器.自動血球計数の基礎. 厚生社19-44 1991
  4. 三輪史朗ほか:Ⅰ.総論 4.血球計数法 血液検査(第1版第6刷) 医学書院 61-80 1982
  5. PINKERTON,P.H. et al:An assessment of the Coulter counter model S, J. Clin. Path.,23:327-335,1970

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UniCel DxHシリーズ コールターセルラーアナリシスシステム
製造販売届出番号:13B3X00190000038

MAPSS-MKT-202106-1000

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